余白が殺しにくるタイプのホラー小説。

これだけ映像作品が溢れている昨今で、ホラーを小説で楽しむ意義は何なのか?を再確認させてくれるような作品でした。

恐ろしい映像で怖がらせることはいくらでもできますが、文字媒体からじんわりと頭の中に形作られていく「怖い何者か」は、読み手の想像力を食い物にして肥大化していきますし、それは文章中に余白というか、想像の余地を上手く残すほどどんどん膨らむ気がします。

よくよく読んでみると物語内で明かされていることは実は少なくて、そのあたりの明かされない諸々(あれ、僕だけわかってないわけじゃないよね…?)のせいで読み終えた後にも想像を巡らせてしまい、結果としてもっと怖くなる、という。

と、ここまで考えていて、自分も「しらべちゃってよんじゃって」しているなぁと気づき恐怖。読者自身の行為を含めて完結させているとしたら、相当に周到な作品です…え、どうしてくれるのこの恐怖感…

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