第14話

「連隊各位、撃て!」


魔導猟兵が地上で防衛戦をしなければならない程に状況が悪いとは。

連邦軍の魔導師は質が極端に低い。帝政を信望し、支持した魔導師達は連邦において抑圧され、粛清された。その事かはボルシェビキの一大反動勢力となっているのは分かるが、訓練も出来ず強力な適正持ちから粛清された為に質は帝国軍の基準では採用すらされない程度。だが、他の戦力の数はバカにできない。


When Albion first at Heav'n's command

Arose from out the azure main;

This was the charter of the land,

And guardian angels sang this strain;

Rule, Albion Albion rule the waves:

Albions never never never shall[will] be slaves


連合王国軍か。エリザーベス二世陛下治世に変わり連合王国は帝国側で参戦した。共和国軍の旧植民地軍を率いたアンリ少将の共和国反メンシェヴィキ師団、F軍集団がバグーを目ざし、現在進軍中。帝国軍東部統合司令部司令長官にゼークート大将を補任した司令部命令により、ドニエスプルの守り作戦が決定された。

ウクラーナ方面はF軍集団に任せ、赤軍に頑張ってもらい、北部で旧連合系から募った反共師団ノルトラント義勇軍団を使用しこれもまた防衛。

中央部はとにかく失陥した領土の奪還を狙う。歩兵師団で延々と防備し、後方から重砲の移管を急ぐ。そして、俺は反攻作戦の立案を命じられた。


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帝国軍反攻作戦原案。

現在目下歩兵による防衛のみ行われており、装甲部隊は機動防御担当以外遊兵と化しているのが実情であり、その装甲部隊と装甲擲弾兵によるバルバロッサ反攻作戦用部隊、帝国軍第19装甲軍の編成を提議する。

編成概案

(参考資料として東部戦線司令部より遊兵化部隊一覧を使用)

司令官ヴィルヘルム・リッター・フォン・レップ陸軍大将

参謀長フランク・ハルダー陸軍少将

第25装甲軍団

└第72装甲師団

| └第501独立重駆逐戦車連隊

└第78装甲師団

└第103装甲師団

└第40独立自走野戦重砲兵連隊

└第502重戦車連隊

└第405魔導猟兵連隊(ブラウ連隊)


第37装甲擲弾兵軍団

└第37装甲擲弾兵師団

└第48装甲擲弾兵師団

└第4近衛装甲擲弾兵師団

└第41独立自走重砲兵連隊

└第42独立自走重砲兵連隊

└第604魔導猟兵連隊(ヴァイス連隊)


第6近衛装甲軍団

└第1近衛装甲師団

└第2近衛装甲師団

└第62装甲擲弾兵師団

└第43重駆逐戦車連隊

└第817軽駆逐戦車連隊

└第3独立自走重砲兵連隊

└第89偵察装甲大隊

└第103近衛魔導猟兵連隊(レガリア連隊)


第101近衛魔導猟兵連隊(ベルン連隊)

└第一大隊48名

└第二大隊36名

└第三大隊36名


第19軍砲兵司令部

└第一連隊

└第一大隊(17cm K 18×24門)

└第二大隊(17cm K 18×24門)

└第三大隊(15cm K 18×24門)

└第二連隊

└第一大隊(パンツァーヴェルファー×24門)

└第二大隊(カチューシャ×24両)

└第三大隊(カチューシャ×24両)


第46対戦車砲大隊

└中隊各に8.8cm PaK 43 6門×4


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赤軍からライセンス生産により新生産された36連装ロケット砲。トラックに載せただけのこのロケット砲は快速な上に悪路走破性が高い。何れはパンツァーヴェルファーをカチューシャに変更する予定である。

