ハッピーハロウィーン♪

 おかしい。


 ぴーちゃんのあまりのクオリティにびびったが、実はおっさんの仮装衣装も自前だ。融同様ネットで漁っていたら、それを覗き込んだおっさんが言ったのだ。

『おじさん、似たようなの持ってるから着てくるよ』


 自前の衣装だもの。

 ぴーちゃんみたいにしっくり来るのが道理だ。


「何故……」


 呆然と呟く俺にかずこさんが答える。


「縮んだからよ」


 真っ白な、如何にもシークな衣装の裾を引き摺っておっさんがパンプキンパイに舌鼓を打つ。そうか丈が余っているのは縮んだ所為か。

 なんて残念なんだ、おっさん。

 頭から被っている如何にもアラブなアレも、帽子の下に真っ白なタオルを敷き込んだ野良仕事仕様にしか見えない。


「でもかずこさん。三頭身に縮んだのはぴーちゃんも一緒なんじゃあ」

「前にも言ったじゃない。ぴーちゃんは元から大体あんな感じだったのよ。それに、おっさんが寸足らずなのは三頭身の所為じゃないわ」


 なん、だと?


「進化とか馬鹿なこと言ってしょぼくれたからよ」


 そういえばそんなこと言ってたような。


「おとなしく弟に押し倒されてりゃ好かったものを」


 こら待て。

 かずこさんは憎々しげにハンカチを噛んでいるが、そこは違う気がする。


「せっかくお膳立てしたこっちの身にもなって欲しいわよね」


 お膳立て……だと?


「今度はもっと巧くやるわ」

「今……度?」


 かずこさん、ヤベえ。うっかりしてたら餌食にされてしまう。


「やあねえ。おっさんたちを怯えさせるようなことはしない、って意味よ?」

「だよな!」

「そうよぅ。もー、渚くんったらぁ」


 あはははは。うふふふふ。

 乾いた笑いが二人を包む。

 恐ろしい。気を抜かないようにしなければ。

 俺は決意も新たに談笑する皆に目を向ける。


「渚くんもこっちおいでよ。美鈴ちゃんのパンプキンパイ、美味しいよ」


 おっさんが手招く。


「おう渚。早く来ないと全部食っちまうぞ」


 金棒を脇に置いてフォークを握るぴーちゃんもご満悦だ。

 そうだな。今日はせっかくみんなが集まったパーティーだ。食って飲んで楽しもう。


「おっさんはしょぼくれちゃったけど、今の方がずっと幸せそうだわ。ちんちくりんの仮装も可愛いじゃない」


 かずこさんが笑う。


 そうだな。そうだと嬉しい。


 街中では元気な奴らがはしゃいでいるんだろう。それに比べてうちのパーティーは地味だ。カボチャの飾り付けも派手な趣向も無い。ただ食って笑って語り合う。そんな毎日におっさんが幸せを感じていたら嬉しい。

 どんなにしょぼくれててもおっさんが可愛い天使なのは。今更だぞ、かずこさん。

 


 

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