第7話 マリンブルーの瞳

ってわけで、なぜか私は今、地元の祭りのステージ上でマイクを持って、バックバンドに囲まれている…。


今は7月下旬。桜木遥人と話してたのは6月半ば。

実に約1ヶ月でこんなことになっている…。


何が起こったかというと…






時間はその、喫茶店で桜木遥人と話した1ヶ月前に戻る。


「日向、夏祭り行こう!」

「…嫌だし。」

「なんで?!」

「今日まともに喋ったばっかじゃん!」

「でも、前から知ってはいたじゃん!」

「いや、そうだけど…。」



そんな…いきなり…。

まあ、顔はわりとタイプだし、いいのかな…。

いやいや!こんなすぐ誘う人、他の女の子にも行ってるかも…。

すぐに信用してはいけない。

ちょっと喋ったからって、急に信用はできない。

それに…二人で祭りなんか行ったら、同級生にからかわれちゃうよ…。



「九州の祭りって、山と海に囲まれた中で、花火が見られて、綺麗なんだろ?」

「まあね…。」

「俺、そういうの見たことないしさ。」

「男の子の友達とでも行けばいいでしょ?」

「女子がいないとつまんないじゃん。」



うわ~…。露骨。

私って女と見られてないのかな…。



「じゃあ、これ出ない?」

そう言って見せてきたチラシは、地元の祭りの告知だった。



「これって何?祭りのチラシじゃん。」

「ここ見ろよ。」

指差したところには…



"バンド参加者募集"



「バンド…?」

「そうバンド!俺らで出よう!」

「…ムリムリ!!バンドなんてしたことないし!」

「俺もない!」

「は~?!」

相変わらず、こいつはムチャクチャだ!



「でも…」

「でも?」

「俺のピアノとお前の歌があれば行けるよ。」



なんの根拠があって、そんなこと言うんだろう…。

でも、真っ直ぐな、すごく真っ直ぐな目を見たら、

私はこう言っていた。


「…わかった。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る