第39話 ダークマター

PM 11:00 ダークマター作戦 スターストライプス島付近上空


 リーパーの部隊はオスプレイでは無く、コリブリの操縦するヴェノムに乗っていた。ヴェノムとコリブリはリーパーの相棒なのだ。

 ヴェノムの中では沈黙が続いていた。

『リーパー、目標降下地点まであと30秒です。降下準備をしてください。』

 コリブリがリーパーに降下準備を促した。

「総員、降下準備。装備を確認しろ。」

 リーパーの合図で、部隊は降下準備や装備確認をする。そして、リーパーは降下準備を開始。マガジンやナイフを確認する。

『降下準備。ハッチ開きます。』

 コリブリがそう言うと、ヴェノムのハッチが開いた。

「さぁ、お前達、、、いや、俺達の初陣だ。アメリカ至上主義に憑かれたイかれ野郎共をぶっ殺せ。」

『了解!』

 部隊全員は、リーパーの合図に返事をした。

 各員、銃のチャ―ジングハンドルを引いた。リーパーもG18Cのスライドを引く。

 シャキッ!――という残酷かつ心地の良い金属音は、彼らの闘争心をさらに奮い立たせた。

「さぁ、降りるぞ。ストライク・ブラック万歳!」

『ストライク・ブラック万歳!』

 彼はそう言うと、ロープを伝って地上へ降下してき、部隊の皆もそれに続くように降下していった。



 リーパー達が降下をすると、もう地上の部隊はアメリカ軍兵士と交戦していた。

 敵襲を知らせるサイレンが島中に響き渡る。

「リーパー、指揮を。」

 地上で交戦していた兵士の1人がリーパーに指揮を仰ぐ。

「デルタ地点の部隊は前方施設に前進せよ。失敗は許さん。」

「了解!」

 リーパーは前方に見える施設を指差して、前進するように指示をする。

 すると、部隊は手早くアメリカ軍を無力化していく。しかし、アメリカ軍の攻勢は未だ続いていた。

「リーパー!敵の攻撃が激しいですっ!」

「そう慌てるな。そのうち面白いのが見られる。」

 リーパーはそう言って敵の所をインターフェースで見る。


「うらぁぁああ!!」

「!?」

 突如、アメリカ軍側で反乱が起こったのだ。

「撃ち方止め。」

「了解!」

 リーパーは、味方の発砲を一斉に止めさせる。

 発砲を止めてしばらくすると、3人のアメリカ軍兵士が装備を真っ赤にして手を上げていた。

「現時刻より、我々はアメリカ軍に敵対する!仲間に入れてくれ!」

 彼らはそうリーパー達に告げた。彼らはアメリカ軍の敵―――、すなわちストライク・ブラックの味方である。

「もうあんなのは懲り懲りだッ!何が正義だ!やってる事は虐殺じゃないか!!」

「何の罪も無い人を殺すために兵士になったんじゃ無い!」

 彼らは、正義を謳歌し、虐殺や戦争を正当化する国―――、アメリカを憎んでいるようだった。しかし、それは自身の祖国を捨てることを意味した。

「ようこそ、ストライク・ブラックへ。歓迎しよう。」

 リーパーは3人を受け入れた。

「あぁ、ありがとう。俺はフレディ。よろしくな。」

 金髪で長髪の男はフレディ。ヘルメットのマークを見るに、彼らは海兵隊だった。

「俺はジョンだ。」

 濃い髭の男はジョン。腕には入れ墨が入れてあった。

「ザック。」

 無口な彼はザック。彼はスナイパーライフルのL115A3を持っていた。

「今は作戦中でな。お宅に邪魔してる。ここを制圧するのを手伝ってくれないか。」

「い、今、何て言った!?」

 フレディが驚いたようにリーパーに聞き直す。

 部隊の皆は顔を合わせていた。

「我々はここを制圧する。」

「そんなの無理だ!今すぐ逃げろ!」

「なぜだ?」

「『レギオン』や『翼の無い天使達』なんて俺達が勝てる訳無いだろう!?」

 フレディがそう怒鳴った。リーパーは彼らの言っている意味が分からなかった。


「おい、俺を忘れないでくれよ。」


 施設の中から1人のアメリカ軍兵士が出てきた。目元は黒い何かで塗られていた。手にはM4A1を持っている。そして、ポケットから4枚のドックタグを出した。

「俺はカルロスだ。コイツがベンでコイツがトム。コイツはロドリゲスでコイツがリチャード。」

 カルロスは、赤黒い血がベットリ付いたドックタグの紹介をした。

 敵は1人だけだが、味方は全員彼に銃口を向けていた。

「俺だけしか居ないと思ってるだろ?でもな―――、」


「―――確かには存在するんだよ。」


 そう言って彼はそのドックタグを地面に投げた。すると、そのドックタグが青い光を放つ。すると、地面から何かが構築されていく。そして、髑髏顔のアメリカ軍兵士が4人、そこに立っていた。

