第4話 待ち合わせ

いつものあの喫茶店は、今日も空いていた。


いつもの奥の角の席。

いつものマスターに、いつものコーヒー。


なのに、こない。

なぜだろう?いや、本当は気付いている。


──すごく緊張しているんです、俺!


書くつもりもないのに原稿用紙を広げて、

ただただコーヒーを飲む。

…教科書広げて、バカみたいに騒ぐ女子高生をサイゼリアで見たのを思い出した。


──チリンチリン。

入り口の鈴がなり男性が来店した。

あの人だろうか?

もしそうなら、予め奥の角の席だとメールしたからこの席に来る。


携帯の連絡先くらい聞くべきだったかな?

なんて、小さな後悔をコーヒーで流し込む。


……が、その男性はすんなりカウンターに座り注文をする。


違うんかい!と思った矢先にまた鈴が鳴る。


入り口へ振り返ると、髪の長い…女性客。

また違うようで、女性も離れた席につく。


そんなことを何度か繰り返し、時計を見ると待ち合わせの時間は悠に過ぎていた。


──すっぽかされたか。


いや、たまたま用事ができたとか、縁起でもないが事故にあったのかもしれない。

連絡手段が家のパソコンからのメールのみでは、こちらからも向こうからも出先で連絡ができない。待ち合わせには致命的。


……帰ろう。


残りのコーヒーを流し込み、会計しながらマスターに呟く。


「いつもより、少しコーヒーが苦かった」

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