第26話 脱衣演舞・高校生の部

 姫川家・別邸の大広間。


「脱衣演舞・高校生の部に出場するということで」


 黒スーツを着た女性と俺は、正面から向き合っていた。


 無断で『脱衣術』を使ったことが両親に知られてしまい。


 実家に連れ戻されそうになったが!?


 姫川さんがあいだに入ってくれたおかげで、脱衣演舞・高校生の部で優勝することができれば『免許皆伝』と認められ。


 実家に強制送還されることもなくなる。


「よろしいんですね、大助様」


 その女性はサングラスをかけたまま、俺をまっすぐに見つめる。


 歳は40前後くらいだろうか。


 髪は長くも短くもなく、背の高さも平均だった。


 どこにでもいそうな感じで、まさに密偵にはうってつけの顔立ちだな。


 名前も山田だしな。


 本名かどうかまでは知らないけどな。


「はい」


「わかりました。

 では、これを受け取りください。

 招待状です」


 山田は懐から一通の封筒を取り出すと、俺の前に置いた。


 参加者は8名か? 


 トーナメント式だから3回勝てば優勝できるということか?


 ちなみに優勝しても賞金は一切でない。


 もらえるのは名誉だけだ。


 だから参加者が少ないのだ。


「確かに受け取りました」


「では、私はこれで失礼します」


 彼女は退室してしまった。


 そして、入れ替わるように姫川さんたちが入ってきた。


 俺の右隣に姫川さんが座り、左隣りに彩妹ちゃんが座り。


 テーブルを挟んでありさちゃんが正面に座り、右斜めみちるちゃんが座った。


 姫川さんと彩妹ちゃんはラフな感じの部屋着で、跳姫姉妹はメイド服姿だった。


「露璃村くんが参加するなら私、応援に行こうかな。

 ねぇ、基本的なルールとか教えてよ。

 みんなも知りたいわよね。興味あるわよね」


「「「はい。あります」」」


「ああ、いいぜ。

 一対一で戦い、対戦相手を素っ裸にすれば勝ち。

 いかなる手段を用いても構わない。

 武器などの持ち込みOK。

 ただし相手のカラダを負傷させた場合は、反則負けとする時間無制限のデスマーチだ。

 以上が基本的なルールだ」


「基本的なルールはわかったけど。

 それでダイスケくんは優勝できる自信はあるの。

 お姉ちゃんが勝手に約束しちゃったんでしょう。

 わたしに相談してくれれば、もっといい解決策を提案することだってできたかもしれないわよ。

 どうして……わたしに相談してくれなかったのよ、バカぁっ」


「もう済んでしまったことを責めても仕方ないですよ、殺妹さま」


「でも、わたしが……あんな……低俗なやからに捕まらなければ……こん な……こと……には……ならなかった……かもしれないのよ」


「大丈夫よ、殺妹。

 露璃村くんは絶対に優勝するから」


「なんでお姉ちゃんにそんなことがわかるのよ」


「理沙さまから聞いたんだけど、王子さまって、脱衣演舞・小学生の部で5年間連続優勝したこともあるんでしょう。

 なんでやめちゃったのよ。もったいないわよ。神童って呼ばれていたんでしょう」


「脱衣術なんて、生きるために何の役にも立たないということに気が付いてしまったからかな。

 幼い頃は、父と母が喜んでくれるのが嬉しくて脱衣術の腕を磨いていたんだ。

 定番の山籠もりに滝行。

 修業と名のつくモノは、あらかたやったな。

 でも中学校に入学したあたりから、自分が浮いていることに気がついたんだ。

 脱衣師なんて、漫画やゲームの世界ですら、登場しないほど不人気の職業だ。

 そんなモノを極めたところで、将来何の役にも立たない。

 そんな考えが脳裏をよぎった瞬間、俺は家を飛び出していたんだ」


「まさに思春期特有の悩みってわけね。

 性別をとはず、対戦相手を全裸にする競技をやってるなんて恥ずかしくて誰にも話せないわよね。

 しかも、対戦相手が女の子だった場合は、その子の衣服を剥ぎ取ることになるんでしょう。

 全裸にされて、泣き叫んでいる女の子の顔が目に浮かび。

 間違っても『友情が芽生える』なんて展開には、ならないわよね。

 だって、相手は年頃の女の子ですもの。

 彼女どころか、友達もできない孤独なスポーツなのね。

 王子さまの気持ちはなんとなくわかるけど、やっぱりもったいないわよ」


「わたしもありささんと同じ考えよ。

 確かに素っ裸にされちゃった女の子は可哀想だと思うけど、ダイスケくんはルールを破って女の子を傷つけたわけじゃないんでしょう」


「ああ、もちろんだ」


「なら、もっと胸を張るべきよ。

 それが勝者の責任だとわたしは思うから。

 だから対戦相手のことは、気にせずに思いきりやってしまいなさい。

 そして必ず優勝しなさい」


「ああ、わかった」


「じゃあ、そろそろ夕食にしますか」


 姫川さんが話を打ち切ると俺たちは、夕食の準備を始めた。

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