 デルタ地点のストライク・ブラック兵士は目の前の出来事に言葉を失った。

 現実ではありえない事が現実で起こったのだ。

「コイツらは戦場で死んだ。でもな、それは体の死だ。まだこの世にソウルは残っていた。憎しみや苦しみ、復讐心が魂をこの世に呪縛させたのだ。その遺産レガシーがこのドックタグ。そして俺達が―――、」


「―――幽霊ファントムだ。」


 そして、彼らはストライク・ブラックの兵士達に襲い掛かる。髑髏顔のM4A1が5.56mmのNATO弾を放つ。

「おい、見たか!?信じられないよなぁ!!でも、俺の事を楽しませてくれる事は変わらないぜ!!」

 ストライク・ブラックの兵士達が後退していく中、プライスだけは後退しなかった。むしろ、この状況を楽しんでいた。

「死んでもまた戦場に帰ってこれたのか!?ヤベェな!!何度も戦場に帰ってこれるなんてのは羨ましいぜ!!」

 プライスもM4A1で髑髏顔を撃つ。しかし、彼らは撃っても撃っても死ぬ事は無かった。

 デイリッシュ少尉やガトー少尉、ロメオ中尉なども援護射撃を行うが、彼らは倒れなかった。

―――良いぞ、もう少しだ。

 リーパーは少し離れた所から彼らの戦いを見ていた。

『リーパー、攻撃準備が完了しました。目標地点から地上部隊の撤退をさせてください。』

 リーパーのインターフェースに通信が入る。

「了解した。おい、こっちに来い!」

 リーパーは戦闘を楽しんでいるプライスを呼び戻した。プライスは面白く無さそうな顔をしながらもリーパーの元へ帰ってきた。

『攻撃地点に友軍のマーカー無し。攻撃を開始します。』

 リーパーのインターフェースにそんな通信が入った。

「全員耳を押さえて口を開けろ!」

 リーパーは味方に対してそう警告した。 

 次の瞬間、先ほどプライスが戦闘を行っていた場所―――すなわち、髑髏顔の彼らが居た場所が空を飛んでいる爆撃機―――、AC-130ハーキュリーズによって爆撃される。

 耳を塞いでいても聞こえる爆撃の音は、その威力を物語っている。

『攻撃終了。』

 リーパーにそう通信が入った頃には、プラントに大きな穴が開いていた。その穴を覗いてみると、海が見える。

「殺した、、、のか、、?」

 フレディがそう呟く。

「だと良いな。もう1度あいつらと会う事の無いように祈ろう。」

 リーパーは彼らが事は完全に否定しなかった。

「HQ、こちらリーパー。爆撃によりデルタ地点は崩壊。これより友軍に合流する。」

『了解。』

 リーパーは司令部にそう通信を入れた。

「良かったな。お前達が俺達の側に付いていなかったら、今頃はああなってたかもな。」

 リーパーはプラントに開いた穴を指差して、フレディ達にそう言った。

 すると、フレディは苦笑いをしてタバコを吸った。

 


 同時刻 チャーリー地点 


「隊形を維持して全身せよ。」

 チャーリー地点では、その地点での指揮権保持者――、プレデターを中心に研究所と思われる大型施設の制圧を行っていた。

 次々と出てくる敵兵士を無力化し、冷静に任務を遂行していた。

 彼らは施設の奥へと進んでいった。

「コンタクト、正面。」

 冷静な彼らは敵を正面に捉えると、素早く照準を合わせて制圧。敵を無力化した。


「、、、はぁ、、、はぁ、、、ここも制圧されるのは時間の問題だ、、、。クッ、、、、ウハッ、、、『翼の無い天使達』の実戦投入を承諾する、、、。」

 何発銃弾を喰らっただろうか。彼は倒れたまま、無線を使用する。足の感覚が無い。意識もハッキリしない。そして何より、痛い。

『わ、分かりました、、、。しかし、主任は大丈夫なのですか!?』

「もう俺は長くは無いッ、、、。ここを俺の墓場にするッ、、、、。今までありがとう、、、、。」

 そう言って無線を切った。そして、手にグレネードを持ち、安全ピンを抜いたのだった。

 






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