お風呂にまつわる3つの物語


#浴槽に浮いた死体


「あぁ…痛ぁ」


 男がフラフラと風呂場に行き、ドアを開けると浴槽に裸の女が浮いていた。

浴槽の水は真っ赤で床には血の付いた包丁がある。


男は考えた。


でも、わからない。


「そうか。ドッキリかもしれない」

そう言って浮かんでる死体にチョンと触ってみた。

死んでる

男は慌ててその場から逃げるが、濡れた足でスベッてしまい、床に頭をぶつけた。


思い出した。



「ああぁ…あの女。俺が連れ去って殺したんだった。騒ぐからな…」


男はゆっくりとお風呂場に向かった。



#ふりかえる


髪を洗う青年


「いやいや、気のせいだ」

そう思いながらもフッと後ろ見るが誰もいない。

「ないないない。歌でも歌うか」


そう言って青年は歌いだした。

もう一人住んでいたら「うるさい」と言われるくらいの声量で歌うが、一度ふりかえるとさっきの記憶がよみがえり、どうしても気になってふりかえってしまう。

でもいない。


「だよな…」


そう言ってトリートメントを髪につけてゴシゴシするが、背中が寒くなりふりかえるがいない。


少しのイラ立ちと恐怖でトリートメントを流していると後ろから息遣いが聞こえた。

怖くなりすぐ洗い終えて出ようとすると真上から息遣いが聞こえ、天井を見るが誰もいない。


「なんだ…」


そう言ってお風呂を出た。



ただ、鏡に映る青年は一歩も動かない。



#バブル


ブクブクブク…


少年は片手に持つボトルをよく振って床にドボドボと流す。

ボトルは空っぽになった。


泡はしだいに大きくなり、綺麗な長い黒髪の女の形になった。

ずっと好きだった女性


「ハルカ」


少年は夕方までハルカと遊んだ。

そして、少年が自分とハルカの服を脱がすと一緒に湯船につかった。


その瞬間、ハルカは消えた。


少年は消えたハルカの泡を両手ですくうと顔につけた。



空のボトルがハルカの遺影の隣にそっと置いてある。

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