第5話・永久の喜び

 リリオネルの全ての支度したくができたと同じ頃にラビタルとハヴァルも支度を終えて、飛んで戻ってきた。“永久の王”のお披露目に参加ができるなど、比較的長寿の魔物達にとっても一生に一度あれば超の付く幸運だと言えるほど珍しいことなのだ。誰もが着飾ったり最上位の正装をして、競うように誰よりも多くの財宝を献上する用意をして“永久の王”生誕の儀にのぞもうとしている。魔王の御側仕えルシアノが、真紅の髪飾りごとリリオネルの身体を抱き上げて、扉に向かって行くと右後ろに魔王の右腕ラビタル、左後ろに魔王の御目付け役ハヴァルが付いて長い廊下をゆっくりと、小さな精霊達の祝福を浴びながらエントランスを目指して歩く。生まれたばかりの生誕の儀とは、また違う、魔界中がお祭り騒ぎになっているのだ、それをリリオネルもシッカリと感じていた。


(永久の王って、そんなに凄いのか。そういえば何か、地響きみたいな音が聞こえるけど…)


 その地響きが、自分を一目でも見ようとする魔物達の押し寄せる音だとは思いもしなかったようだが。エントランスにもある玉座の周囲には上位魔物があふれ、財宝を納めようとする列は城門まで続いている。そんな場所に到着して玉座に据えられて、赤い眼をシパシパと瞬かせて固まってしまった。目の前にはリリオネルが見たことも無いような色とりどりの宝石や反物たんもの、祝いの品がドンドン山盛りに積まれていく。用意されていた大きく深い金で出来た箱も、瞬く間に財宝で埋もれていった。


「さぁ陛下、“永久の王”としての最初のお一言をお願い致します」


(え!?)

「うー!」


 完全に放心状態になっていたリリオネルには寝耳に水である、そもそも話すことがまだ出来ていないのに[お一言]と言われても何を伝えれば良いのか分かるはずもなく、驚いて叫んだ[うー!]が[お一言]になってしまったが、どうやらそれで良かったらしい。元気な様子が伝わったことで、魔物達が歓喜の雄叫びを上げている。リリオネルの隣りに控えているルシアノ、ラビタルやハヴァルまで感極まって頷きながら目に涙をためていた、これで“永久の王生誕の儀”が無事に終わったようだ。一方で、やる事なす事すべてに大喜びをされまくるこの展開に、リリオネルはスッカリ疲れてしまって、少々投げやりな風にされるがままだ。そして、赤ちゃん魔王は魔界中で盛り上がっている様子を水晶玉で見せられつつ、居城での飲めや踊れやのお祭り騒ぎを丸1日間かけて味わい、ルシアノに抱かれた状態でグッスリと深い眠りに落ちていた。明日は一体、どんな出来事が赤ちゃん魔王に降り掛かるのか、いずれにしろ、リリオネルにとっては前世より生き甲斐のある人生になるだろう。

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純白の魔王 江戸端 禧丞 @lojiurabbit

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