第24話 青春はやり直しがききます

「つまらない話とか言う以前に、話、長ッ!」

 サキは吐き捨てるかのように叫んだ。

「んあ! お前も聞く姿勢やったのに、その言い草はないやろ!」

「はいはい、っていうか、よく覚えてますね! 昨日みたいにサイコダイヴをする必要はまったくないですかね?」

 たしかに智子のときと比べて、細かいディテールまで覚えている。

 まるで昨日のことのように思い出せるのは、智子のときと違って自らが積極的にアクションを起こしたからだろう。

「これだけ覚えているってことは、俺にとって忘れてしまいたい過去ではないということ。うまくはいかなかったけど、ちゃんと告白ができたことで、俺は後悔をしていない!」

 サキは両手で口をおさえ、わざとらしく「ぷぷぷ」と笑った。

「ほんまやぞ! あの夜、電話で俺は頑張った。後悔なんかしてへんぞ!」

「あ、あれで? あれでちゃんと告白したって言うんですか? 雑ぅ! 恋愛映画だったら、絶対に撮り直しさせられてますぅ!」

「……う、そう?」

 言われてみれば、告白をしたということで自己満足をし、細かい反省をすることを放棄していたのかもしれない。

「告白のところだけ、夢の中でもう一度やりなおしてみますか?」

「え? かまへんの?」

「はい。青春はやり直しがききます」

「……うー、でももう過ぎ去ったことやしなー」

「煮え切らない男ですねー。じゃあリンクを貼りますか?」

「リンク?」

「ただのシミュレーションじゃなく、相手にも同じ夢を見させることができるんです!」

「え、えー。マジでか?」

 夢の中でまたふられたとしたら、その印象をみずほにもう一度植え付けてしまうことになる。

「露骨にビビらないでください! 夢の中での告白に成功したら、現実世界でも勝ったようなものです!」

 今日、みずほと再会したのもサキの悪運のおかげ。それがなければ俺はみずほと一生会うことがなかっただろう。

 そう考えると、冒険してもいい気分になってきた。

「よし、やろう! でもどうやってリンク貼るねん? 俺、みずほの住所とか知らんぞ」

「あ、大丈夫! 対象者の本名と顔さえわかれば、夢をつなぐことなんて楽勝です!」

「なんかデス○ートみたいやな……」

 ただし、条件としては俺が寝ているときに相手も寝ていることが前提となる。

 まだ夜の十二時半だったので、確実に寝ているであろう二時までしのぐことにした。

 眠い目をこすりながら、ふだんならリアルタイムでまず見ない深夜アニメを見ながらしのぐ。

「じゃ、俺、寝るから……」

 二時を過ぎ、俺の眠さも限界になってきた。寝ることをアピールしているのに、サキはなおも深夜アニメに夢中だった。

「わり。ちょっと音うるさいからヘッドホンして……」

 ヘッドホンを装着させ、部屋の電気を消した。テレビの光が少し気にはなったが、すぐに俺は闇の中に引き込まれていった。

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