第43話 反逆の銃弾

 PM11:00 ユニオン・ベース 上空


 漆黒の夜空にユニオンベースの上空に兵員輸送用のオスプレイが30機ほど、隊列を保って飛行していた。

『作戦は計画通りに行われます。本当によろしいですか?よろしければ、起立してください。』

 すべてのオスプレイに乗っているパイロット並びに兵士が、上層部の会議のを聞いている。

 スピーカー越しに上層部が椅子から立ち上がる音が聞こえた。

『賛成3に対して反対1。これより、我々はストライク・ブラックに対し奇襲攻撃を開始。宣戦布告をします。』

「「うぉぉぉぉおお!!」」

 兵士達が雄叫びを上げる。兵士達の目は狂気に満ちていた。

『現時刻より攻撃を開始する。開戦の火蓋は我々が切るのだ。平和などどいう劣った物は我々には必要無い!そして、劣った平和主義者共にフルメタルジャケット弾を喰らわせてやれ―――!』



 リーパーはユニオン・ベースの武器庫で、自分のG18Cのメンテナンスを行っていた。

 すると、大きな揺れと共に激しい爆音が鳴り響いた。

 リーパーの体を大きく揺らす。

「何だ?」

 リーパーはあくまで冷静に状況を確認する。

『各員に通達!正体不明の敵が攻撃!戦闘準備を行い、敵対する者は射殺せよ!』

「敵襲か。」

 リーパーは状況を判断すると、バラバラにしていた銃を素早く組み立る。

「武器だ!俺の武器を寄越せ!」

「何でも良いから武器を寄越せ!」

 武器庫に大勢の味方が銃を求めて押しかけてくる。

「おい。」

「は、はい!」

 リーパーはやって来た味方の1人に声を掛ける。

「敵の規模は?」

「わ、分かりません!、、、。しかし、少なくは無いようです。」

「そうか。悪いな。」

 そう言って武器庫に入ってきた味方を押しのけて、奥の部屋に入る。

 奥の部屋にも既に数人の特殊部隊員が装備を整えていた。

 この部屋は特殊部隊専用の武器庫なのだ。

「M4A1とマガジンを数本分けてくれないか?」

 リーパーが武器庫のガンスミスに自身の証明書を提示しながら言う。

「えぇ、もちろんです。」

 ガンスミスはリーパーにM4A1とマガジン4本を渡した。

 リーパーはM4A1にマガジンを差し込み、残りのマガジンをポーチにしまう。

「急に悪かったな。」

 リーパーはそう言い残して、武器庫を後にした。


『隊長!今どこですか!?』

 リーパーのインターフェースに緊急通信が入る。デイリッシュ少尉だ。

「武器庫の近くだ。」

『た、大変です!敵がッ!』

「分かってる。」

『それと、中央本部施設と医療プラットフォームとの通信が無いんですッ!』

「何だと!?」

 医療プラットフォームでは、レイが経過観察の為にいるのだ。

 レイは今どうなっているだろうか、、、。そんな不安がリーパーの脳裏を遮る。

『あと、ロメオ中尉が居ないんです!』

「どいつもこいつも、、、。」

『と、とにかく1階に来てください!全部隊の合流地点です!』

「分かった。今向かう。」

 リーパーは通信を切り、1階へと向かった。



 リーパーが1階に向かうと、デイリッシュ少尉とガトー少尉が大勢の味方に紛れていた。

「おい、シュタイナー司令はどうした?状況を説明しろ。」

 大勢の兵士達をまとめていた将校に状況を確認する。

「り、リーパー、、、。申し上げにくいのですが、、、。」

「何だ?早く言え。」

 混乱している将校を催促する。

「シュタイナー司令は戦死しました。ゲイツ副司令、並びにその他司令部の人間も同様です、、、。なので―――、」


「———リーパー、今からあなたが司令官です。」


 基地司令官や副司令官が戦死し、基地の重要職が全員戦死した事を聞いたリーパーは沈黙した。

 この基地内で最も階級が高いリーパーが司令官に任命されたのだ。

『あなたは基地司令官に任命されました。』という文字がインターフェースに表示される。

「司令、命令を。」

 将校がリーパーに命令を要求する。

 そして、大勢の兵士達がリーパーの指示を待ちわびる。

「各員に通達、これより基地を放棄する。非戦闘員を優先に撤退。ヘリ1機につき護衛を1小隊付けろ。志願するヤツは中央司令部の味方を援護、救出に向かえ。俺は医療プラットフォームの敵を掃討する。」

