第26話 戦争機械は人の死を望む

「アハハハハ!素晴らしい!これこそが俺の求めていた『殺戮』だ!血を出し、悲鳴を上げて苦しみながら、何も感じず一瞬で、一生を思い出しながら、大切な人を思い出しながら死んでいけぇぇええ!!」

 SIS本部の内部に突撃したIRA少年兵部隊の戦闘員の1人―――プライスはM16の照準を敵に合わせて、次から次へと敵に乱射している。そんな彼の顔は狂気に満ちている――笑顔だった。

「おい、プライス!死ぬぞ!」

「アハハハハ!戦争だ!戦争だぁぁああ!アハハハハ!もっとだ!もっと来いっ!そして死ね!俺の目の前で死んでいけぇぇええ!アハハハハ!!」

 プライスはライナーの呼びかけにも応じない。しかし、部隊の皆はプライスの援護に回る。

「殺戮は本能だ!欲求だ!人を殺した時に得られる快楽は性行為おも凌駕するっ!!だから人類は戦争を太古から克服できなかった!何故か?それは戦争ほど楽しいゲームは存在しないからだ!俺はそんなゲームにドップリとハマってしまったようだ!!アハハハハ!!」

「イカれてるね、、、。」

 流石のマイケルもプライスはイカれてると感じたようだ。今までに無いほど顔が引きつっている。しかし、彼は暴走したプライスを殺そうとはしなかった。それは、幾度もの戦場をプライスの『殺戮』のおかげで脱出出来たからだ。彼らには戦争機械ウォーマシーンとなったプライスが必要不可欠なのだ。

「おい!何でお前達恋という意味の分からない複雑な事をするんだ!?俺には全く愛の素晴らしさなんざ分からねぇぞ!!どうして風俗嬢や売春婦なんて言う金の掛かるガバガバヤリマン女なんざとセックスをするんだ!?まず、なぜお前達はセックスなどという非効率な欲求消費をするんだ!?俺は愚かな変態共と違って性欲に勝利した!『人を殺す喜びと快楽』を知ったからだ!!こっちの方が気持ちいいし効率的だぞ!!とりあえずお前達は、俺の欲求改善の為に死ねぇぇぇええ!!エヘヘ!アハハハハ!!」

 そう言いながらプライスはアーマライトを敵兵に向けて乱射する。銃弾はM16から発射され、彼の狙った所へ的確に飛んでいく。

「クソッ!襲撃は今日じゃ無かったはずだぞ!」

 SIS本部の警備兵はL85A1で応戦しながら愚痴を吐く。L85A1はイギリス軍が使用しているブルパップ式アサルトライフルで、5.56mmを使用する。そんなブルパップ銃をフルオートにしてウォーマシーンと化したプライスに応戦する。

「ウハァッ!!」

 プライスを殺そうと顔をだした隊員が顔を撃たれた。顔からは大量の血を流して死んでいる。

「て、撤退だ!撤退するぞ!」

 ウォーマシーンと化したプライスを殺せないと悟った警備分隊の隊長は、部隊を連れて撤退しようとしたが――――、

「あ?まだゲームは終わって無ぇぞ!!そこで死んどけ!!」

 逃げようと背を向けたが、それが彼らの命取りとなった。いち早く逃げようとした兵士達が次々と銃弾の雨で死んでいく。そして、その死んでいく姿を楽しんで観ている戦争機械ウォーマシーン。彼の瞳には血の海と銃弾の流れ星が映っていた。

「俺が1番好きな色は何色か知ってるか?赤だよ。だから、見せてくれ。お前達の赤を――――――。」



 プライスは死に損ねた兵士の頭に銃弾を撃ち込む。頭から血とゼリー状の何かが飛び散った。

「う、ウヘェッ!」

 強がっていたライナーもこれには参ってしまい、嘔吐する。

「おい、吐いたのか?」

「プライス、、、やり過ぎだ、、、。オエッ!」

「良いじゃねぇか!アハハハ!見ろよ、こんなにも絶望して死んでいくんだぜ!コイツぁ、たまらねぇなぁ?」

 グロテスクな血の海を見て嘔吐しているライナーにプライスはさらに追い打ちをかける。ライナーの意識はもう朦朧としている。

「あ、まぁ良いや。英雄気取りのお子様にはこれくらいが丁度良いお薬だな。」

「いつにも増して、、、、これは酷いね、、、。」

 マイケルは血の海から目を逸らす。

「おいおい、こんなに良い景色から目を逸らすなんて、、、。ったく、勿体無い連中だぜ。」

 そう言ってプライスは死体をナイフでえぐったりしてさらに追い打ちをかける。死体から心臓を取り出すと、喜んでその心臓の持ち主の口にねじ込んだ。

「おい!まだ終わって無いぞ!バカ野郎ぉ!」

 真っ赤な血の海から生き残った隊員が銃を構えてトリガーを引く。


―――おい!まだ終わって無いぞ!バカ野郎ぉ!

 その言葉がプライスの頭の中で響く。

―――おい!まだ終わって無いぞ!バカ野郎ぉ!

 そして、その言葉はプライスの過去の記憶と響き合う。

―――何でこんな事も出来ないんだ!バカ野郎!

 それは、プライスが過去に何度も浴びせられた言葉。両親にゴミの様に扱われて、毎日暴言と暴力に耐えてきた。彼がの出来事だった。

 そんな辛く、悲しく、憎い過去を、彼は思い出した――――、


「誰がバカ野郎だって?もう一度言ってみろ!」

 プライスは警備兵の生き残りがトリガーを引く前に彼の手を撃った。

「ウァァア!」

 手から血が飛び散り、持っていた銃を離す。

 そして、両脚を素早く撃って跪かせる。

「おい、誰がバカ野郎だ?」

「くたばりな、イカれ野郎!」

 ベッ、と最後の警備兵はプライスに唾を吐く。

 その行為もまた、プライスが過去にされた行為であった。その時の光景が頭にハッキリと浮かぶ。

「何だその態度は?」

 プライスはナイフを取り出して警備兵の口に刺す。

「ガハァアアア!」

 口から血が溢れる。鋭いナイフは唇を割き、歯茎をえぐった。歯が数本折れる。

「血を吐いていた方が数倍面白い。」

 プライスは口に刺さったナイフを何度も何度も刺した。口から滝の様に血が垂れていた。

「クソォ、、、アイルランド人のくせに、、、、。」

 警備兵は血まみれの右手でプライスに中指を立てた。

「アイルランド人?いつそんな事を言った?」

 プライスはそう言うと警備兵の右手を切り落とす。

「グアァァァァアアア!!」

 斬った断面からは血がドバドバ流れている。色はグロテスクだが、まるでメープルの様だ。

「俺はイギリス人だ。残念だったな。」

「なにぃっ!?」

 プライスがそう言うと警備兵は驚いた顔をした。

「さ、さっさと地獄へ落ちな。」

 そう言って首元にナイフを刺して上へ斬る。

「あ、あごの骨だ。」

 あごの骨で切れなくなると、こめかみをナイフで思いきり刺して最後の警備兵を地獄へ葬った。

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