メイド長


 処刑の日が間近になってきた。


 滝沢は城下町までやってきて、ある人物を探していた。



 情報によると、彼女は週に1度、外出する日があるらしい。


 それが、今日なのだ。

 このタイミングを逃したら、恐らく次はないだろう。


 人物の容姿は銀髪の三つ編みで、メイド服姿、身長は高いほう。


 大通りの影から見張っていると、それらしき人物が姿を現した。



 ……行くか。


 彼女の背後に近づき、腰から抜いたナイフをそっと背中に当てる。


「──動かないでください、メイド長」


 途端に、動きがぴたりと止まった。

 背中から感じ取れる、彼女の動揺している気配。


「あなたには王女殺害幇助の容疑がかかっています。口外されたくなければ、こちらへ──」


 そうささやいて、彼女を人通りのない裏路地に誘導した。


「な、なんでしょう……?」


 メイド長は青ざめた顔色を浮かべている。

 まるで小鹿のように体を震わせながら、こちらの様子をうかがっている。


「まず、こちらの要求を呑んで頂ければ、あなたの罪は抹消されます。言っていることが分かりますね?」


 彼女は数秒戸惑った後──静かに頷いた。



 これは、脅迫。


 だが、彼女を協力者につけなければ、計画は成功しない。


「では、3点ほど要求したいことがあります──」



 そして滝沢は、計画の一端を話すことにした。


 全てを話すことはできないが、今はそれでいい。

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