第9話

グゴゴゴゴッという駆動音を立てながらゴーレムが動き出す。


「う、うっわぁ……」


立ち上がる事によって存在感と威圧感を何倍にも膨れ上がらせたゴーレムを目の前にアキはただただ呆然と見上げるしかできなかった。


「アキ!!気を付けて!!」

「危な!!」


振り下ろされたゴーレムの拳を間一髪で避けると大盾を取り出しやっと戦闘態勢にはいる。


「はぁぁ、めんどくさい…………ほね太郎、くま五郎、サツキ、あいつの攻撃は抑えるからその間に攻撃して」

「「カラッ!!」」

「りょうかーい!!」


俺はバカとスケルトンブラザーズに命令をするとゴーレムへ向け『タウント』を発動しタゲをとる。


「さぁこい土塊人形!!」


アキが『タウント』を発動させながら叫ぶと、ゴーレムは両腕を頭━に見える部分━より上へと振り上げアキへ向け一直線に振り下ろす。


攻撃が来るとわかっており身構えていたアキはわざと受け流すことなく大盾で正面から受け止める。


「ぐっぎぎっ、やっぱり受けるのは辛い…………」

「ありがとうアキ!!ほね太郎、いくよ!!」

「カラッ!!」


サツキの元気のいい声にほね太郎も負けじと返事をする、そして二人はゴーレムの右足と左足で二手に別れながら走っていく。


「ふぅーっ、『トレイススラッシュ』!!」

「カラッ!!」


足を通り過ぎると同時に繰り出された二人の斬撃はゴーレムの足を大きく削り、それによってゴーレムの体勢が崩れる。


そして、耐えきれなくなったゴーレムが倒れ込み土埃を辺り一体に巻き散らせる。


「うぐあぁぁぁ!?目いったぁ!!」


上へ大盾を構えており前ががら空きだったアキに大量の土が襲いかかり、目を閉じることが間に合わなかったアキはもろに砂嵐を目にくらい両目を押さえてのたうち回っていた。


アキがのたうち回っているとゆっくりと立ち直ったゴーレムが再度腕を頭上に振り上げ、アキ目掛けて振り下ろされる。


「アキ!」


振り下ろされたゴーレムの腕が地を震わせ再度土埃を起こし、アキがどうなったのか、そしてゴーレムの位置までも確認する事が不能になる。


「これは逃げた方が良いかな……」


サツキがそんなことを呟いたその瞬間、土煙の中からくま五郎と目を押さえながらくま五郎に運ばれるアキがサツキ目掛けて飛んできた。


「アキが生きてた!!」

「何とかくま五郎のおかげでね、それと聞きたいんだがさっきから目を開こうとしても開かないんだが」

「それは盲目の状態異常だよ、時間経過かアイテムで治るものだからアイテムの無い今はひたすら耐え抜くしかないよ」


盲目か、かなり面倒な効果だな。


「くま五郎、くま五郎はこのまま俺を抱えて移動、サツキとほね太郎はこっちがゴーレムを釣ってる間にヒットアンドアウェイでどんどん体力を削ってくれ。こっちは目が治ったらまたタゲを取る」

「わかった!!」

「カラッ!!」


さて、今はとりあえずくま五郎に任せるとして。ゴーレムって言ったら物理ツエェで魔法ヨエェだった気がするんだよな。


なら一か八か召喚してみるか。


「サツキ!!魔法使い系のアイテム無いか?!」

「あるよ!!どうするの!?」

「取り敢えずくま五郎に投げてくれ!!」


ドゴンドゴンとうるさいゴーレムの音にかき消されないよう大声でサツキと会話し、サツキから魔法系スケルトンを召喚するための触媒を━くま五郎が━受け取る。


くま五郎が素材を使って召喚出来たんだ、魔法系の物を使えば魔法系スケルトンの召喚もできるはず。


「くま五郎、触媒と一緒に下ろしてくれ」

「カラッ」

「召喚するからゴーレムの相手を頼む」

「カララッ」


手探りで触媒を探し当て、そこへ向かってゲートを召喚するイメージをし━━




━━「『サモンスケルトン』!!」


アキがそう唱えるといつもの如く冷たい風が吹き荒れる。

そして風が収まり、骨のなる音が聞こえて来た。


「よし、君は魔法が使えるか?」

「カラカラッ!!」

「よし、よろしい!!ではあのゴーレムをひたすら魔法で攻撃してくれ!!」

「カッ!!」


召喚したスケルトンは短く返事をするとその瞬間、スケルトンの方から肌がヒリヒリするほどの膨大な熱が伝わってきた。


「あっつい」

「あ、これはまずい」

「「カラ?」」


サツキの台詞に小さな戦慄を覚えるが、時すでにお寿司。

空間を震わせるほどの轟音とゴーレムのものと思われる破片が飛び散りばしばしと当たってくる。


「カラカラッ?!」

「カラーッ!?」


身体が骨で出来ていて軽いスケルトンブラザーズは骨をカランカランと鳴らしながら地面を転がっていく。


轟音がなってから数秒経つとやっと衝撃が収まり埃っぽい空気が漂ってくる。


「うぅ、あ、見えるようになった…………こりゃ酷いな」


やっとの思いで目を開けて周りを見るとある場所を中心に半径5メートル程が真っ黒に焦げており、ゴーレムは跡形もなく消し去られていた。


「あっぶない、なんで召喚したスケルトンが『下級爆破魔法バースト』なんて使えるの!?」

「ん?知らない。ってかさっきのスケルトンはどこ?!」


先程召喚したスケルトンが気になり当たりをキョロキョロと見回すと既にゲートが開いており、そこからサムズアップをしたスケルトンの腕がゆっくりと沈んでいった。


「おいおい待て待て!!一発爆破魔法打ったら即退場とかどこぞのアーチャーか?!」

「あー、やっぱりそうだよね〜」

「何か知ってるのか?」

「あのねぇアキ、本当ならスケルトンは先頭が終わったらいなくなるのが普通なんだよ?」

「えっ?マジで?」


今までほね太郎やくま五郎がずっと一緒に付いてきたためスケルトンとはそんなものだと思ってたんだが…………。


「戦闘時に一体一体召喚しなくちゃいけないししかも弱いからネクロマンサーは嫌われてるんだよ」

「マジっすか…………」


衝撃の事実に呆然としていると先程の爆破で混ざったのかほね太郎とくま五郎が合体した状態でこちらへ歩いてきていた。


「ブフッ!!あっはっはっはっは!!やっぱりアキは凄いね!こんなスケルトン初めて見たよ!!」


骨骨合体をしたほね五郎をみたサツキは吹き出すとお腹を抱えながら俺へとそう言ってくる。


「ふふっ、だろ?これはあれだな、ガーディアン兼ネクロマンサーとして有名になるのも夢じゃないかもな?」

「うんうん!なろうよ!!私も有名になる、なんなら二人でランカーにでもなろう!!」

「よっしゃ!!それも楽しそうだな!!とりあえず今の目標はあの憎き鰐をぶちのめす事だー!!」


その後その現場を目撃した者がいたらしくアキとサツキが有名になるのはそう遠くなかったという。

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