第27話 ユニオン・ジャックの下に

 リーパーとシャドウは施設内の戦闘員、非戦闘員を次々と抹殺している。そして、SIS本部を襲撃してからもう30分が経過しようとしていた。

「おい、もうそろそろ帰らないと敵の増援が来ちまうぞ。」

 随分と疲れているシャドウは、その場所の敵を片付け終わったリーパーの肩を叩く。

「おい、おかしくないか?」

 リーパーは下を向いたままシャドウに問いかける。

「何がだ?」

 シャドウは分かっていない様だ。

「MI6の長官が居ない。ここは長官室だ。それなのにどうしてだ?なぜ長官が居ない!?」

 リーパーは焦っていた。しかし、シャドウは焦らなかった。もしくは焦るほどの気力が無かったのか。

「まぁ、情報だけでも頂いておこうぜ。」

 シャドウは棚を漁る。

「そんな所に機密文書を置くバカはどこに居るんだ。そのパソコンをハックしろ。」

「おお、そうだな、、、。」

 シャドウはリーパーにそう言われると机の上のPCのUSBポートと自分のインターフェースを接続した。すると、すぐに情報のコピーが始まる。

「恐らく逃げられたな、、、。やはり、誰かが情報を漏らしていた。そう考えるのが妥当だろう。」

 リーパーはそう呟いた。すると、シャドウが驚いた様な声を上げた。

「クソッ!!逆ハックされた!!」

 なんと、シャドウのインターフェースが逆にハッキングされたのだ。

「ヤバい!早く壊せ!」

「ウラァァ!!」

 シャドウは自分のインターフェースを叩き壊そうとするが、なかなか壊れない。それもそのはず、シャドウやリーパーの使っているインターフェースは軍用。叩いたところで壊れない。

「何やってんだ!?早く貸せ!!」

 シャドウはリーパーにインターフェースを投げ渡す。すると、リーパーはインターフェースの電池パックを引き抜いた。シャドウのインターフェースが強制シャットダウンする。

「お前のインターフェースから組織の情報が全部持っていかれるところだったんだぞ!!何やってんだ!?」

「す、すまない、、、。」

「はぁ、、、。」

 リーパーは大きなため息をつく。

―――恐らくCAMの影響だな。的確な判断が出来なくなっている、、、。しかし、どうしてだ?あいつは過去にこの薬を使っていた時はこんなんじゃ無かった。じゃあ、一体どうしてだ?

 リーパーは頭を抱えた。過去にCAMを使い、何も無かったはずのシャドウが今ではまるで副作用を起こしている様に見える。

「おい。」

「なんだ?」

 シャドウがリーパーを呼ぶ。

「俺、どうしちまったんだ?俺はどうなるんだ?俺は、、俺は、、、。」

「まぁ、何とかなるだろう。帰ったら医者に診てもらえ。」

「そうじゃないんだ。その、、、あの、、えっと、、、」

「何だ?ハッキリ言え。」

「いつも生活している時も何かを思い出したり思ったりすると、心拍数が上がりっぱなしになって、、、そして、的確な判断が出来なくなるんだ、、、。」

「ほう。」

「それは嫌では無いんだ、、、嫌では無い、、、。でも、何だかもどかしい、、、。俺、どうしたんだろうな?ハハハ、、、。」

 シャドウはそう言って水を一気に飲む。インターフェースを外して、マスクをしているシャドウの顔は、何故か真っ赤だった。

「熱でもあるのか?顔が赤いぞ。」

「いや、何でも無い。」

「そ、そうか、、。」

 リーパーはシャドウの顔を触ろうとしたが、シャドウに酷く拒否された為止める。シャドウはの息は何故か上がっていた。

―――コイツは次の任務からは俺のチームには入れない。的確な判断が出来なくなったら兵士として終わりだ。情緒不安定の荷物を持っていく訳にはいかない。そして、コイツが本当にヤバくなったら俺がこの手で殺すしかない。任務を成功させる事が第一だ。

 リーパーはもしもの時は、戦友を殺す事を覚悟した。全ては組織、平和、理想、人類の為。真の平和の為の戦いに情けは不要なのだ。例え仲間であろうと、戦友であろうと、家族であろうと、愛する人であろうと。理想に反する人間は排除せねばならないのだ―――。


「ほら、コイツをやる。つけろ。」

 リーパーはインターフェースが壊れたシャドウにサングラスを渡す。理由は、身元を隠す為だ。シャドウはサングラスを受け取ると、装着する。

『リーパー、俺だ。ライナーだ。』

 リーパーのインターフェースにライナーからの通信が入る。

「どうした。」

『もうそろっと帰還するぞ。合流地点に向かってくれ。シェラには俺から迎えを寄こすように連絡を入れた。』

「了解。任務は完了したんだろうな?」

『あぁ、『適当に襲撃』は完了した。全部プライスがやった。てか、おかしいだろ!何で任務の内容が『適当に襲撃』なんだよ!!』

「テロってのはそんな感じだ。通信を切る。アウト。」

 リーパーは通信を切った。そして、ホルスターにしまっておいたG18Cを取り出す。

「帰るぞ。我が家に。」

 そう、シャドウに告げたのだった。


 リーパーとシャドウはライナー達との合流地点の屋上に向かっていた。リーパーは両手にG18Cを、シャドウは片手にトカレフを持っていた。

「ウァァァアア!!」

 合流地点に向かう途中、この様に単独で突っ込んでくる職員はゴミの様にいた。しかし、リーパーのG18Cによって全員粛清されている。また1人粛清された。床にベットリと血が付いた。

「悪いな。また今度遊んでやる。」

 リーパーは屍に一言言ってからその場を去った。しかし、その先に彼は居た―――、


「あぁ、君達か。待ってたよ。」

 屋上へ続く階段の下に黒いスーツを着て、SIGP229拳銃を持った若い男が立っていた。彼はリーパーに銃口を向けている。

「誰だ?」

 リーパーもその男に銃口を向けて尋ねる。

「僕はMI6のエージェント。017『オーセブンティー』。今から君を殺す人間だよ。」



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