第2話

「クロイス候補生。貴様は残れ。ゾデイス、貴様は話を聞いておけ。」


教官は俺と話があるといいゾデイスにはそれを黙って聞いていろと命じた。断言しよう、面倒事だ。上官から残れと言われていい話なんて事はほぼ無い。


「明日、第一皇女アマーリエ少佐がお越しになる。軍高官を連れてだ。そこでクロイス候補生、貴官に中隊を任せ、模擬戦をして貰いたい。相手はゾデイスだから勝てるだろう?」


答えにくい質問を。


「可能であります。」


「これは内々の話なのだが、皇女殿下は貴官に目を付けているらしい。上級曹長。」


下士官としての階級で俺を呼び、こそこそと囁くように話をする教官、男の顔を近づけられても困るのだ。

戦姫と呼ばれるアマーリエ少佐ならば親衛隊を作るという話があったな。前線のネタかと思っていたのだが。


「かしこまりました。了解しておきます。」


「結構だ。よろしくな。」


教官殿の出世もかかっている。面倒事だ。

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即時同室からなる基幹小隊を編成、仲のいい候補生の中から優秀順に2個小隊を編成。

計3個小隊で、中隊を作った。


「演習編成、第一中隊中隊長ヨハン・クロイス士官候補生であります!」


「演習編成、第二中隊中隊長トーリス・フォン・ゾデイス士官候補生であります。お久しぶりです、ルーデンドルフ閣下。アマーリエ殿下!」


余計な口を挟むな!


「うむ、期待している。」


意気揚々とテンションを上げるゾデイスだが彼の部隊の候補生は全く乗っていない。


「クロイス候補生、貴様は北方戦線で3年間の従軍経験が有るのだな?」


アマーリエ少佐が下問される。


「はっ!3年間、第205強襲中隊で奉職しておりました。」


「205、そうかマティーニ少佐の古巣か。」


「マティーニ少佐にはお世話になりました。」


「私もマティーニには世話になった。」


そう言えば、マティーニ大尉、今は少佐にはアマーリエ少佐を部下に持った事があると言ってたが事実だったらしい。


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演習開始。


号令後、索敵波を放つ。捕捉、南方6km。


「リザード01より中隊各位。南方距離6にて前衛2個小隊、後衛1個小隊こちらに接近中。第三小隊近接魔導刃展開。第二小隊、空域爆裂式用意。第一小隊着いてこい、後衛一個小隊を叩く。」


こちらも速度300ktで接近する。会敵地点を空域爆裂式の範囲に設定させ、先頭の小隊を落とす予定、姿が見えた瞬間、展開を指示、綺麗に嵌り、落とす。魔導刃を構えた第二小隊が速度を落とし切れず突っ込んでくる、魔導師と戦闘に入る。それを高度を上げ回避し、後衛一個小隊を落としにかかるとしようか。


『リザード02より01check six!』


そのまま飛行術式を一瞬切り落下する。それで吶喊してきたゾデイスの魔導刃を回避。その背中に砲撃術式を叩き込む。

流石に確りと魔導装甲で防ぎ、反撃に誘導術式付の対人爆裂式で反撃してくる。魔導装甲を全力展開し防ぎ切ると対艦向けの砲撃術式を叩き込む。その中に貫通式を混ぜこみ、魔導装甲を貫通して、撃墜判定をだした。


『そこまで、ゾデイス班撃墜2、被撃墜10。クロイス班撃墜10、被撃墜2。クロイス候補生の勝利!』


着陸し教官殿と高官の元に走る。


「クロイス候補生。貴官は優秀だな。教官、コイツには合格判定を出してもらえないか。私が貰い受けたい。良いだろう、ルーデンドルフ閣下。」


「構わん。ヨハン・クロイスを首席卒業として少尉任官しアマーリエ少佐を編成官、クロイス少尉を編成官補佐に任命する。」


編成官とは古めかしい。その功で1階級上げてくれるのなら貰っておこう。その時はそう思っていた。

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