第6話 大工の棟梁、ドワーフの来店

今日から10時開店の喫茶店営業です。


注文されれば酒も出しますよ・・・売り上げになるし・・・


まぁ、この時間にお暇なご婦人方がそうそういるもんじゃないが・・・



喫茶店用のメニュー表も出しておく




基本は大雑把に


軽食 お菓子 ケーキ お茶(紅茶) コーヒーである


軽食は簡単なパスタとサンドイッチが選べ、サラダがつく


これ以上メニューを増やす気ありません!


ケーキは日替わり 毎回2種類から選んでもらう




喫茶店だったらこの扉は敷居が高そうだわ・・・


俺だったらホイホイ入らねぇ・・・


なんぼボッタクられるかわかったもんじゃねぇ


自分で言ってて悲しくなってきたが・・・


まぁ、魔石を持って来る売り上げにならない客が来るくらいか?


軌道に乗るまではこのペースなんだろうな・・・


静かな店・・・かけっぱなしのジャズだけだ・・・


昼過ぎまでこんな感じでまったりと時間が流れる・・・


勇者達にパスタを食わせて見送った後も、まぁ~客が来ないんだわ


理由はわかる・・・


・・・宣伝不足・・・


この一言に尽きる!


俺の出すものが知られていないから・・・


それでも15時頃から数人のお客様のご来店がある。


裕福層の奥様ってとこかな・・・


紅茶とケーキ、お菓子ってとこか・・・


居心地の良さでお茶のおかわりも入るからまぁ、悪くない。


回転率はメッチャ悪いけどな・・・


ご婦人方にはかなりの高評価を頂きましたが、口コミで広がるには時間がかかるんだろうな・・・


日中の営業は勇者からの魔石分と割り切って本業の方をがんばりましょっかね・・・


カランカラーンとドアのベルが鳴る。


「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」


どこかで見た事のあるドワーフの棟梁と職人さん4名!


そりゃまぁ、この店を建ててくれた大工さんだもんな・・・


テーブル席の方に座り込む


「とりあえず酒精が強いやつを頼むぞ!つまみは適当に塩っ気のあるものを」


「ワンショットじゃ全然足らんからでっかいボトルで出してくれ!」


「かしこまりました」


さて、火酒を樽で飲むドワーフの相手・・・


来ることは想定内だ・・・


とりあえずあれを出すしかないな・・・


業務用サントリー 角瓶 業務用ペット(笑)


氷も別に用意する・・・ぶっちゃけ勝手にやれと・・・


つまみはスモークチーズとソーセージの盛り合わせ!


粒マスタードも器で出す


「お待たせしました」


各自手酌で注いでいく


「ほんじゃま、乾杯じゃて」


グラスを合わせる心地よい音が響く


「うまそうじゃのう」


ソーセージをフォークで刺しかぶりつく、そのままウィスキーをゴクゴクと・・・


ウィスキーはゴクゴク飲む酒じゃなかったと思うが・・・俺の感性が間違ってるのか?


「くはぁ~~~~、こいつはいいのう」


「うむ、喉越し、味、いつも飲んでる火酒より精錬されとる」


「この腸詰も美味いしな」


「だなっだなっ」


しばらくは飲み食いに夢中になるドワーフ達


ソーセージのおかわりが入り2本目のペットが入る頃


「マスターよ、どうじゃ?この家の住み心地は?」


「文句無しです!さすがの一言ですよ」


「そうじゃろうそうじゃろう」


気を良くした棟梁は店内を見渡し酒棚に目をやる


「その棚の酒は高級酒か?それも貰えんか?」


目敏いなぁ・・・ドワーフの嗅覚か?


