6.敵将討ち取ったり

「敵将、討ち取ったっすー」

「なぁぁ、取られたぁぁぁ!」

「ふふぅん、早い者勝ちっすー」

 真緒ちゃんはベッドに寝そべり、俺はベッドを背もたれにして座った状態でそれぞれにコントローラを握っていた。ステージクリア後の精算画面に推移したのを確認し、俺は腰を上げる。

「ちょいトイレ」

「いっといれー」

「ぶふぉっ」

 予想だにしていなかった真緒ちゃんのおやじギャグに、俺は思わず噴き出した。真緒ちゃんは「してやったり」な顔をしていた。くそぅ、いい返しも思いつかなかった。




 トイレから出て戻ると、真緒ちゃんはベッドでうつ伏せのままゲーム雑誌を読んでいた。服装はいつもながらのジャージ姿。だが、肘を立て、やや沿った背中からヒップへと続くライン、その稜線がやけに艶めかしく、とても魅惑的に見えた。ふと、先日の下着姿が思い出され、急に落ち着かない気分になった。

 さ、触ったら、やっぱ怒られるよね……。自然に、ごく自然にベッドに座って、何食わぬ顔で腰あたりに手を置いたらダメかな……。案外受け入れてくれたりして……。今の関係ってなんか微妙な感じだよなぁ、近くもなく遠くもなく。結構楽な関係ではあるけど、もどかしくもある。でも、もし近づいて嫌がられたりしたら、俺立ち直れる気がしない……。

「そんなところで怪しい手の動きしながら突っ立って、なにしてんすか?」

 どうやら、気付かずに手を伸ばしたり引っ込めたりしていたらしい。間違いなく挙動不審だ。


「な、なんでもねぇし!」

 自分でも"まるで小学生みたいだな"と思うほどの語彙力の乏しい言葉を吐き出しつつ、俺はベッドに座る。

「……。」

 真緒ちゃんは疑わし気な眼でこっちを見たが、俺がコントローラを再び握ったのを見て、自身も雑誌を置きコントローラを持った。

 放置されていた精算画面を進めていると、突然、背中に何かが触る感触……。うつ伏せの真緒ちゃんは膝を曲げ、俺の背中にその足が触れている。

 画面はステージ選択で止まっている。だが、どちらともに次のステージについて話始めることはなく、沈黙の中、真緒ちゃんが動かす脚の衣擦れの音だけが聞こえている。

 俺は思い切って右手を真緒ちゃんの腰に置いた。心臓が飛び出しそうなほど高鳴る。俺が手を置いたことで、真緒ちゃんの体は一瞬ピクっと反応する、が、特に拒むようなことはない。手に触れる腰の感触は柔らかで、少し熱を帯びているようだった。

 俺は背中を撫でるように、手を動かす。

「はっ……」

 真緒ちゃんから、少し熱っぽい、そんな吐息が漏れた。

 俺もだんだんと大胆になり、手を少しずつ体の下方向へと移動し、丘を登り、お尻に手を置く。既に彼女の脚は停止しており、顔も画面を見ていない。コントローラこそ手に持ったままだが、顔は布団に埋め、耐えるようにじっとしている。

 俺の中で何かのスイッチが切り替わった気がした。俺は撫でていた手を離し、彼女をベッドの上でひっくり返して仰向けに、そのまま上から覆いかぶさるように手を突く。

「ぁ……」

 彼女は小さく声を出し、だが、俺の動きを拒むことはなかった。

 俺の顔、その真下には彼女の顔がある。上気し熱っぽい視線で俺を見上げる。唇はやや開かれ、熱っぽく呼吸を繰り返す。真緒の瞳が緩やかに閉じるのを待ち、彼女のみずみずしい唇に近づき、そして口づけた。


 たっぷりと数十秒、俺は彼女の柔らかくしっとりとした唇の感触を、自身の唇で感じとり、そして離した。再び開かれた彼女の瞳には、拒否の色は無く、うっとりと俺を見つめ返してくる。

「嫌だったら、言ってくれ」

 俺の言葉に、真緒は首を振る。俺はそれを見て、右手を彼女の脇腹、そこにあるジャージ下の腰ゴムの中へと手を差し入れる。

「あ、その、あ、あたし……、こういうの、初めてで……、だから、んっ」

 俺は言葉を遮るように、だが努めて優しく口を塞ぐ。その間にも手は侵入を続け、Tシャツの下、お腹の地肌へと手を滑らせる。肌の柔らかさを感じつつ、Tシャツをまくり上げ肌を露出、続けてジャージ下を下げ、ショーツに指をかける……、

「ぁ、は、はずかしぃ、電気、消して……」

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