家族の絆

愛坂 蒼

第1話

高校受験を乗り越え、なんとか志望校に入る事のできた僕はそのことに安堵していた。その安堵のあまり春休みをだらだらと過ごしていた。

そんな時に父さんから呼ばれた。リビングに行くと母さんはもう寝室にいるようで姿は無かった。しかし、いつもは穏やかな雰囲気をしている父さんが難しそうな顔をしていた。

「どうしたんだよ父さん。大事な話ってなに?」

そう言いつつ父さんの前に腰掛ける。それから何分経っただろう。父さんはゆっくりと口を開いた。

「実はな・・・かける。母さんと父さんと翔の血は繋がっていないんだ」

ゆっくりと、しかしやけにあっさり父さんはそう言った。そんな父さんとは対照的に僕はその言葉の意味が理解できずに狼狽えるしかなかった。

「は?どういうこと?」

「そのままの意味だ。翔、お前は家族だが血は繋がっていない」

血が繋がっていない。僕と父さんと母さんが?でも僕と父さんは似ていると近所の人からもよく言われている。でも、血は繋がっていない。

僕はふらふらと自室に向かった。

「翔、まだ話さなければいけないことが・・」

「少し考える時間をくれ」

僕は吐き捨てるようにそう言って自室の扉を閉めた。そのまま扉に背を預けてずるずると座り込む。

僕は父さん、いやもう父さんでもないのか。あの人と僕は関係のない赤の他人か。今まで気づきもしなかった。一緒に暮らしてきて、当たり前に家族と名乗って父さん母さんに甘えて生きてきた僕が急に惨めに思えてきた。

思い出せる一番昔の記憶まで辿っても、僕の本当の親らしき人の記憶は出てこなかった。もしくは僕自身が蓋をしているのかもしれない。

嫌な予感を振り払うように僕は首を振る。大丈夫、僕と父さんと母さんは血が繋がっていなくても家族なんだ。

僕は一晩中、自分にそう言い聞かせていた。

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