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 翌日から、飯塚の体に変化が起きた。


 キャンプ場で目を覚まして以来、屁が一向に止まらない。


 帰りの車の運転の最中も実家での夕食の時も、もちろん入浴中もだ。



 幸いなことに何故か臭いがないのが救いだが、それはさておき大の大人がプップカプップカと臀部から軽快に音を鳴らしている様は、見ていても聞いていても決して気持ちがいいものではない。



 妹の麻友も、久しぶりの対面だというのに「マジサイテー」という言葉を最後に部屋にこもってしまった。



 だがしかし、いくら我慢しようとした所で、空気が次々にケツから溢れて出てしまうのでは仕方がない。


 このままじゃ電車に乗ることもできたもんじゃない。


 


 次の日、朝一番に内科に行ってみた。


 が、医者にもさっぱり原因がわからないという。



 問題は依然解決しないままだが、いつまでも実家で屁をこき続けるわけにもいかないので、とりあえず一人暮らしをしている都内のワンルームまで戻り、翌日別の総合病院にいくことにした。


 一日かけて精密検査を受けて出た結果は、地元の小さい病院と同じく「まるっきりの原因不明」。



 翌日、翌々日と、屁は日に日に量を増し始め、遂に一週間後には「ブーーーーーーーーーーーー」と鳴りっ放しにまでなってしまい、自分の屁の音で夜も寝れなくなってしまった。


 一日中鳴り止まない屁は臭いこそないものの、マンションの他の住人からしたら騒音以外の何物でもなく、飯塚の元には大量の苦情の連絡がしっきりになしに入ってくる。



 仕方が無いので飯塚は音が鳴らないように、一日の大半を両手でお尻の穴を思いっきり広げて過ごすようになった。



「シューーーーーー」



 ガス抜きをしているヘアスプレーのような音を部屋に響かせながら、いつまでもこんな馬鹿げた事はしてられないと頭をひねって悩みに悩んだ挙句、飯塚は60mmΦのポリプロピレンで出来た漏斗を購入することにした。


 小学校の理科の授業で、薬品をフラスコにこぼさず入れるために使ったあれを、27歳も半ばに差しかかった男が夜中にちまちま加工しヤスリで磨き、今度はそれを尻の穴に差し込む。



 涙ぐましい努力の甲斐あって作戦は見事に功を奏し、両手は尻の穴から無事に解放された。


 トイレで大を済ます前後の「メンテナンス」は必要だったが、概ね漏斗は予想通りの活躍を見せてくれた。




 ところがやっと一息つけたのも束の間、ここでもう一つ大きな問題がある事に飯塚は気づいてしまう。


 明日は、久しぶりにプールに戻って練習をする日だ。




 飯塚は予備で買っておいた漏斗をもう一度加工し、今度はできるだけ小さいものを作成した。



 上から競泳パンツを穿いても分からないように、小さく小さく。




 後は野となれ山となれだった。

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