第22話

オカマ戦を死亡で終え、街で目を覚ましたアキはバッドステータスのかかる指輪と、重量制限で遅くなるため大盾をしまうとスキルを使いつつ街の門まで全速力で駆け始めた。


早くミザリィの安全を確認したい、もしMOBに怪我でもさせられてたら…………まぁもしミザリィに怪我させた奴がいたならMOBだろうがプレイヤーだろうが完膚なきまでに叩きのめすがな。


そんなことを考えながら走っていると門の方に人だかりが出来ているのが見えた。


ミザリィに何かあったのか?!


門の様子に焦ったアキは指輪を装備し、左手を鳴らす。


その瞬間アキの身体は宙を舞い、門に出来た人だかりの真上に到達する。


「五郎、下に投げろ」

「カラッ」


━━ヒュンッ


アキの命令にくま五郎は空中で一回転し、その遠心力でついた勢いのままアキを投げた。


そしてその数秒後、アキは砂煙を巻き上げながら人だかりのど真ん中に着地する。


「アキちゃん!!」


やはり人だかりの中心にいたのはミザリィだった


「よぅ、またあったねミザリィ」

「うん!!」


俺が少しかっこつけて言うとミザリィは後ろから全身から嬉しいオーラを出しながら飛び込んで来た。


お、おぅ……ミザリィよ、この勢いは俺じゃなきゃ怪我してたぞ…………。


「なんだお前!!その敵MOBの仲間か?!」

「アァ?」


アキ達の様子を見ていた周りのプレイヤーのうちの一人がミザリィに敵MOB呼ばわりをし、それにアキはドスの効いた声を発しプレイヤーを睨む。


「な、なんた?こ、こっちはこれだけのプレイヤーがいるんだぞ?!」

「それがどうかしたか?取り敢えずミザリィを敵MOB呼ばわりをしたてめぇはぶっ殺す」


俺はそう言うと右手を鳴らしほね太郎を召喚し、この前のように剣と盾を受け取り右手に剣を握り、左手に盾を装備する。




「う、うらぁぁ!!ぐぁっ?!」

「はい、さよならっと」


無謀にも突っ込んできたプレイヤーの攻撃を軽く盾で流し足払いをする、するとプレイヤー尻もちをつき呆然としている。

そしてアキはそこに一切の躊躇いもなく心臓を一突きする。


その瞬間、剣を突き立てた場所から血液がブシャリと飛び散りアキと後ろにいるミザリィにかかった。


「ひっ」

「あ!ごめんミザリィ!!」

「アキさん、だめ……です、人を殺しちゃだめです……」

「あぁ…………ゲームという考え方は危ういとか自分で言ってたのに完全に呑まれてたなぁ」


いつの間にかゲームだから死んでも大丈夫だという考えに呑まれていた事に気が付き、アキは頭を数度掻くとプレイヤーから剣を引き抜くと傷口にアイテムボックスの最後のポーションを振りかける。


「俺はプレイヤーだ、そしてこの子は敵MOBではなく普通?の女の子だ、良いな?」

「はっ、はいい!!」


アキが首に剣を突き付け目の笑っていない笑顔でそう言うと、プレイヤーは涙目で街の方へと走って逃げていく。


「さぁ周りの奴らも散った散った!!」


俺のその言葉に周りの野次馬達は「あの子つえぇな 」「金髪美女と白髪美少女、これは百合展開に発展させるしか……」「あぁ、俺あの白髪の子に踏みつけられたい」などと口にしながら街やフィールドに消えていった。


…………なんかあいつら怖いんだが。


「そうだ!アキちゃん、あの悪魔から逃げられたんだね!」

「逃げられたっちゃ逃げられたけど、実は死んで逃げてきたんだ〜……」


アキが目を泳がし、苦笑いをしながら言うと、ミザリィは険しい顔になりアキの目の前まで近付き、拳をこしに当て前傾姿勢になって口を開く。


「めっ!!」

「へっ?」


突然のめっ、に俺の口からはおかしな声が漏れ出た。


「アキちゃんめっ!!たとえ死んでも生き返るって言っても自分を大切に出来ないのはめっ!!だよ!!これからは心配かけさせるようなことしちゃだめだよ?」

「お、おう、気をつけるよ……」


ミザリィの勢いに何も言い返すことは出来ず、アキはただ呆然とそう返すことしか出来なかった。


━━パンパカパーン!!


「うぇ?!」

「わっ?!」


軽快なファンファーレが突如として現れたメニュー画面から鳴り響いた。



~第一章勇者誕生~


☆CLEAR☆


おめでとうございます、今回の緊急クエストMVPは『アキ』さんです!!

クエスト参加者には活躍度に応じた報酬を用意致しました、メニュー画面に出現しますプレゼントボックスから受け取ることが出来ます。



「ど、どうしたんですか?」

「あ〜、連絡が来ただけだよ」

「そうなんですか」


ミザリィの質問に少し流すように答えるとプレゼントボックスに入っている物をタッチしてみる。


すると目の前に美しい装飾を施された剣と盾がセットで現れた。


「「おお!!」」


その瞬間を目の当たりにしたアキとミザリィは目を輝かせ、二人同時に声を上げる。


「綺麗……」

「あげるよ」

「えぇ?!こんな高価そうなもの貰えません!!」

「じゃあ貸してあげる、君が俺よりも強くなるまで持ってて?」


アキのその言葉にミザリィは少し悩んだ末━━


「━━分かりました、私頑張って強くなります。でもこの盾はアキちゃんが持っていてください」

「わかった、それじゃあお互いに頑張ってあのオカマ悪魔を倒せるくらい強くなろうか!!」

「はい!!」


その日勇者とその盟友アキの約束が交わされた。

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