第5話 最弱!数値で見る、おっさんの強さ!

 オバちゃんと山田のにらみ合いは、毒蝮 絹子(51)の登場によりすぐさま中断された。絹子は咥え煙草で山田の家に土足(ベロア素材・ヒョウ柄のハイヒール)で上がり込むと、オバちゃんを容赦なくハイヒールの踵(かかと)で殴りつけ、悶絶するオバちゃんの手から包丁を奪ってその喉元に突きつけ


「物欲の塊なんだよ、あんたの娘は。スマホ電子マネーの使い過ぎがバレて男と喧嘩になった挙句、殺ったんだよ。いい加減認めたらどうだい」


 オバちゃんに10のダメージ! 「育て方を間違ったのかも」という弱点を守る「うちの子はいい子なのよ本当は」シールドにひびが入った!


「あんたに何が分かるんやあー! 水商売の上に父親がいないってのに、4人ともまともに育って……なぜかいつも上から目線で腹が立つ!」


 絹子、攻撃を受け流す! ノーダメージのまま連続攻撃のチャンスを得た!


「関西弁・攻撃力上昇魔法が消えたね、焦ってるんだろ? しかもあんた、福井県民じゃないか。ご出身は京都ですか?なんて聞かれて、正直に答えた事無いだろ」


 おばちゃんにかかっていた「地域コンプレックス守護シールド」が弱体化! 絹子のエンドレス・ポイズンがオバちゃんを蝕み、毎ターンごとにダメージを受ける!


「だから言ったんだよ、あんたの娘はお金のありがたみが分かんないんだから、現金しか持たせちゃダメだって。PASMO・クレジットカード使って毎日コンビニでひと月10万以上の買い食いする女子大生が、卒業したからってまともに働くかい? ええ?」

「うるさーーーーーい!!! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れええええーーーーー!!!!」


 オバちゃんのターン! エンドレスポイズンの効果により、50のダメージ! オバちゃんは瀕死だ! エコバッグから栄養ドリンクを取り出し、バキッとキャップを開け飲み干す! 辺りに独特の臭気が立ち込め、オバちゃんのメンタル値20回復! 持ち直した!


「とにかく、警察に連絡したから。今現場検証やってるよ……こんな戦いは茶番だよ。娘、見つけたらどうだい。警察よりも先に」

「う、う、う、うわあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」


 オバちゃん、戦意喪失! 絹子の勝利だ! 戦利品として、福井県・武生(たけふ)産ナイフを手に入れた! 鋭い先端、刀のような切れ味! サツマイモやカボチャも、簡単に切れるぞ!


「やれやれ、だね」


 絹子はそう言うと、山田の方を見向きもしないで去っていった。山田の部屋の畳に、ハイヒールの踵による穴が開いていた。


「なんやあれ、メンタル値って。俺ってどのくらい強いんかな」


 山田がそう呟くと、窓際に止まっているカラスが答えた。


「10だよ。山田 勝久、コンビニ夜勤。対人スキル5、魅力2、思いやり7、漢気4、引きこもり傾向による世間知の不足の呪いがかかってる。どうやら遺伝性だな。劣等感の呪いもあるから、自分より弱そうな人間に対する攻撃性が発動する。ネットじゃ「悪魔」とか呼ばれてたんだろうが、お前の実体(メンタル値)は、そうだなあ」


 わなわな震える山田をカラスは意地悪そうな目つきで見て


「最弱だな。そのうち、家から出れなくなるぜ。かーーーーー!」


 そうダメ押ししてから、窓の桟を蹴り上げて飛んで行った。


 

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