第21話
西方方面軍が編制。対合州国上陸警戒として擲弾兵師団を海岸に張りつけ、装甲擲弾兵師団と装甲師団を上陸の報が入り次第急行するという。が実態は2線級や東部戦線で消耗した師団や新編師団の混成でまともな戦力にはならない。一部東部戦線からの増派組と我々のような部隊はそれなりにやれるが数が足りない。
「それでは、西部戦線戦略会議を始めよう。」
「先ずは敵軍の予想上陸地点とその規模です。我々参謀部はパルドカレーと予想し、規模は恐らく最大でも4個師団は越えますまい。」
「反対だ。最大数は上陸前に活動する2~3個空挺部隊、上陸部隊本隊は十を超える規模になるかと。」
「クロイス准将、根拠は?」
「敵への強襲偵察の結果だ。パルドカレーに上陸するかのように欺瞞しているが、本命は恐らくノルマルディア。ノルマルディアには6個師団程が上陸するだろう。その前に我々が叩く。」
「具体的には?」
「我々の魔導部隊が対岸の物資集積地点を打撃、連合王国女王陛下を奪還済みな訳だから旗をロンディウム塔に突き立ててこよう。」
女王陛下のベルン訪問中の出来事だった。
電撃的に上陸した合州国軍は速やかに全土を席巻すると自由連合王国軍や植民地師団、そして国王を帰還させ統治を安定させた。
「正直に言おう。参謀本部総長からは准将を重用しない様に命じられている。が、貴殿の意見を採用しよう。上陸地点は恐らくノルマルディア。その前の空挺投下などを警戒し私の名前で要請しよう。」
「オッペンハイマー閣下!南方派遣軍が西方方面軍の指揮下に入りました。」
「何故だ?」
「上級大将閣下、ロメール閣下との契約です。ルーデンドルフ閣下が最後に発令された命令により秘密裏に海軍の協力により来援。今の内に再配置しましょう。既に大運河は爆破済みですしね。」
徹底的に叩く。
「空軍にはこちら側はある程度緩めこちらで完全に欺瞞します。パルドカレーを完全に水を漏らさぬ警戒をお願いしたい。」
「手配しよう。他には?」
「海軍戦力を当日まではパルドカレー方面に。」
「勿論だ。我々海軍もエーリッヒ・レダーの名に賭けて必ずその通りにしよう。」
合州国との講和が不可能に近い現在、我々は単独で戦い連邦には拮抗ないし勝利を得なくてはならない。帝国従来の機動戦ドクトリンに従い奴らは連邦軍の包囲殲滅を狙う筈だ。
それは全く意味が無いだろう。
成程、彼らは鉄の前衛集団であり、祖国への献身と共産党への忠誠心から志願し果てた英雄たちであるのだろう。それらによって温存された真打が親衛師団な訳だ。
コレが示すことは東部戦線での持久戦術の崩壊だ。消耗抑制ドクトリンは既に排除され地帯防御も機動防御も取れず恐らくは蹂躙され数に圧殺される。質と数の減少してくる帝国軍に対し、連邦軍親衛師団は質と数は圧倒的に上。
つまり、
「我々に対抗出来る残された術は合州国軍をとことん叩いた上での一撃講和。それしかありません。」
望みは限りなくゼロに近いという事だ。
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