第6話 一夜

「1日、300レギットで、食事抜きだ。有りだと、プラス200レギットだ」


「まずは、1日で」


「あいよ、300レギットだ」


「1、2、3っと、これでぴったり、300レギットだ」


「部屋は、突き当たり右の1番奥だよ」


「わかった」


ジンは、鍵をもらい、言われた通り、右の1番奥に向かった。

受付のおばちゃんは、この服装ギリースーツでも、あまり驚かなかった。

俺の他にも、こんな服装をしてる人は割といるのかもしれない。


「ここかな」


右の1番奥の部屋へ入った。


「普通、なのかな?」


部屋の中は、シングルベット1つに、魔導ランプ、机、椅子が1つ、クローゼットがある。

部屋はそれなりに大きいのに、家具のせいで、場所を取り、床に座れるところは、2人分が足を伸ばせるぐらいしかなかった。


「よっこいしょ」


ベットに腰を下ろし、この部屋のことを考えた。

ジン自体、ウシ小屋以外の部屋は、母がいたところぐらいしか見てないので、これが、どのくらいの大きさで、贅沢で、どのくらいのお金で借りることができるのか。よくわからなかった。

あのおじさんが、教えてくれたのは、お金の使い方、数え方、種類。言葉、基本常識ぐらいだ。


「まぁ、いっか、お金はまだあるし」


気にしないことにした。ご飯代は、自分で作ればタダになる。


「【生成】」


あらかじめ、土を草のポーチに包んで持ってきていた。そこから、りんごが生える。


「うまい!」


25個もできてしまったりんごは、20個は自分で食べ、残り、5個は、宿に寄付した。


「寝るか……っとその前に」


寝ようとしたが、しないといけないことがあった。それは、トレントの腕だ。

今日、形を変えるために、魔力を練ったから、2割魔力が減っている。

その少しが、命取りだ。何かあるかわからない。それが冒険者。備えあれば憂いなし!

宿の外へ行き、地面にぶっ刺した。


「これで、明日には、満タンだな」


1日で約2割回復する。形を変えなければ微塵も減んない。でも形を変えるために魔力を使い、欠けたりすると魔力で再生までしてくれる。

ほんと、有能。


「さて、寝るか」


明日のための準備は終わった。寝るとするか。









「うん?ゴブリン目撃情報か、これでいっか」


朝の支度をして、しっかり宿の鍵を返して、ギルドに来た。

そして、依頼版のところで良さそうなクエストを受けに行った。


「あら、ジンさんですね!依頼はなんでしょうか?」


「これなんだが」


受付嬢は、戻った。昨日は、ひどかったもんな。

あと、今の服装は、しっかり昨日買った服を身につけている。

いかにも村人のような格好だ。あとで、マントでも買おうかな。


「ゴブリンですね!でもジンさん、討伐って、できるんですか?、採取系のをスキルで……」


「それは大丈夫だ、あと、スキルは他言しないでくれ」


「すみません、なら、あそこの、パーティに声をかけて、一緒に依頼を受けてくださいね!」


パーティ、だと!ソロだと思っていたのに、見落としてたのか。

くそう。仕方ない、一緒に行くか。


男2人に、女1人のパーティだ。

男2人は、剣士、女は、魔術師かな。


「すいません、これ見てきたんですけど」


声をかけた瞬間に、3人揃って、こっちを向いてきた。


「えっと、依頼見てくれてありがとうな、それで、君、前衛?後衛?」


自分自身も、どっちかわかんないんだよな。それなら


「どっちでもいけます」


これに尽きる。遠くから草生やして、戦うのと、トレントの腕使えば、前衛だ。

草様様だ。


「それって、魔剣士ってこと!?」

魔剣士とは、その名の通り、魔法と剣を使いこなせるスキルだ。


「いえ、草魔法士?です?」


「なにそれ、農業スキルじゃん!やめだやめ、そんなんクソスキルじゃないか!よくそんなスキルで、冒険者になれたよな!」


農業スキルなのか?バリバリ、戦闘できるんだけどな。それに、クソスキルとは、ひどいじゃないか。こんなのと、依頼をこなすと、ゴブリンなんかより、この3人の方が、危なそうだ。

ジンは、自分から引くことにした。


「そうですね、やっぱやめときます、また機会があれば、それでは」


颯爽と退場した。後ろから、「機会なんて、一生来ないだろうな!」なんて、さっき喋っていた男が言っていた。

クソ!そのまま、歩いて行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る