第17話

翌日、学校が終わり全国帰宅選手権大会に出れば優勝を狙えそうなほどの速さで家に帰った宏幸はすぐさまTPOにログインし、アングリーベアーを軽く倒すとレベル上げついでにエルダースライム以外に手を出していない草原エリアを攻略する事にした。


とりあえずこの前みたいにヒポグリフの餌にならないよう頭上はしっかり注意しつつ、今日は草原の強MOBの一体であるバイコーンを倒しに行く予定である。


「くま五郎は頭上からヒポグリフが来たら反撃、ほね太郎は俺と一緒に周囲の警戒」

「「カラッ」」


秋保の号令に二人は短く返事をするときちんといいつけ通りに警戒を始める。


やっぱりネクロマンサーっていいよねぇ、ソロでもこういう風に役割分担出来るし、何より寂しくないし、寂しくないし!!


大事な事なので二回言った。

なぜ俺がこんな風に言うかというと、昨日俺がナズナさんと仲良くなっているのと同じようにシャケも狩場でフレンドが出来たらしく昨日からその人達とパーティーを組んでレベル上げをしているらしい。

そしてサツキはもちろんβ時代のフレンドとレベル上げと攻略を楽しんでいるらしいのだ。


「くそっ、あいつらうらや…………羨ましくなんかないんだからな!!」


何故か熱くなる目頭を押さえるとモヤモヤとした気持ちを振り払うように大声で叫ぶ。


「はぁ、結局こっちでもこんなかんじか…………」

「カラカラッ!!」

「どうしたほね太郎」

「カラッ」


顔を右手で押さえ嘆いているとほね太郎が何かを発見したらしく、その何かに向けて指をさす。


ほね太郎が指を指した方向を凝視していると、何やら地響きを鳴らしながらこちらへ向かって来る物体が写った。


それの地響きは次第に大きくなっていき、輪郭が薄らと写るころには既に地響きに混じる軽快な走る音でそれがなんなのか分かった。


「まさかあっちから来るとはな」


こちらに走ってくるものの正体に予想が付いているアキはそう一言零すと大盾を取り出し戦闘態勢に入る。


「お前ら、あいつの後ろには絶対に回るな、そしてやれるもんならあいつに跨ってあの首ぶんどってこい」

「「カラッ!!」」

「『タウント』!!おらバイコーン、歯食いしばれや!!」


バイコーンとの距離が100メートルを切った瞬間アキはタウントを発動しタゲをとると、大盾を構えた状態でバイコーンへと走り出し━━




━━バイコーンと正面衝突をする。


「うっぐぁっ!」


バイコーンと接触したアキは数メートル後ろに飛ばされダメージを受ける、しかしそれは突進してきた方も同じで顔面に大盾をモロに受けたバイコーンは焦点のあっていない目でこちらを睨みフラフラと千鳥足でこちらへと向かってくる。


「ほね太郎、くま五郎、今のうちに早くやれ!!」

「カラッ!!」

「カララッ!!」


アキの号令に合わせ両サイドから飛び出したほね太郎とくま五郎の攻撃がバイコーンに向け吸い込まれていき━━




━━その瞬間に影からでてきた一匹の光をも吸い込み逃がさない程の黒い馬を象った影が現れ二人の攻撃を阻む。


「引け!」

「ガギャッ」

「カラカラッ」


命令が遅かった!!


アキが命令をした時にはもう遅く、黒馬の後ろ蹴りが直撃してしまったくま五郎は頭蓋骨を粉々に粉砕され全身もそれに続くように粉々に砕け散り風に解けていってしまった。


おっちゃんの講座がなければくま五郎のデスを嘆いたかもしれないが後で呼び出せるし今はそんなことをしている余裕はない。

くま五郎の事はあとだ、くま五郎は戻ってくる、大丈夫なはずだ。


俺は自分に暗示をかけるとアイテムポーチから出したポーションを飲み干し、再度盾を構えほね太郎の前に出るとバイコーンと影から現れた黒馬と対峙する。


「どちらの馬も後ろ足は一撃必殺と思っておこう、黒い方は影から出てきたことからバイコーンが使った魔法かそれとも元々黒い方の魔法で潜っていたか、だな」


アキがブツブツと考察を述べていると興奮した様子の黒馬がほね太郎目掛けて大地を蹴り飛ばし向かってくる。


「太郎、ガード後スイッチだ」

「カラッ」


━━ドゴッ!!


先程のバイコーンから学習したらしく黒馬はぶつかる少し前に飛び上がり全ての力を前足に込めスタンプを大盾にぶつける。


「スイッチ!!」


アキの怒号に反応したほね太郎は自らの盾を捨て、アキが手放した大盾を掴み一回転し勢いを乗せた盾による一撃を黒馬に当てる。


「バイコーンは俺が何とかする!!太郎はそっちだ!!」

「カラッ!!」


アキはほね太郎に黒馬を任せるとほね太郎の投げ捨てた盾を拾いバイコーンに向かって走り出す。


「『サモンスケルトン』!!ちょっと武器借りるぞ!!」


自身とバイコーンの間にスケルトンを召喚するとそのスケルトンから片手剣を掠めとりバイコーンに飛び乗る。


「せいっ!!」

「ヒィイィイイ?!」


飛び乗ると同時にバイコーンの首に剣を突き立てるとバイコーンは大声を上げ暴れ回り始め、どうにかしてアキを振り落とそうとする。


「ぐぎぎぎっ…………うわっ!?くそ、後でStr上げることも視野に入れないとな」


バイコーンに必死にしがみつくアキだったが力が足りずバイコーンから振り落とされてしまった。


ほね太郎の方は…………あっちもピンチっぽいな、これは正直負ける気がするな。


「スケルトン君盾も借りるよ」


アキはスケルトンから盾をも回収し、左手にほね太郎の盾、右手にスケルトンの盾を装備しバイコーンと睨み合う。


「ヒィイイイ!!」


バイコーンは高らかに嘶くと自らの影から五つの黒い刃をアキに向け発射する。


「ユニーク個体で確定か!!」


(ユニーク個体とは一般的な魔物とは違い特殊なスキルや見た目をしているモンスターの事を言うByおっちゃん調べ)


飛んでくる初弾を右盾で滑らせるように起動を逸らし、次弾を左盾で受け、三四番目は左右にステップを踏むことでよけ、最後の刃を地面に膝をつき滑りながら上半身を反らせ顔のギリギリを掠める程度の所で避けるとその勢いに任せもう一度バイコーンの背中に跨った。


「さぁもう一度ロデオと洒落こもうじゃないか!!」

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