第1話

北方戦線勝利

その方に帝都臣民が沸き上がったの当然と言えば当然である。祖国が戦争に勝てば国民は湧き上がる事だろう。

軍人である我々は喜べる事態では無いが。

北方戦線は本来帝国軍の主力を投射して行われた攻勢であり連合王国や共和国の横槍が入ったとしても、4ヶ月も懸かる訳が無いのだ。

更に北方2王国の同盟国である、共和国まで宣戦布告を行ってきた。何かがおかしい。

崩壊を予見せざるを得なかった。

当時参謀本部付であった私は違和感を抱えたまま、戦争へと向かわなくてはならなかったのだ。


«開戦»著者ロンナー帝国軍退役上級大将

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帝都魔導士官学校

帝都には幾つかの士官学校が有る。

陸軍では歩兵科と機甲科

海軍では砲術科と機関科

そして我らが魔導士官学校である。

魔導士官とは航空魔導師を指揮する士官であり、航空魔導師は火力は師団砲兵並み、機動力は機械科歩兵並みと優秀な兵科乍も如何せん絶対数が少ない、無理すれば軍団規模は捻り出せるだろうが、それでは予備兵力100万を持つ敵国には適わない。物量に圧殺されるのだ。


「ようこそ、帝国軍は俊英たる貴官らを歓迎する!」


士官学校校長、フォン・ウォール大佐が祝辞を読み上げる。


興奮する士官候補生達、それを俺は横目で見ていた。


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我が軍の右翼は押されている


正面は崩れかけている


撤退は不可能だ。


状況は最高。


これより反撃を開始する。


共和国第9軍司令官

フェンナンド・フォッド中将

1940年帝国軍大攻勢にて


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士官候補生に与えられた訓練は飛行並立指揮訓練。平たく言えば訓練用に小隊を編成し自らも指揮しつつ模擬戦闘を行う訓練である。


通信号はリザード01他の学生出身の士官候補生とは違い、15から志願して前線勤務を3年続けた末に所属小隊の小隊長から士官候補生として推薦を受け入校している為他よりは出来る。


「リザード01より各位。敵部隊の接近を確認。第1射は貫通術式による、斉射。その後は各自の判断で戦闘を継続せよ。」


まぁ、俺は最初の斉射で終わるんじゃないかと思っているが。

相手は貴族の息子。軍務経験は無く、単なる頭でっかち。入学から1年の今までに2回問題を起こして謹慎処分を受けている。


「in engage!貫通術式用意、撃て!」


4名の魔導小隊は空中で停止し横並びに並ぶ、ライフルを構え、演算宝珠より術式を展開する。魔導装甲を打ち抜く為の術式を弾丸に転写し、揃えて引き金を引く。

呆気なく、敵を貫通した魔力光は虚空に消え、訓練教官は俺達の勝利を宣言する。


「リザード01より各位。良くやった。降りるぞ。」


素早く、慣れど安全に着陸し訓練教官の前で整列する。


「クロイス士官候補生。貴様は優秀だ。言うことは無い。問題は貴様だ、ゾデイス!乱数回避はどうした!的になる航空魔導兵なんぞ要らんぞ!」


唇を噛み締め屈辱を表情に出している。

余りにも青い。俺の上官は士官学校卒の若いもんは数ヶ月で自分が青い事を理解するって言ってたが、理解しきれる物とは到底思えない。


「失礼致しました。教官殿。」


これは一悶着あるぞ。

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