塗り絵ぬりぬり

 団旗のアクリル絵の具塗りをクラスの連中に声を掛ける気にもならなかった。保健委員での無協力のクラスの空気に嫌気が差していたからだ。関わって要らぬストレスを増加させたくない。


 連中は俺が、齷齪働いているのを笑っているのであろう。しかし…


 残念でした!何も感じません!お前たちの存在は、俺の認識から疎外され脳から認知されなくなっていますので!あれだ!アニメとかでメインキャスト意外のその他人大勢が灰色でシルエットで描かれている感じ。最近は3DCGの技術が進歩して、アニメ風のキャラクターを同時多発に動かす事が出来る時代になっているけれどね!


 そしてぶつぶつ悪態をつきながらチマチマと塗り始めた。


 書道部も有名なうちの学校は、その部に力を入れており。部室も広く40畳ほどあり、近所の地域のイベントをするコミュニティーセンターのホールほどある。なんて贅沢な部だ。その部室を借りて放課後絵の具塗りに勤しんでいた。怒りを労働に変換しながら。


「先輩ぃ!」


 砂糖菓子のような甘ったるい声。後ろに振り向くと小南こなみコノンが仁王立ちで立っていた。


「私ぃ迎えに来て下さいっていいましたよね?何で教室に来てくれなかったんですかぁ?」


「…ん…それは現地しゅ…」


 最後まで返答する間を与えず。


「そうでしたぁ。ゴメンなさい。先輩ぃはねネクラのコミュ障でしたね。怖かったんですよね?知らない下級生のクラスを覗くのが?よしよし」


勘のいい子!嫌いです!それに…


頭を撫でるなっ!わしゃ乳離れしてないママがいいーと泣き叫ぶ乳児か!


軽く睨みつける俺。


「あれ?怒っちゃいました?冗談ですよ?冗談!」


「私背が小さい可愛い男の子がタイプなんです。ちょっかいを掛けたくなるんです」


 そう言うと小南は後ろから抱きついて来た。


「うぅ…小さい、小さい言うな!苦しい…首に腕絡んでるっ!ちょーチョークスリーパーになって…くるじぃうぅ…てか仕事してっ!誰か…大人の人助けて…」


 非難の眼差しを向けながら、粛々と塗っていく。


「しつこいね…何?蛇年なの!?暑苦しいし、重いんですけどっ!」


「先輩ぃ酷い!女の子に速答で重いとか言うなんて流石友達いないだけありますね!後先輩ぃの体冷た過ぎなんですけど冷え性ですか?運動しないから、代謝が悪くなるんですよ。今日も暑いからヒンヤリ気持ちいいですけど!」


 俺の顔に自分の頬っぺたをすりすり擦り付けていた。


 ええぃ!やめーぃ!俺をなんだと思っているのか!幼児じゃないし俺は先輩だぞ!年下の男子ではないのだ!


「先輩ぃ♪褒めて下さい!先輩ぃ!先輩ぃのオーダー通りにウマ描きましたぁ」


「ユニコーンな!」


「誉めて♪」


確かに上手かった。さすがボブ。彼女は漫画部に所属しており、漫画雑誌で掲載されるほどの腕を持っている。(本人談)


「じっしぃ(実際)…てて・・…天才だよね…」


「そこ大事なところだから噛まないで!」


そう言いながら強く抱きついて来る。


「やめなさ…」


「…何をやっているのかな?」


小南の後ろから声が聞こえて来た。







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