かずこさんの過去

 順番からしてかずこさんの過去語りだろう。なのに。


「忘れちゃった」


 うふ。とかずこさんが笑う。


「オンナの過去を聞きたがるなんて、渚くんのえっちぃ」


 くねくねと体を揺らして。ちっちゃいとはいえ、まあまあな破壊力だから勘弁してほしい。


「そうか。忘れたんならしょうがないな。おっさんに教えてもらおう」


 かずこさんがおっさんやぴーちゃんの過去を垂れ流したんだから、おっさんがかずこさんの過去を暴露してもいいだろう。かずこさんめ。うちのおっさんを怯えさせやがって。ちょっとは恥ずかしい思いをするがいい。

 俺はおっさんに向き直った。


「うわあっ。おっさんどうした!?」


 なんと、今やおっさんはガタガタとテーブルを揺らす程に震えている。いったいどうしたっていうんだ!

 頭を抱える俺にぴーちゃんが近づいて、ぽんと肘を叩いた。きっと、肩を叩いたくらいのつもりなんだろう。


「あんまおっさん泣かすなよ」

「そんなつもりは……」


 何だ。俺は何かやっちまったのか? 喜ばせたいと思いこそすれ、おっさんを泣かせようなど露ほども思っていない。


「俺たちにとってかずこさんの思い出はな、」


 ぴーちゃんは眉間に皺を寄せたまま唇の端をあげた。今にも人を喰らいそうな顔だが、これは多分自嘲だろう。


「忌々しい妄想とセットなんだ。あんま思い出したくねえんだよ。聞いた話では、おっさんは相当やられたらしい。イケメンだったからな」


 もう一度ぽんと俺の手を叩いてぴーちゃんは融の方に戻っていった。


「おっさん」


 手を伸ばそうとして思いとどまる。

 やべえ。かずこさん、ガン見してる。ちょっとにやにやしてる! もしかして餌食になりかけてるんじゃあ……。


「かずこさんの過去はもういいや。考えてみたら、そこまで興味なかった」

「何それ、ひどーい」


 ケラケラ笑ってかずこさんは立ち上がり、スカートの皺を伸ばした。言葉とは裏腹に気にしている様子はない。


「さ。デザートもいただいたし、私そろそろ帰るわね」


 ばいばーい、と手を振って、かずこさんはあっという間に消えてしまった。

 

「嵐のような人だな」


 残された俺たちは、しばらく呆然と彼女のいた場所を眺めていたのだった。





     👼👼👼


 ノリと気分転換で書き始めたおっさん。

 気がつけば最近、気分転換しかしていません( ºωº ;)

 そろそろ、放ったらかしにしている行き詰まってたやつを何とかする頃合いかな、と思います。

 丁度かずこさんも帰りましたし、おっさんはペースを落としてぼちぼち続けていきたいと思います。

 これからもどうぞよろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ᵖᵉᵏᵒ

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