第2話:俺が…佐吉?

「……ち‼︎………きち‼︎……さきち‼︎」

うぅ…うん?

不意に目が覚めた。身体中が痛い。確か俺は子猫を助けようとして木から落ちた…

目の前には澄兄ぃがいた。目を覚ました俺に気付いたようでホッとした顔をしていた。

「よかった、お前が木から落ちたのを見て、こちらは肝が縮むような思いだったんだぞ」

そう言い、俺の額に手を置いて

気をつけるんだぞ、佐吉。と言った。

…佐吉?

「お、俺、佐吉じゃなくて“颯輝”なんだけど…」

ムクッと起き上がって言った。

「どうしたんだ佐吉?お前は石田佐吉だろう?」

「いや、俺は一谷颯輝‼︎」

何故か話が噛み合わない。それに澄兄ぃの服も違う。大河ドラマで見たような服装だけど、なんか少し着古しているような気がする。

辺りを見回して驚いた。

少し前には硬い土がある地面だったのに今は柔らかな草が生えた地面になっている。それに公園のベンチや、遠くに見えた遊具も見えない。彦根城も、無い。

「澄兄ぃ…ここ何処…?今日は何年、何月、何日?最近何あった⁉︎」

最後は藁をも掴むかのように澄兄ぃに聞いた。

最近あった事は多分待ちに待った停免の解除‼︎それじゃなかったら…

「どうしたんだ佐吉、今日は天正元年の水無月元日でここは近江国の米原だぞ。最近浅井家が滅んで、これからどうしようかと皆慌てていたではないか」

その言葉を聞いて、思考が止まった。

「(どうしよう…あの言葉以外浮かばない…)」

その言葉は誰もが知ってる言葉だと思う。

タイムスリップ。

(タイムスリップ)したな、俺。

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