第7話 夕方 - チーム紹介

その後私たちは別の部屋に案内された。


「なりゆきくんの今後の担当の医師を紹介します」といって主治医が山口先生、そして先ほど朝から奮戦してくれた田中先生と飴本先生が紹介された。


山口先生

「このスタッフで今からなりゆき君の治療をします。我々が全力で取り組みますのでどうかご安心して下さい」


「わかりました。何卒よろしくお願いします」


私たちは主治医の山口先生にこの後、わが子の運命を委ねたのであった。


聞くと私より2つ下の若い先生であった。


首から下げた聴診器に張った緑色の「ケロッピ」のシールが妙に似合っていた先生で同年代のせいか、その後治療以外の話もたいへん盛り上がった気のやさしい方であった。


「先生方、よろしくお願いします」

私はもう一度深々とお辞儀した。



午後9時

内科棟4階の4号室にて


この「4階の4号室」というのが最初から気になっていた。


あまりにも「死」をイメージさせる悪い番号である。


その部屋に入ると点滴をつけて、酸素マスクをされたなりゆきが横たわっていた。


「なーくん、わかるか。お父さんやで」


当然ずっと眠っているので返事はなかった。


時々、顔の酸素マスクが邪魔なのか、手で振りほどこうとしてそのたびにマスクが取れた。


それをまた元どおりにもどすのが仕事であった。


看護婦さんに「マスクをいやがっているのでなにか方法はないですか?」と聞くと


「ビニールで顔が入るくらいの立方体の小さな部屋をつくってそこ全体に酸素を供給する方法がありますが、明日の朝になります。それまでは、ご面倒でも手でマスクを添えてやってて下さい」


「今、息子は意識はあるんですか?」


看護婦

「意識は麻酔が効いていますから、ほとんど無いです。しかし明日注入するラボナールよりは麻酔効果は軽いので痛みとか気になることには少し反応しますよ」


私は「少しは反応しますよ」の一言にまだ息子の生命を感じてほっとした。

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