第41話 生きる意味

『ギャラルホルンよりリーパーへ、繰り返す。ギャラルホルンよりリーパーへ。聞こえてるか?』

 リーパーのインターフェースにギャラルホルンからの通信が入る。

「あぁ、聞こえてる。」

 リーパーは、彼女を抱えて走りながら通信に出た。

『HQは、チャーリー地点の分断を指示した。『デンジャー・クロス』のコードを要請する。』

「『デンジャー・クロス』だと?ターゲットの指定は終わったのか。」

『お前の部隊が撤退している間に終わらせた。さっさとコードをよこせ。』

「でも、俺はまだ脱出していない。捕虜も連れている。」

『こっちはイかれた子供の足止めはもう出来ない!このままでは子供が他のプラントに侵攻するぞ!作戦を台無しにするつもりか!?』

 ギャラルホルンは焦っていた。彼の後ろからは激しい銃声が聞こえていた。

「じゃあ、どうやって脱出しろというんだ。」

『まぁ、安心しろ。そっちにお前のヘリの、、、』

「ヴェノム。」

『そうだ。ヴェノムとコリ、、、?』

「コリブリ。」

『そう、コリブリを要請した。さっさとコードをよこせ。』 

 どれだけその『コード』が欲しいのだろうか。執拗に迫ってきた。

「分かったからよく聞け。コードは、『GRIT-SQUAD』だ。」

『了解。これで全てのコードが集まった。『デンジャー・クロス』を開始する。お前はそこで見てろ。オーバー。』

 満足そうにそう言って、ギャラルホルンは通信を切った。

―――『GRIT-SQUAD』、か。あれは『夢』だったのだろうか。『夢』じゃなかったとしたら、あの後はどうなったのだろうか。彼らは幸せになったのだろうか。『異世界』―――、興味深いな。

 リーパーは、ウクライナにいた時の『夢』を思い出していた。あの、壮大な夢を。

「何をしているの?」

 ボーっとしてると、彼女が声を掛けてきた。

「いや、何でも無い。」

「歩かないなら降ろして。私、歩ける。」

「あぁ、悪い。」

 リーパーは彼女を降ろした。彼女は近くにあったドラム缶に腰をかける。

「私、この後どうなるの?」

「組織で保護されるだろう。不当に殺したり人体実験などはされない。これは俺が保証する。」

「私はその方が良い。生きてたって何も良い事は無いし、辛い事ばかりだから、、、。」

 しかし、少女は「生きる」という選択肢を持とうとはしなかった。

「生きるってのは、辛いことだな。」

 リーパーは自身の武器のチェックをしながら少女にそう言う。

「俺自身も生きていて辛いことしかなかった。俺も死のうとはした。だけどな、でも、俺は思った。辛いことしかない人生もあるし、それを嘆いていても何も変わらないとな。だから俺は戦う。そして、敵を殺す。俺の理想の世界を邪魔する者は一人残さず殺す。」

「あなたの望む世界って、、、何?」

「俺の望む世界は、誰一人として苦しむことのない世界だ。世界は一つになり、人民は統制され、思想も制限する。そうすれば殺し合いは二度と起きない。人と人とのぶつかり合いを最低限にすれば戦争など二度と起きない。そして、俺のような思いをする子供も二度と出てこない。」

「それが、あなたの望む世界?」

「そうだ。誰も苦しまない、理想の世界だ。しかし、邪魔をする人間がいる。だから、俺はそいつらを殺す。これが、俺の世界への復讐だ。」



『こちらストライカー1。目標付近に味方無し。これよりデンジャー・クロスを開始する。』

 目標の連絡橋に戦闘機3機が急接近する。

『デンジャー・クロス!』

 そして、3機の戦闘機は目標の連絡橋に高出力レーザーを照射した。

 レーザーに照らされた連絡橋は、そこからドロドロと溶けていき、下には海が見え、レーザーに当たった子供達はまるでろうそくの様にドロドロと溶けていった。

 そして、デンジャー・クロスによりチャーリーは完全に遮断されてしまった。


「あれが噂の『デンジャー・クロス』か。まるで、スターウォーズのようだったな。」

 リーパーはストライク・ブラックの新兵器を目の当たりにし、称賛していた。

 なお、少女は何も感じていないようだ。

「さて、ショーも終わりだ。帰るぞ。」

 リーパーは少女とコリブリの迎えを待った。



『ご協力感謝しよう。名前は、、、』

『あぁ、言わなくて良い。秘匿回線は秘匿回線だが、の誰が聞いてるか分からねぇ。』

『そうだな。念には念を入れておこう。』

『そうだ。オタクんとこの新兵器、アレはしっかり移動させたんだろうな?』

『あぁ、もちろんだよ。それも、君達がいなければ出来なかったがね。』

『フッ!俺達が情報を送ってなかったら、今頃アメリカの国家機密の1つが水の泡だったな。』

『あぁ、本当だよ。だから、最低人員で済ませておいたんだ。兵士は腐るほどいる。いくら殺してもらっても構わんさ。』

『それで、頼みがあるんだが、、、。』

『あぁ、遠慮せずに言いたまえよ。できる限りのことはする。何が欲しい?武器か?兵士か?それとも兵器か?』

『アンタが今言ったモン全部だ。』

『よかろう。それで、何をするつもりだ?』

『俺達は戦争の無い世界などは望まない。宗教間だろうが、共産主義だろうが、ファシストだろうが、ただの虐殺だろうが、俺達には殺す理由なんて要らねぇんだ。ただ殺せれば良い。虐殺できれば良いんだ。だから―――、』


『ストライク・ブラックに宣戦布告をする。そして、俺達は武装蜂起をする。』


『それで。いつ、どこで武装蜂起をするんだ?』

『近いうちにする。場所はユニオン・ベースだ。座標は後で送る。』

『それは良い。武器と兵士を大量に送るとしよう。』

『それはありがたい―――、』


『アメリカ国防長官殿、、、。』
















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