第41話 元老院から命を受けて、アナタを監視するためにエルフの里から来ました

 自室。


 深夜。


 枕元にダークエルフが立っていた。


 腰まで伸びた漆黒の髪は、どこか儚く死の香りがする。


 血のように赤い瞳に褐色の肌が何とも魅力的だな。


 ただ……光が全く感じられない氷のように冷たい表情をしている。 

 

 まるで血が通ってないと思うくらいで、背筋がぞっとした。


「死神!?」


 俺が見たこともない服。


 全身をピッチリと覆いながら、要所を装甲で補強したラバースーツのようなものを身に着けている。


 そして両手には大きな『鎌』が握られていた。 


 刃先は鋭く尖っており、魂を奪い取る形をしていて、それはまさに死神の大鎌・デスサイズである。


「死神ではありません。

 お目付け役です」


 死神の鎌を俺の首に向けたまま、彼女は言葉を続けた。 


「元老院から命を受けて、アナタを監視するためにエルフの里から来ました。

 名は『ルーシィス』です」


 元老院とは、いわばご意見番で、国政を監督することを目的としている。


 彼らの最も大きな役割は、代理戦争の参加者を選別することだか……。


 その無機質で冷たい言葉を聞き。 


 異様な空気が流れる。


 これは絶対ヤバイと思った。


「穏健派から送り込まれた査察者ささつしゃってことでいいのかな」


「ええ。

 まあ、そのような感じです。

 何せ、アナタはSSS級監視対象ですから。

 ルリエール・ド・ビクトエールから何も聞いていないのですか?」 


「休戦協定が結ばれたという話しは聞いたけど、エルフの里から使者が来るなんて話は聞いていないな」


「きっと話せば、アナタが逃げ出すと思ったのでしょう。

 だって、わたしがここに来た本当の目的は×××……」


 ルーシィスと名乗ったダークエルフが、何かを口にしようとした瞬間。


「きゃあ」と頭を抱えて苦しみだし、その表情は悲痛に歪んでいた。


「おい、大丈夫か!」


 思わず心配になり、彼女の身体に触れてしまう。


 ビリと、電気のようなものが流れ、彼女の身体を伝って、右眼に映像が映った。


 これは『記憶』だ。


 ダークエルフなる前の『人間だった』頃の記憶だ。


 それは『人体実験』、『薬物投与』といった。 


 見るも無残な『非人道的研究』の映像だった。


 精神的に深くダメージを受けた俺は気を失った。


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