時の間と空の間

ちーよー

第1話 無題

 元気? 私の事を心配し過ぎじゃない?

 そんなに謝らなくて良いのに。


 ねぇ あなたとの遠距離は、もう1年になったけど毎日近くに感じていたよ。でも、また私は遠くに行かなきゃダメみたいなんだ。


 言ったぢゃん。泣きじゃくりながら、待てなくて我慢出来なくて浮気しちゃうかも。って……あれ? それ私の独り言だっけ?


 春の桜も夏の花火も秋の紅葉も冬の雪も。ここから1人で観たら全部がモノクロでつまらなかったなぁ。


 私の好きな語り掛けて来る貴方の低く包み込む優しい声……私の手を愛しむ様に握る細くて長い指……。

 全てが思い出になって消えていくのが恐いよ。


 本当はもっと愛されたかったし、もっともっと私も『愛してる』って伝えたかったよ。貴方が弱ってたら助けて上げたかったし、貴方が泣いてたら慰めて上げたかった。

 って、貴方は私の為に今は弱って泣いてるのか……


 泣かないでよ


 この1年でもう一生分を言われた気もするけど。貴方からの謝罪の言葉はもういらない。


 だから……もっと貴方にこうして『好き』『愛してる』って言われておけば良かった。もっと貴方にこうして触れられていたら良かった。


 良くドラマとかで言うじゃない? 『貴方に出逢うために生まれてきた』って。

 でも私は欲張りだから『出逢うため』だけじゃ嫌なの『貴方に愛される為に生まれてきたんだよ』そして『貴方を愛したまま旅立つんだ』


 ふふ 良かったわね。こんなに可愛い子に永遠に愛されたまま生きていけるなんて。


 あの助手席は私の指定席だったけど、あれ以来誰も乗せてないみたいね。って、今は怖くて貴方も乗れないんだよね。信号無視した車が悪いのに……


 ごめんね。悔しいけど、そろそろ行かなきゃ。ほら泣かないで。笑顔で見送ってよ。



 これからは過去形でしか語る事が出来ないから……






 ごめんね。


 もう苦しまなくて良いよ。


 ごめんね。


 もう罪悪感なんて感じなくて良いんだよ。


 ごめんね。


 先に貴方を待ってるけどゆっくり来てね。


 ごめんね。


 私が中途半端に生きてたから私に縛られてたよね。


 ごめんね。


 私なりに頑張ったけど最後まで目を覚ませなくて。



 あれ? 変だよね……目は開かないのに涙が止まらないよ……


 ありがとう


 私と出逢ってくれて


 ありがとう


 私を好きになってくれて


 ありがとう


 私を最後まで愛してくれて


 もう行くね。そしてこれだけは過去形じゃなく言える



 さよなら。貴方をずっと愛してる…………

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