第8話・GWだぜ! ヒャッハー! その2

 翌朝、G市・郊外にて……

とある山の麓の農家の畑に嵐斗を含む。アーカム高校サバゲー部で編成された工兵部隊がいた。

土砂崩れで畑の半分が埋まっており、防風のために植えていた木も、緩んだ地面と強風で倒れかかっていた。

 嵐斗含む男子4人、里奈を筆頭にした女子3人の部隊で各自、様々な迷彩服を纏っており、ピクセルカモの灰色迷彩の迷彩服を着た部長の男子部員が全員に指示を出す。

「嵐斗と俶(はじめ)は倒れかけている木の撤去! 他はシャベルとキャリーで土砂の撤去だ! 総員、かかれ!」

 その掛け声と共に全員が道具を手に爆走し、作業にかかった。

嵐斗は前髪を2本のヘアピンで左に寄せた茶髪ショートヘアのデザート迷彩の迷彩服を着た男子と一緒に倒れかけている木の根元にバンガロールを設置した。

「設置完了! 後退!」

嵐斗はそう言って信管に繋がったワイヤーリールの導線を伸ばしながら相方と一緒に5m程下がる。

 嵐斗は一度、周囲を見渡して、設置場所に人がいないことを確認してから親指で押すタイプの起爆スイッチの安全装置を外し、すうっと息を吸った。

「Fire in the holl!」※要訳・「爆発するぞ!」

 完璧な発音の掛け声と共にカチッとスイッチを押すと、爆発が起こり、倒れかけていた木がドサアッと勢いよく倒れる、

2人は鋸を片手に倒木に近づくと相方がこんなことを口に出す。

「伯父さんに言ってチェーンソウ借りてくればよかったかな?」

 相方の一言に嵐斗はあることを思い出す。

「俶先輩の伯父さんって林業やってるんですか?」

嵐斗の一言に俶は「まあね。中学の時だけど、伯父さんの仕事を手伝った時に使い方を教わったから」と答えながら2人は倒木の枝を鋸で切り始めた。

 一方、野良仕事に精を出す嵐斗達に比べ、颯斗は自室に籠って嵐斗から借りた「護身術指南書」を読んでいた。


・颯斗は語る

 これを読んでまず思った事は「格闘技とは如何にして相手の痛急所を打つか」と言うこと……人の痛急所を大体的に上げると、顔面・喉・鳩尾・股間・脛と言ったところで、その全てが打撃に弱い。

 嵐斗は空手も柔道も黒帯という時点で恐らく打撃なら最悪相手を昏倒させることも……いや、そう言ったレベルの事をしたことがあるのかもしれない。

 そして、この間の腕相撲で解ったことが、突然体勢が崩れて地面に叩きつけられると、殴られるのとは違い、一点ではなく体全体に衝撃が走り、体が一時的に動かなくなるということ……

多分だが、嵐斗は無意識に柔道技の要領で腕相撲をしていたのかもしれない。


 本を読み終えた颯斗は机の上に本を置いてふと思った。

(嵐斗は小技とは言ってたが、どういった時に使うのが有効なのかいまいち解らないな)

法治国家である日本では犯罪に巻き込まれること自体が非常に珍しい。

 颯斗は椅子から腰を上げて部屋を出ると、黒のTシャツにジーンズ姿の依吹が廊下にいた。

右手に厚みのあるA4サイズの茶封筒を持って、左手に水色のキャップを持っているところを見ると、これからどこかに出かけると言うのが解る。

「依吹、どこか出かけるのか?」

依吹はキャップを被りながら「郵便局にこれを出しに行くところ」と答えた。

 なぜか妹をひとりで外出させることに不安を感じた颯斗は依吹にこう言った。

「なら俺も一緒に行くぞ。ちょうど散歩に出ようと思ってたんだ」

颯斗はそう言うと、依吹は不思議そうな顔で「颯斗お兄ちゃんが散歩? 明日は吹雪かな?」と珍しいことが起こった後に起こる天気を口に出した。


・颯斗は語る

 ちなみに依吹が郵便局に出しに行く茶封筒の中身だが、ズバリ漫画の原稿だ。

依吹は中学1年の頃から漫画を描いており、コンテストがある度に原稿を描いては応募している。

最後に読んだのは去年辺りの事だったからどう言った漫画を描いているかは覚えていないが、BLではなかったはずだ。

てか、そんな歪んだ性癖の妹は兄として受け入れたくない。


 颯斗は室内着から白のYシャツにジーンズに着替えて、履きなれたスニーカーを履いて依吹と一緒に家を出た。

 道中を歩きながら、颯斗は蜜奈と見に行く映画について依吹に相談した。

「あたしのオススメは「ローカルロマンチスト」かな? 「灯台の下で」は友達から原作の本を貸して貰ったけど、展開が解り過ぎちゃってつまんなかったし。なら、主人公にクセのある「ローカルロマンチスト」の方が面白いと思うよ?」

そう言う依吹の意見を参考にし、颯斗は観る映画が決まった。

「そうなのか? 俺は予告とか見たことないからサッパリ解らんけど、依吹が薦めるならそっちにしようかな? そもそもどういった内容の映画なんだ?」

 そう尋ねる颯斗に内容を少し知っている依吹は楽しそうに答える。

「ローカル線にロマンを感じる主人公とローカル線の旅に出た女性の出会いを描いた恋愛映画で、主人公のローカル線に対して持つ世界観が独創的なのが魅力なんだよね」

颯斗はそれを聞いて「ホウホウ」と内容を理解すると、依吹は最後に「あとで予告編見たら?」と奨めた。

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