第12話
「クロイス戦闘団揚陸完遂。」
戦車大隊、自走砲装備の砲兵連隊、魔導猟兵増強大隊、空挺大隊からなるクロイス戦闘団。精鋭部隊を配属されているため帝国軍の縮図だとも言える。
「諸君、任務は理解しているな?出撃せよ!」
空挺大隊が官公庁を制圧し、戦車大隊や砲兵連隊がエリーザベスの居る宮殿を守る。そして我々魔導増強大隊はモドレーの首を狩る。
「お久しぶりです、モドレー殿。」
部下の少尉が重厚な樫材の扉を蹴破り、中のモドレーに銃口を向ける。
「何故だ、クロイス中佐!私達は理想を共有するファシズムの信徒では無いのか!」
嗚呼嫌だ嫌だ。頭のオカシイのはこれだから。
「俺が何時、ファシストだと?」
「私に賛同したのだから、ファシストでは無いのか!」
「キチガイには何を言っても無駄か。構え!略式裁判、エリーザベス陛下の代行者ヨハン・フォン・クロイスが行う。罪状大逆罪、判決有罪の上銃殺刑。」
部下たちがアサルトライフルを構る。普通の銃殺刑は一人分のライフルのみ空砲だが、今回は勿論全てのライフルに銃弾が装填されている。
「やめろ!巫山戯るな!」
「執行。」
指を鳴らし、部下たちが引鉄を引く。
連続する発砲音はライフル弾を放ち、それはモドレーに突き刺さる。モドレーをただの肉塊と化し、その身体を数度撥ねさせた後、沈黙した。腰のホルスターから自動拳銃を引き抜き、眉間に向けて構える。
1度、引き金を引き、9mmの拳銃弾は額に穴を穿った。
政府庁舎の中の各所で発砲音が響く。防衛しようとするアルビオン黒シャツ隊が決死の抗戦を行うが、魔導師には勝てない。最後の1名が倒れ、モドレーと全ての幹部、黒シャツ隊の排除が完了した。
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「エリザーベス二世陛下御即位!」
ロンディウム中にその報が響く。
「神の恩寵によるアルビオン、アイリシア及びアルビオン海外自治領の女王。信仰の擁護者。バーラト皇帝。コモンウェルスの長たるエリザーベス二世陛下御即位!」
アルビオン国教会の頂点カンタベリ大主教によってエリザーベスの頭上に王冠が与えられる。ロンディウム市民は市民から人気の高いエリザーベスの即位に占領下の不満を覆い隠すように歓喜する。
「ヨハン・フォン・クロイス子爵であります。帝国政府を代表し、皇帝陛下と皇太子殿下、第一皇女殿下よりのご祝辞を代読致します。」
この様子は魔術によってリアルタイムでロンディウム中に放映されている。
《この度のエリザーベス二世殿の御即位を歓迎する。我らの間には長い争いがあった。だが、それもこの度解消される。ロンディウムは我々の手によって焼かれた。それをも余は謝罪しよう。今や貴国アルビオン連合王国と我らは友好な同盟国である。この場を借りて発表したい。連合王国軍の再建を要請し、帝国軍のロンディウム占領の解除を表明する。神聖ゲルマニス帝国皇帝ヴィルヘルム三世
エリザーベス二世陛下の御即位おめでとう。両国は争いによって交流を絶たれたが、同じ君主国として共に歩んできた歴史がある。それを取り戻せれば私は嬉しい。エリザーベス二世陛下。私は貴女とは同じ学び舎で学んだ友人時代がある。その頃の友好を取り戻せれば幸いである。
神聖ゲルマニス帝国皇太子フリードリヒ・ヴィルヘルム
神聖ゲルマニス帝国第一皇女アマーリエ》
帝国系貴族が拍手する。彼らは家門の祖が帝国と言うだけで帝国との戦争の間肩身の狭い思いだった。
「また、帝国政府よりお祝いの品として、3匹の犬をお贈りいたします。」
エリザーベスは鷹揚に頷く。これでよし。仕事は終わった。
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