第26話 ギルドマスターの独り言

「マスター・キーウェイ」


俺は振り返る。

新米ギルドマスターが、目を輝かせて立っていた。


「あそこの彼ですよね、“人身御供の聖戦士”…!

僕、初めて見ました。

長身で、締まった体で…格好いいですね…

キリッとしてて、素敵だな…」


どうやら彼は、“人身御供の聖戦士”フェルナンドが、サイコーに締まらない性格だということをまだ知らないらしい。

ま、もうちょっと夢を見させておいてやるか…。


そのゆるく柔らかい性格こそ、フェルナンドという男の一番の旨味なわけなんだが。

そこに気が付けば、新米から一歩前進だ。



各所から仕事の依頼を受け、それを傭兵たちに割り振っていくのが、傭兵ギルドの仕事の流れ。

仕事を円滑に進めるため、各傭兵には一応担当のギルドマスターがついている。

担当の営業、みたいなもんだ。


で、フェルナンドの担当が、俺というわけ。


あいつは本当に優しくて断り下手なので、色々便利にこき使わせてもらっている。

今回のケルベロスもそんな感じだ。


いや…まあ、断り下手なだけが理由じゃないが…。

色々な所に便利に派遣する戦士には、それ相応の実力が要る。


その点、フェルナンドのパーティーは…

軽業師・ジェスター。

弓使い・モナモナ。

魔法使い・クラリッサ。

そして─────戦士・フェルナンド。

誰をとっても申し分ない。


奴らが強いんだって自慢話は、そのうち追々やっていくとして…

いや、俺がしなくても、露わになっていく。

あいつら、本当にデキるからな…。


俺の仕事は、そんなデキる奴らに、相応の依頼を渡してやることくらいだ。


フェルナンド。

さあ──────次は、何と戦う?

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