 リーパーは基地を放棄すると指示した。

 敵の奇襲作戦により、基地の防衛は困難だと考えたのだ。

 司令を出された兵士達は、基地の撤退準備に入った。

 ぞろぞろとヘリポートに向かう。

「し、司令官!」

 デイリッシュ少尉がリーパーを呼ぶ。

「私達も付いていきます!」

 デイリッシュ少尉とガトー少尉が装備を持って立っていた。

「ダメだ。撤退しろ。」

「でも、私達は司令の部隊です!」

 彼女の目は本気だった。

「生きて撤退できる保証は無い。」

「そんなの必要ありません。」

 ガトー少尉がそう答える。

「ヘリを捕まえて、医療プラットフォームに向かうぞ。」

「「了解!」」

 そして、リーパー達もヘリポートへ向かった。



『リーパー、医療プラットフォームです。』

 オスプレイに乗り、医療プラットフォームに向かったリーパー達に、パイロットが目標近くだと報告する。

「ハッチを開け。」

 リーパーがハッチを開くように要求すると、オスプレイ後部のハッチが開く。

 リーパーはハッチの前へ立つ。

 リーパーの目の前には、各所から炎が出ている医療プラットフォームが見え、その下では味方が敵と応戦していた。

 リーパーは敵に銃口を向ける。

「!?」

 リーパーが敵を狙った時、敵の装備に思い当たる節があった。

 なんと、敵の装備はストライク・ブラックの装備だったのだ。

「デイリッシュ少尉。俺は右側をやる。少尉は左側をやれ。」

「は、はい!」

 デイリッシュ少尉もハッチの前へ来て、スコープを覗いた。

「た、隊長、、、。敵って、、、。」

「あぁ、あれだ。」

「でも、あれは味方なんじゃ!?」

「違う。敵だ。あいつらに味方は殺された。銃を同胞に向けるような連中は、例え元々は味方であっても敵だ。」

「わ、分かりました、、、。」

 デイリッシュ少尉は再びスコープを覗き、トリガーに指を掛ける。

「よし、やるぞ。」

「了解!」

 リーパーが射撃を開始するのと同時に、デイリッシュ少尉はトリガーを引く。

 敵がバタバタ倒れていく。オスプレイに気づいた敵の1人がスティンガーミサイルを構える。

『リーパー!ロックオンされています!』

「少尉!RPGを殺してくれ!」

「殺しました!」

 リーパーが少尉に命令する前に少尉はスティンガーを無力化したのだった。

「分かった。粗方は排除した!着陸しろ!ガトー少尉、戦闘準備だ。」

『了解!』

「了解!」


 リーパーの部隊を乗せたオスプレイは、戦っていた味方の後ろに着陸した。

 着陸したオスプレイから、リーパーの部隊は降りる。

「状況は?」

 近くにいた兵士にリーパーは状況を確認する。

「負傷者8名、生存者4名です。支援、感謝します。」 

「お前達は撤退しろ。俺達は中の味方を救助しに行く。」

「ありがとうございます。しかし、中にはもう味方は残っていません、、、。」

「何だと!?」

「中にいる味方は敵に全員殺されました。捕虜などいません、、、。」

 兵士がリーパーに報告をしていると、突然、デイリッシュ少尉が走り始めた。

「逃げてぇぇぇぇええ!!」

「!?」

 なんと、デイリッシュ少尉は投げ込まれたグレネードを持って敵の方へ走っていったのだ。

「デイリッシュッ!グレネードを今すぐ投げろぉぉぉおおお!!!」

 リーパーはデイリッシュにそう叫んだ。


―――しかし、デイリッシュ少尉は爆散してしまった。

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