本国から編成許可が出た、装甲軍は目下集結中であり、東部戦線の遊兵の為結集は早い。


「着任歓迎します。レップ大将閣下、ハルダー少将閣下」


「貴官が、クロイス大佐か?」


「その通りです。小官がクロイスであります。」


「ハルダーやレットウ=フォルベク閣下とも決めていた事だ、貴官を東部戦線特務参謀に任命する。参謀本部付も維持したままな。」


なんか肩書きが着く度に給料が上がるのは良いのだが、比例して面倒は増え、自由は反比例して行くからな…


「光栄であります。」


「行こうか。連邦の冬は寒い。」


そうなのだ。今は冬。それも状況を悪化させる要因の一つになっている。


「レップ、忘れているぞ。」


「ああ、そうであった。これを。」


従兵が恭しく持ってきたのは、長剣。肉厚の刃に、斬れ味の鋭さが見てわかる100cmほどの直刃の両刃剣。


「これは?」


「我が家に伝わるダマスカス鋼の長剣だ。貴官が使え。」


確かに魔導師にはライフルの他に剣を使う者も居るが……剣を使ったのは何年前だ?


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『バルバロッサコントロールよりベルン01。気候状況は良好。敵部隊観測無し、反応も無し、ジャミングすら確認されず。情報送れ。』


「了解。ん?これは!警告!警告!ANZAC兵だ!ANZACの極大射程での対魔導観測射撃だ。」


ANZAC兵は飛べない。慣れど一定以上の戦力を持つのはその特技たる極大射程を誇るアウトレンジからの対魔導観測射撃に他ならない。


『戦域警戒警報発令。ANZAC兵を観測。』


「04、やれ。」


『了解。大隊、続け。』


こちらが囮になっている間に一個大隊が離脱し屠る。一応、こちらでもいる可能性のある辺りを手当たり次第爆撃する。一際大きい爆裂術式のあと通信が入る。


『04より01。ANZACを処理した。』


「了解、バルバロッサコントロールへこちらベルン01。ANZACを処理。繰り返しANZACを処理した。」


旧連合王国植民地のアウストレリアとニューザーランド、カナディアのその3つが現在の自由連合王国の勢力圏である。俺はこの機会に自由連合王国が介入しないか心配である。だから、A軍集団の西方からの転向に反対したのだ。インデンシナと海峡植民地のシンガーポート以外を扶桑皇国に割譲し代わりにこちらはベネルクス領東バーラトを獲得した。

帝国領バーラトは数年後には帝国領に編入される。龍華民国や龍華人民共和国の介入は危険。扶桑皇国には警戒してもらいたいものである。


『了解。貴隊に頼みたい。一個増強大隊規模の魔導師の浸透を許した。』


連邦軍に一個増強大隊規模の浸透を許す?帝国軍の空軍や魔導猟兵の哨戒網を突破できる練度はない筈だが…。どうもきな臭い。


「了解。03向かえ」


『03了解。』


手元に一個増強大隊を残し、第三大隊に周辺警戒を任す。第二大隊にバルバロッサコントロールからの命令を処理させる。

ハンドサインで停止させ頭を働かす。


「連隊!司令部に戻る。狙いは司令部だ!」


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『同志大佐殿、敵は騙されましたな。』


「ああ。自由連合王国には感謝だ。」


自由連合王国軍の増強大隊がわざと侵入してくれる。空軍偵察機がたまたま補足した敵司令部と思しき、地点を爆裂術式で攻撃する。可能だろうと考えられていた。その時、たまたま、見た太陽に何かきらめいた様に見えた。


「ん?ッ!」


警戒を促そうとした時、既に身だがうごかなくなっていた。


…………

「同志大佐殿!っ!連隊戦闘態勢に入れ!」


目の前でによって大佐の身体が両断された。


「上だ!太陽を背に降下してくるぞ!」


単騎で魔導師が突っ込んで来る。乱射された光学術式は回避に手一杯で対処出来ない。


『こちら帝国軍近衛魔導猟兵連隊。貴様には降伏を勧告する。』


接近してきた単騎の魔導師の後ろに大隊。我々の背後に大隊。下にも大隊が展開している。


膠着…か。

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