第22話
帝国軍東部戦線にて敵8個軍団を包囲殲滅
合州国の参戦に影が落ちた帝都に素晴らしい報せが齎された。
参謀本部はフォン・ルーデンドルフ上級大将が採用した消耗抑制ドクトリンではこのような大戦果は上げられないと表明。
帝室はその戦果を賞賛したものの、自らも優秀な魔導士官として知られているアマーリエ皇女殿下はコメントを拒否している。
ベルンタイムズ誌
†
1946年東部戦線
「これは、同志ベリア。お伝えいただければ迎えを寄越したのに。」
「構わんよ、同志ヴァシレイスキー元帥。」
「ふむ、それで何用ですかな?」
「同志、モスコーは貴殿に親衛軍の動員と指揮を任せる事を決定した。」
「…私にですか?」
同志ベリアはNKVDの長官であり、トファチェフスキー元帥の腹心の粛清屋。ヨシフの大粛清を推進しつつ、元帥を生き残らせてヨシフをキーフに送り込んだ。
「勿論。親衛歩兵軍4個に親衛戦車軍8個計12個親衛軍だ。」
「…ご命令は?」
「キーフを喰らう。ジョーコフとヨシフの首を私に持ってこいと同志トファチェフスキー元帥はお望みだ。任せるぞ。」
内務人民委員部の兵士に運転させた車に乗ってさって行った。
「…ペドフィルめ。」
連邦指導者はトファチェフスキーだが、共産党最高軍事指導部同志ニコライ・ブファーリンにもかなりの権力がある。
「…やるしかない。私が死なない為に。」
†
「大隊長殿、帝国はどうなると思われますか?」
「伍長、聞く相手を考え給えよ。が、負けだな。」
「…ですよね。私は生きて帰れるのでしょうか?」
帝国軍第87擲弾兵連隊第2大隊。東部戦線激戦区第5師団管区。1週間に渡り連日続いた連邦軍2個軍団の猛攻を凌ぎ撤退させた。
「伍長、中佐せめて俺の前では口を慎め。」
第5師団及び第87連隊はほぼ戦力を失い、最も損耗比率の少ない第2大隊に残存兵員を集め第5師団残存の砲兵大隊と戦車中隊を付随させ戦闘団を構築した。
「戦闘団長殿!連邦軍戦車部隊が前線から引き下がって居ると司令部から入電です。」
「…欺瞞か?追撃はするな。」
「……何事だ?」
†
帝国軍東部戦線司令部
「…閣下、何をするつもりですか?」
「連邦軍が引き下がっている今、勝利の好機だ。」
「欺瞞に決まってます!」
「貴様に他に策があるのか?」
「ここで留まるべきです。」
「それでは機を逃す。」
「…は?」
「帝国将兵の血で購った勝機を逃す。」
「帝国将兵の血で購うのは勝機ではなく、国家の存続です!」
「…憲兵、大佐を連れていけ!」
「憲兵、閣下はお疲れだ。お休みになる。」
「…な、何をする!」
「諸君、帝国を救うぞ。」
愛国心と忠誠心を規律と天秤にかけ、決断した無能な指揮官への反抗。彼らの決意は1発の爆弾が司令部に着弾したことにより無残にも消しさられる。
1946年東部戦線崩壊、残存兵力33個擲弾兵師団及び17個装甲師団、22個装甲擲弾兵師団は合州国が開発し連邦軍が実験した新型戦略兵器、大規模破壊兵器。つまり原子力爆弾により殆どの戦力が無力化された。
東部戦線の連邦軍大規模撤退はこれが理由であると考えられる。接近すると放射能に汚染され生命の危機も考えられる為に後方に防衛線を再編する必要があると考えられる。
放射能は暫く続くだろうが重度の汚染は比較的速やかに緩和されると考えられる為、警戒は必須であり、連邦軍の浸透は数週間から数ヶ月で大規模な物が想定される。
執筆者
西方方面軍司令部隷下独立混成戦闘団イェーガー団長及びロクソニア特務旅団長
帝国軍准将ヨハン・フォン・クロイス
参謀本部付特務参謀
アマーリエ・フォン・ブランデンブルク=プルーセン中佐
以上の報告書は早期に魔導師は放射能を含む全ての毒性物質に耐性が存在すると示した最古の資料であり、また歴史学者やクレムノロジーの専門家をも唸らさせた史実を見てきたかのような文章は現在も各国で筆者ヨハン卿は研究対象となっている。
ロンディウムタイムズ編集部
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