第2話

どんな学校で、どんな生徒であっても同じだろう。

学校は退屈です。

だからと言って、ダラダラと過ごす事はないんだけどね。


『お前は、真面目だな。』

オッサンが、カレーをガツガツと掻き込んでいる。


「誰よりも強くなる為だよ。」

僕は、デカい赤身の肉を丁寧に切り分けて口に運んでいる。

食事も身体を造る重要な要素なんだから、気を付けるべきでしょ。


『飯も可愛げねぇし、で授業への向き合い方と言い、オッサンだわ。』

オッサンに言われたくない。

それを無視する様に黙々と肉を咀嚼する。

このオッサンとは近く年齢差があるけど、こうやって無視ったりも出来る位には親しい。

完全な実力主義な世界で、僕の力を認めてくれてると言う事だと思う。

侮られる事ばかりの僕としては有難い事、この上ないけど感謝の言葉は言ってやらない。

言えば調子に乗るから。

オッサンが調子に乗ったり、デレてるの見たって、誰得なの?って感じだし。


『アンタ達って、いつも一緒ね。』

と言ってくる貴女も一緒じゃないか。とは言わない。面倒だから。


『ほらっ、口元が汚れてる。

大人の真似しても、まだまだ子供なんだから。』

そう言って、ナプキンで僕の口元を拭ってきた。


「ちょっ、止めてよ。」

恥ずかしくて慌てて止めるが、周りは微笑ましいものを見たと言った空気に包まれている。


『照れなくてもいいの。学園生だからって貴方は、まだ。。。。』

「ヤメロ!」

被せる様に冷たく言い放つ。

明らかに周りの空気が凍り付いたが、構わない。


『ふんっ、さっさと喰え。肉が硬くなるぞ。』

オッサンは、どこ吹く風でカレーうどんを啜ってる。

カレーライスの次にカレーうどんって、どんだけカレーが好きなんだよ。


『くそっ、喰う順番間違えた。カレーうどんから、カレーライスの方がうめぇ。

もう一回、カレーライス行くか?

それとも味変えて、スープカレーにするか?いや、焼きカレーもいいな。』

このオッサンの頭の中にはカレーしかないのか?

オッサンのカレーに浸食された話に気を取られてた間に周りの空気も元に戻っていた。

意図してかどうかは分からないけど、オッサン様々です。絶対に言わないけど。




『おらぁ!』

ストレートに拳を突き出し、迫ってくるオッサン。

その拳を叩く様にして力を反らすと、その勢いそのままで背負い投げ。

身長差もあるので、アッサリと背負わせてくれる。

だけど、それも誘い水だった様で、僕を持ち上げるとプロレスラーみたいにバックブリーカー。

投げ放つのではなく、地面に頭から叩き付けようとするソレ。

僕は、一瞬の脱力でオッサンの拘束を抜け出ると、厚い胸板を蹴って脱出。

置き土産として、背面からの踵蹴りあげで顎を掠めた。


『チビ助が!ちょこちょこと動き回る。』

蹴られた顎を擦りながらもオッサンはニヤニヤしている。たいして効いていないらしい。


「くそゴリラ。。。。」

小さく呟く様に言ったが


『『『くすくすっ。』』』

笑いを堪える様な声が、此処彼処そこかしこから聞こえてくる。

まぁ、同じ訓練を受けているんだから、僕と同程度の聴力を皆が持っている。そりゃ、聞こえるわな。

それは勿論


『言ってくれるじゃねぇか。』

ニヤリと笑ったオッサンも同じ事だ。

この後に散々、床に叩き付けられて気絶した。

片腕で持ち上げられて2m以上の高さから叩き付けるんだから、ゴリラと同じだろうが。

いい線行ってると思うんだけど、どのクラスメートにも勝つ事は珍しい。

オッサンには、尚更勝つ事は少ない。



保健室とは名ばかりの野戦病院の様な場所で目を覚ます。

30分程度は意識が飛んでる。

これも何時もの事だ。

格闘術の後は、大抵がココからスタート。

RPGなら、教会みたいなもんだ。

起き上がると、周りのベッドには数人が唸って寝込んでいる。意識がないヤツも数人。

これでよく、死人が出ないもんだね。


『おぉっ、起きたか?いつも早いな。』

タイトなスーツで長めの髪を後ろで縛り、メガネを掛け、白衣を着流し、その白衣に負けない位の白い肌。クールな物言いや仕草とは違って、手厚い看護で定評がある。

そんな保健室ココの主(男)です。


「まぁね。いつもの事だし。」

保健室の主に軽く返しながら、身嗜みを整えて部屋を出ようとするが膝が折れ、倒れそうになる。


『おっと。まだダメージが抜けきれてないぞ。もう少し休め。

体が資本なんだ。無理はするな。』

そう言って、お姫様抱っこでベッドまで運ばれた。

勿論、こんな格好ではこばれるのなんて不本意だから抵抗しようとはしたけど、アッサリと制圧されて、手首を極められながら抱き上げられたから身動きが取れない。

細い男ではあるが、この人も只の男ではないと言う事だ。


『お~い。』

保健室の主が奥に声を掛ける。


『はいっ。』

返事と共にスタッという音が小さく鳴り、寝かされたベッドの傍らには、ピンクのミニスカナースが立っている。


『いつもの通りに寝かしつけといて。』

保健室の主の主が命じ


YES Sir. はい。分かりました。

軍人ばりの敬礼をして応えるナース。

今度はミリタリー系の映画か漫画を観たんだな。

すぐ影響を受けてる。

この前は、『分かったっちゃ☆』とか言ってた。

でも表情は、能面を着けたかの様に全く変わらない。

保健室ココの住人は感情が死んでるんだろうか?

ただ人気は学園内でも高く


『きゃ~。抱っこしてた。お姫様抱っこよ。』

『すごぉ~い。今日はレベル高かったし。

売れるレベルよ。』

『ショタよ。ショタ。。。凄いぃぃ。』

何人かの女子生徒が興奮しながら、保健室を覗き込んでいる。

携帯電話を向けながら。。。

毎度の事だし、もう慣れてきたけど。

完全に止めさせる事も出来るけど、いいガス抜きだと毎日数人だけは許可しているらしい。

学園の外も大変だけど、この学園は特殊な奴らが集まってきている。

外の世界よりも大変だから、僕は寮に住まずに外から通っているんだ。

普通の感覚を忘れない為にもね。








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