「はい、こちらのお酒は葡萄を原料にしたブランデーというお酒で並んでる物は少々値が張りますよ」


「ほほー!構わん構わんボトルで持ってきてくれ」


知らんぞ・・・俺の見せボトルはマジで高いぞ・・・



レミーマルタン ルイ13世 タイム・コレクション ジ・オリジン- 1874


聞いて驚け店頭価格白金貨2枚だ


そして レミーマルタン ルイ13世 バカラ


こいつは店頭価格 金貨6枚


「申し訳ありません失礼ながら念の為なのですので、ご予算は?一番高いので白金貨2枚ですが・・・」


そこまで高いと思ってなかったのだろう、ギョッとした目で見る・・・


「そうじゃなぁ、金貨で3枚くらいのは無いかの?」


「ではこちらはいかがでしょう、同じ系譜のお酒ですが レミーマルタン ルイ13世 ベリーオールドです」


「これはゆっくり味わって飲まねばな・・・そしていつか、その白金貨2枚の酒を飲んでみたいものじゃ」


「ありがとうございます。ではグラスの方をご用意いたしますね」


ブランデーグラスはバカラ パーフェクション コニャックグラス デギュスタシオン


こだわりのブランデーグラスだ!


勇者様(こんな時だけ)の奢りだったので趣味に走らせてもらったよ。


「グラスの足、ステムっていう部分なんですがこれを摘まむようにして手の温度をあまり伝えないようにして飲まれるのがいいですよ」



<注>はい、いろんな大富豪が手のひらで転がしながら飲むイメージがありますが


そうしなきゃ香りが立たない安いブランデーだったら有りかもしれません


ですが、高級酒の場合はアルコールの揮発で味と香りが濁ります。


雰囲気に浸るだけならともかく、味わいたい方には絶対にお勧めできません



「ふむ、専門家の話じゃ、言われた通りに飲んでみるとしよう」


一口一口とゆっくり味わうドワーフ達


恍惚の表情を浮かべため息をつく


「なんという酒じゃ!世の中にはこんなうまい酒があったのか・・・」


「いや、これ以上ってのがそこにあるわけじゃろ・・・」


棚を指さして言う


「150年生きてきて初めての衝撃じゃわい」


大絶賛をいただきました!!


「先ほどのチーズや、こちらのチョコレートもブランデーには合いますよ」


俺はサービスでチョコレートを出す


「うむ、これはまたうまいのう」


ゆっくりゆっくりブランデーを飲んでいくドワーフ達


「またガッツリ仕事して飲みに来なきゃな」


「そうだな、完成打ち上げや特別な時はこのブランデーっちゅう酒にしよか」


「ウィスキーは普段飲みにいいのう」


「あぁ、酒場のぬるいエールよりこっちかのう」


勤労意欲がわいて何よりである


「逆にもっと安いブランデーってのもあるんだろうか?」


「はい、ございますよ 1グラス銅貨2枚程度の物からでしたらご用意できます、あとはご予算に合わせて」


「そうか!そりゃいい!!」


「銅貨2枚と白金貨2枚じゃえらく違うのう・・・」


「材料の選別から熟成度合いも手間暇から全然違いますからね」


「なるほどのう」


「ちなみに先ほどお飲みになられた物は100年以上熟成されてますよ」


「そりゃ凄い!」


「貴重なものを飲んだのう」


「今の話を聞いたら、それだけで満足できたぞ!」


「うむ、ワシらも量を飲むがこれはガバガバ飲まなくても満足じゃわい」


ウィスキーあれだけ飲んでも大丈夫でしたもんね・・・


楽しくワイワイ酔うための酒も悪くないけど、


酒の味を本当に楽しむって事をわかってもらえて嬉しいです。


こればっかりは本当に美味い酒じゃないとなかなか理解が難しいと俺は思う。


「いや~ほんとうに満足したわい!今後贔屓にさせてもらうぞい!」

「うんうん、それがええ」

「ほんに、また来るからのぅ」

「いや~明日にも来たいぞ」


ざっくり支払いを済ませる


「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております。」


本日は一組のお客様しか来ませんでしたが、大黒字になりました。


レミーマルタン様々です。


明日はどんなお客様のご来店があるだろ・・・


ワクワクした気持ちのまま本日の営業を終了しました。

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