第19話 ずっとずっと前から

 ここに来ていくら鈍感な僕でも少しは思い初めて来た。

 いや、この手の勘違いはよくある、

 でも……どう考えても……平入さんは僕に好意があるんではないか……と。


「えっとさ……実は、僕……生徒会長と、

 先週から付き合う事になったんだ」


 僕がそういうと窓の外を眺めていた平入さんが驚きの表情に変わった。


「は?」


 うんそうだよね、わかるよ……あの美女が僕なんかと付き合うとかそりゃ……。


「先週? あんた達前から付き合ってたんじゃないの? は?」


「え? あれ? あ、いや、本当に先週から……」


「はあああああああ?」

 平入さんは驚きの顔から今度は不思議な物を見る顔に変化して行った。


「そ、そうだよね、僕なんかが……」


「当たり前でしょ! あんたがあんな美女と付き合えるなんて、幼なじみの『お姉ちゃん僕と将来結婚しよう~~』とかって言う子供の頃の勘違い以外あるの? それ以外じゃあ普通あり得ないでしょ? どんな卑怯な卑劣な手を使ったのよ?!」


「いや、そこまで言わんでも……」


「会長のどんな弱味を握ったの? 会長選挙で不正でも突き止めた? あ、それともよくある、イヤらしい写真でも盗撮して、『僕の言う事を聞かないとこれを学校中にばら蒔くぞえっへっへ』とか言ったの?! うーーわ引く……あんたならやりそう……」


「やらないよ! 僕どんだけ卑劣な人間なんだよ、してないよそんな事」

 何? オタクってそんなイメージなの? 盗撮とかしないよ! 盗撮物の漫画なら…………いやいや、ないよ、興味ないよ、たまたま買った雑誌にその手のはあったけど、興味はないけど、勿体ないから読んだけど……。


「本当の事を言ってごらん、怒らないから、ね? お姉さんにそっと、お、し、え、て」

 一転ニッコリ笑って僕を懐柔する平入さん。


「えっと、実は…………いやいや、無いって本当に何もしてないって!」

 危ない、思わずやってもいないのにやったって言う所だった。冤罪を作り出す所だった。



「だったらどうしてよ、あり得ないでしょ! 相手はあの生徒会長よ! 格差なんてもんじゃないでしょ!」


「いや、まあ、それは僕もそう思うけど……」


「様……会長そう言えばあんたの事様を付けて放送で呼んでた……あの時何があったの?」


「え? いや、まあ……えっと……子供の頃遠い過去以来久しぶりだねって」


「それだけで呼び出す? そもそも私あんたが会長からご主人様って言われている理由をまだ聞いていないんですけど!」


「だ、だからそれは前回も言ったけど、そんな事は言ってない」


「嘘! だからなんでそこで嘘をつくの?」


「だ、だから……えっと……なんで、そんなに聞きたがるの?」


「それはあんたの事気になるから…………あ……」


「気になる?」


「…………うん……なんでかわからないのよ……あんたの近くに寄ると……何か気になるの……いつもとは逆なの……」


「いつもと逆?」


「…………うん…………私ね……男の人の近くに寄ると嫌悪感が沸くの、近づけば近付く程離れたくなるの」


「――――嫌悪感……それってどういう事?」


「……男の人をね嫌いなわけじゃない……遠くから眺めていると格好いいとか素敵とか好きって普通に思うの……でも……その人に近付けば近付く程、近づかれれば近づかれる程、嫌悪感が沸くの……どんどん……嫌いになって行くの……」


「それって……性格が好きになれないとかそう言う事なの?」


「ううん……違う……そう、違うって思うの、この人じゃないって……何か私の心の中でそう言うの、この人じゃないって……」


「この人じゃない?」


「うん……もっと強くて頼れて……この人じゃないって」


「強くて頼れて……」

 それってまるで僕の正反対な気がする、やっぱり好かれているってのは勘違いだったかも……そう思っていたが彼女はうるうるとした瞳で僕の事を見つめ始める……何かどこかで……そうだ、陽向と、陽向と始めた会った時の様な目で僕を見ている……。


「中学の時のあんたの記憶は殆ど無い……好みでも無いし、頼りたいとも思わないし」


「まあ、そうだね……」

 うん……自分でもそう思う……だから僕は変わりたいって……ううんこのままじゃ駄目だって思ってここに、この学校に入った。


「でも……同じ高校に入って、同じクラスになって、そして近くで喋って……逆なの……こんな事なかった……今まで無かった……今こうしているのが凄く……楽しくて……何か幸せで……やっと逢えた……そんな思いに……」


「……やっと……逢えた?」

 ちょっと待って……一体どういう事なんだ? 言ってる事が陽向と同じなんだけど……そう言えば陽向は彼女の事を僕の浮気相手って……。


「だから聞きたいの、貴方の事を、会長の事を……私のこの気持ちが一体何かを知りたいの……」


「……うん……でもごめん……僕も知らないんだ、実は陽向……会長にも同じ事を言われているんだ」


「同じ事?」


「うん……誰にも言わないでね……会長にも」


「うん約束する」


「……会長は言ったんだ……僕達は悠久の時を越えた何者かの生まれ変わりだって……この身体は時の流れに乗っている器に過ぎない、僕達に死の概念は無いって」


「――――死の概念が……無い……」


「うん、最初会長は中二病なんだなあって思ってた……でも……平入さんも同じ様な事を言われて……ひょっとしたらって思い初めて来た」



「……そか……そうなのかもね」


「信じるの?」


「ううん、半信半疑って感じかな……でも……私のこの気持ちはそれで説明がつくかも……」


「説明がつく?」


「うん」


「それってどんな気持ちなの?」


 そう言うと彼女はニッコリ笑って僕に言った。


「ずっと……ずっと前から……貴方の事が好きだった……って気持ちかな?」

 とんでもななく可愛い笑顔で、まるで妖精の様な可愛いらしさで、彼女は僕にそう告白をした。

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完璧超人の美少女生徒会長は僕の元僕(しもべ)だった。 新名天生 @Niinaamesyou

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