作家を志す方にクリティカルヒットな物語!

冒頭の2話で持っていかれて、夢中で読み進め、気付けば最新話にたどり着いていました。

主人公の「凪帆」(あえてこの呼び方で!)は、交通事故からの半年間の療養生活の後に、一時は諦めた小説家になるという夢を目指し、執筆を再開します。
ライバルであり、心の拠り所でもあるのは、学生時代からの友人。
天才肌の友人に憧れつつ、嫉妬もしつつ、もがきながら、がむしゃらに物語を紡いでいくのですが……この姿、他人事には思えませんよね。

自分にはないセンスや技術をもつ憧れの存在と自分のレベルを比較して落ち込んだ経験は、創作に携わったことのある方なら、一度は体験したことがあると思います。
先を行く友人を追いかけるように頑張る主人公を応援しながら、夢中で読み進めました。

言葉を追うだけですでに心地よい美しい文章や、時折怒涛のごとくやってくる飯テロもさることながら、単なる「頑張る女性の物語」に留まらず、学生時代と、卒業後と、現在という、三つの時間軸を行き来する回想の物語でもあります。
この、行ったり来たりする感覚がとても面白い。
読み手を混乱させずに時間軸を行き来するのは技術がいることだと思うので、ストーリーの面白さだけでなく、作者のお力にも感服です。

すべての方にオススメの物語ですが、特に、物語を書く側の方にはぜひ読んでほしいと思いました。
作家への道、出版ビジネスの裏側を覗くようなワクワクがたまりませんよ!

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