第2話:俺が…佐吉?


ードザッ‼︎

「Σ颯輝…‼︎」

木から颯輝が落ちた…はずだった。

木から落ちてきたのは颯輝とは違う少年だった。袴を着ていて、少し着古している。その少年の腕の中には先程見つけた子猫とは違う、空に浮かぶ雲のような真っ白な子猫だった。

颯輝じゃない。そう分かっているが似ている。親父も母さんもぱっと見ならば気付かないかもしれない。いや、確実に騙せる。

そう考えた俺は彼を木陰に入れて頬を軽く叩いた。

「おい颯輝、大丈夫か?大丈夫か?」

「…っうぅ…‼︎」

少年が唸った。

命には別状はない事に安堵した。

少年の目が薄っすら開く。

「あ…あに…う、え…」

そう言っているが表情は苦痛で歪んでいる。

「颯輝、一旦家に帰ろう。どうやら背中を強く打っているんだ。冷やせば治るだろうが、早めに手当てした方がいい」

そう言うと少年は少し目を見開いて

「俺、は、さ…きち…」

と途切れ途切れに言った。

硬い地面に背中を打ち付けるのは絶対痛い。最近は安全のためと色々道を舗装したりしているが、それはかえって危険にしているのではと思った。


颯輝そっくりの少年を車の助手席に乗せた。シートベルトをしっかりつけ、自分のシートベルトもきちんと付けた。この時ばかりは警察に止められるのは御免したいところだ。

そう思いながら車のアクセルに足の力をグッと込めた。

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