心の内を満たす香りとともに

友達にして最大の理解者にしてライバル。主人公真帆子のひりつくような心情は、小説を書こうと志したことのあるものなら、自分の物語でもあると感じるのではないだろうか。
二人にだけわかる符号のような待合せ場所や、二人の間に漂う濃密な空気には、よい香りが満ちているように思う。それは、作者が紡ぎだす独特の心地よさであり美しさだと感じる。
一歩一歩、夢への道のりを歩んでいく真帆子の心情に寄り添わずにいられない。
彼女の歩む道のりはぜひ作品で出逢ってほしい。文中を漂う数々の香りや味とともに。

作中に登場する舞台の数々もまた美しい。作品と合わせてぜひ訪れてみたくなる。もしかしたらそれも作者の狙いのひとつでは、と、巻末の丁寧な残り香にうっとりと目を細めている。

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