実験的なテアトロ

Tonks

epigraph

……ひとつの役を演じきるということは、最後までその役を信じきることに他ならない。


それはとりもなおさず、自分たちの創る舞台が、手でに触れることのできる真実の世界であるという確信をもって、緞帳が降りきるまで決してそれを疑わない、ということだ。


観客を『その場所』へ連れていきたいと願うなら、役者はまず自分がその場所に立ち、まなこを開き耳を澄まして入り込まなければならない。そうしてそこに入り込むことができたならば、無垢な子供のように目に見えるもの、耳に届くものを信じて行動し続けなければならない。


盲信だけが演技を成功に導いてくれるのである。


たとえ地が裂け、炎に囲まれてもそれに気づくことさえせず、ひたむきに演じ続けることこそが役者の本懐ではないか。


最後まで信じきることができれば、世界は調和をもって観客の意識の中に解放される。だがわずかでも疑いを抱けば、世界はその時点で音を立てて崩れ去るのだ。


 マローニ『舞台論』

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