団旗談義

 保健委員の仕事は俺の頑張り…いや先輩の力で乗り越えられたのだが…。今回は助けてもらえそうもないのか…。


 体育祭は、一、二年生の活動で。三年生の先輩には、全く関わらない。すぐこういう依存思考になってしまうのは、知らぬ間に先輩なしでは生活出来ない体になっていると言う事か?いかんいかん!俺は今まで一人で行動して来たんだ。先輩の好意に甘えてばかりいたら今までの自分を否定する行為になるではないか。


 次のタスクは運動会の団旗製作だ。これこそ己一人の力で乗り越えてみせる!しかし…此は前回のやっかいさとは全く違うベクトルだ。超気持ち悪い。なんも言えねぇ…しんどい。


 放課後の教室棟の視聴覚室。一年生と二年生が話し合っている。部活意外ではあまり見かけない光景。異年齢交流も兼ねての活動なのだろう各学年合同の組対抗の体育祭の団旗作成委員が各学年から集まっていた。



 この仕事は俺が最も苦手としているもの…それは。


「団体行動だっ!」


「先輩ぃ。最近独り言が多くて…気持ちが悪いですよ…学校で話す人いなさすぎじゃないですか?ぼっちなんですか?友達いないんですか?もしかして独りの自分格好いいとか思ってます?結論から言うと格好悪いですよ!そんな生活を続けていたら、将来40過ぎて結婚もしない。恋人もいない。囲まれるのは女の子ではなく、ゴミ袋そんなゴミ屋敷に独り孤独につまんない携帯小説書いて誰にも認められないそんな生活を送る事になりますよ!可哀想」


「可哀想って…しかしよく噛まずに畳み掛けるね…。何?声優志望なのかな?それとも最近の漫才の影響なのかな?スピードの早いタイプの賞レースで優勝しちゃうタイプの!そして…何?後半具体的なんだけど?誰かモデルがいるのかな?可哀想だからやめてあげて!その人もその人なりに頑張って生きているのだよ!酷いのは君のその一連の発言だと思うのですが…」


 クスッと彼女は笑った。


「しかたがないので。私が話相手になってあげます。よかったですね。可愛くて。優しくて。仕事も出来て。頼れる後輩がいて!」


「あははは…良かったでーす」


 顔をひくひくさせながら、無理やり口角を上げる俺。


「先輩は会話のキャッチボールを知らないのですか?私が盛大にボケたんですから、ツッコまないと!」


「粛々と仕事するタイプなので…後、男って女性と違って同時に別な事をするタスクがないらしいんだよ!」


「…」


「別な事って…団旗の下絵を考える間会話するだけじゃないですかっ!」


「デザインが全く思いつかないんだよ…これはあれだ優秀なクリエーター一人に発注するほうが効率化的なのではないだろうか!」


「さ…最低なのですか?何故私をじっーと見詰めるのです?」


「ボブカットの方ってアーティストに多いじゃない?」


「見た目だけの判断ですか?浅い!浅すぎますねっ!」


 目をつり上げた彼女の名前は小南こなみコノン。またキラキラネームさん。一年生の後輩。

 俺は今一年と二年のA組混合で委員として集まっている。クラス別A、B、C、3グループで競技の勝ち負けを競うのが、うちの学校の体育祭なのだ。そして各々の団旗を校庭のネットフェンスに掲げるのだ。


 惜しい!あともうちょっとで名探偵だねっ!って言ったら。この口が悪さをするのですねと口をアヒル口みたいに伸ばされつねられました。


「痛い!痛いっ!!」


 俺の周りの女子はパーソナルスペースがバカになっている子が多いんだけどなんなの?ATフィールドないの?気安く触らないでよね!好きになっちゃうじゃないもう!

 俺の中の乙女が出てきた時、団旗の作成をレクチャーしに担任のアニメーターがやって来た。


 担任の説明すると下絵を作製してそれを将棋の盤上のように9×9に切り分けそれをデカイ旗に写すとの事だ。そして区切った部分を割り振ってジェッソを塗って、アクリル絵具で色を塗っていくとの事。


「面倒くさい…」


「一人では絶対に無理だからクラスの友達に手伝ってもらうんだぞ」


「…嘘だろ」


 担任よ…お前の目は節穴かっ!俺がクラスの連中とつるんでいる所を見た事があると言うのか?


 俺は…クラスに友人はいないっ!!











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