第21話

「ふん!!」


野太い声と同時に鞭が地面を叩き割りうねりながら迫ってくる。

何か嫌な予感がしたアキは鞭と自分達の間にスケルトンを召喚し、その鞭を防御させてみる事にする。


「うふ、案外勘が良いのねあなた」


その様子を見たオカマは野太い声で笑うと手首のスナップで鞭を操り、防御に徹したスケルトンを一撃で粉砕した。


「鞭ってねぇ?扱いが難しい代わりに使いこなせるとこぉんなに強いのよぉ?」

「こちとら初心者なんでね、お手柔らかに頼みますよ」

「それじゃあたぁっぷりいたぶってから殺してあげる♡」

「生憎死ぬ気は無いんでね、さっさとおうちに帰りやがれオカマ野郎」


鼻で笑うとスケルトンを呼び出せるだけ呼び出し、全員に命令を出す。


「お前ら、バラけて奴を拘束しろ!!」


俺の命令に呼び出されたスケルトン達は忠実に従いあるものは二人同時に、あるものは先頭からワンテンポ送らせて次々と飛びかかっていく。


「あらん、そんなふうにされちゃったら鞭で全部は倒せないわね…………だが甘い!!」


飛びかかってくるスケルトン達を前にオカマは口に手を当て悩ましい態度をとると、鞭を操作しながら鞭で打ち漏らしたスケルトン達を蹴りや拳、頭突きなどで全て粉砕する。


「うっわ、化け物」

「あら、化け物とは言い得て妙ね、なんたって女はいつでも綺麗に化けるもの!!」


オカマはそう叫ぶと拳に何やらエネルギーのようなものを溜め始めた。


「ふふふふふ、私の全身全霊を込めてあなたを消し飛ばしてあげるわ♡かつてこの技をくらって生きて帰ったものはいないの♡つまりここがあなたの━━」

「五郎、やれ」

「━━はかブゴォォ?!」


エネルギーを溜めながら話していたオカマは突如として襲ってきた左からの攻撃に反応しきれずモロにくらい、そしてそのエネルギー暴走させ自爆した。


オカマの長ったらしい台詞を聞きながらエネルギーを溜めさせるなんて悪手誰がしてやるかよ、アニメでもゲームでも技を溜めてるのをただ見てるとかドMかよ。


「流石だ五郎」

「あ、あんたねぇ……人が説明してる時は黙って聞くものでしょうがァ!!」

「いや、黙って聞いてたら誰も生きて帰れないほどのオカマ砲が飛んで来てたんだろ?ならこれが最善策じゃん」


俺が淡々とそう言うと、オカマは頭から火を吹きそうなほど真っ赤になりながら鋭い視線で睨み付けてきた。


「さっきからオカマオカマ煩いのよ!!」


オカマが言葉を言い切ると同時に、アキに向けて口から光線が吸い込まれるように向かって飛んで来る。


「ふっ!!」


それをアキはギリギリの所でタワーシールドを斜めに持ち光線の軌道を上空へと逸らす。


「遅いわ!!」

「げぇっ?!」


逸らしたタワーシールドを真上に掲げオカマの様子を見ようとすると、その瞬間にはオカマは既に目の前で拳を構えており━━


「ふん!!」

「ぐぁっ!!」


━━骨が何本も同時に織れる音がしながら吹き飛ばされ、ゴロゴロと数度地面に打ち付けられながら数メートル後方に転がった。


「ゴブッ……ゴホッゲホッ」

「あら、これでも殺す気で殴ったんだけどまだギリギリ生きてるみたいね」

「ゲホッ、ゴボェッ、まだ、死ねないんでね…………」


とは言ったものの正直あの一撃だけでもう身体がほとんど機能しない。

Vitにかなり振ってたからこそ一撃耐えられたのだろう、ほんとここの運営は頭おかしいのではないだろうか。


「序盤に出ていいやつじゃないだろうが…………」

「あら、序盤?なんの事言ってるのかしら?」

「てめぇ……ゲームの序盤で出ていい敵MOBじゃねぇ……つってんだよ…………」


俺のゲームと言う一言にオカマは眉をピクリと動かし鞭をしまいこちらへとゆっくりと歩いてきた。


「んだよ、てめぇ……まだ俺はやれるぞ?」

「あら、満身創痍の濡れネズミちゃんがよく言うわ?あの女の子よりももっと面白い子を見つけちゃったかもしれないわね」

「そりゃどうも……プッ!!」


俺は無理やり口を吊り上げ笑うとオカマの顔面に向けて唾液混じりの血を吹き付けた。


「残念ね、目の前に重要そうな情報があるのに殺してあげるわけないじゃない」

「クソブスオカマが、てめぇの顔面にゃ……血の化粧がお似合いだっての…………」

「今はそんな事どうでもいいわ、あなたの言うゲームの意味をきちんと教えなさい」


アキの目の前まで来たオカマは泥だらけになった白髪を引きちぎらんとばかりの力で掴むと、自分の顔の前までアキの顔を持ってきて問いかける。


「あー、もぅ無理そうだ、これは死んじまうな…………」

「『上級回復魔法エクスヒール』死のうとしても無駄よ?私は回復魔法が使えるもの」

「チッ、めんどくさい」


オカマの魔法に包まれると痛みどころか疲労感すらも消え去り全快の状態になってしまった。


この状況はよろしくない、ミザリィを救うために囮になったがこのまま色々と教えてしまうとこのゲームに、この世界に良くない方向に転がってきそうな感じがする。

ただの勘でしかないのだが、案外勘というのはバカにできない。

だが、背に腹は変えられんな。


「さぁ、教えてちょうだい?」

「あぁ良いさ」

「あらん?死ねない事を知って諦めたのかしら?」

「どうでもいいだろ、ほら」


俺はそう言うとステータス画面をオカマに突き出すと俯き、黙り込む。


「ふむ、Lv?Str?これは何なのかしら」

「レベルは敵を倒した時に上がる強さの値、Strは筋力とでも覚えておけ」

「へぇ?て事はあなたは弱い方だったりするのかしら?」

「さぁ?他のやつのを知らないからわからないな」


俺はヘラヘラとした顔で俯きながらオカマに答えていると待ちに待っていた時が来た。


それはステータス画面の端に表示しておいたマップに映ったセキトバのアイコンが街に入っていく瞬間だった。


「太郎五郎俺を殺れ!!」

「「カラッ!!」」


━━ドスッ、ザシュッ


俺が命令すると五郎が心臓めがけ手刀を突き刺し、流れる動きで太郎が剣を瞬時に引き抜き首を切り飛ばした。


「俺の、勝ち……だ」

「えくすひ━━チッ邪魔ね!!」


俺は首だけの状態でほね太郎達に回復を邪魔され醜い顔をするオカマ野郎を笑うとそのまま意識をほおり投げた。

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