第1話 興味ある異変

 一時間後。出張所の会議室

 会議室にはガーランドだけでなくヒラー、ハリス、栗本、ジェスロ、スパイク、ベラナ、横田、グロリアとサニー、チャド、マイルズ、ダスティが顔をそろえていた。

 「日本に行くお金はありません」

 開口一番サニーは言った。

 「でも僕は留学したい」

 わりこむダスティ。

 「なんで?」

 サニーは声を低める。

 「理由は時空の揺らぎとひずみがどこかにある」

 ダスティは日本地図を出した。

 「簡単に言うな。日本に知り合いはいない」

 あきれるスパイク。

 「アジア情勢くらい知っている」

 話を切り替えるダスティ。

 「どんな?」

 横田が聞いた。

 「天皇陛下が退位されて年号が「零和」になった。中国は東シナ海や南シナ海に出没している。南シナ海は東南アジア諸国が互いに領有権を主張している。そこに勝手に基地を造り、太平洋に進出しようとしている。中国は一帯一路やAIIB、海のシルクロードで覇権を握ろうとしている。日本と尖閣諸島問題でもめている。日本は北朝鮮の瀬取りや中国の牽制でカナダ、フランス、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、インドと一緒に監視や取締りをしている。海洋安保でもつながっている。そして韓国と日本は竹島問題や慰安婦、徴用工問題でもめている。韓国は竹島だけでなく対馬、隠岐、佐渡島、五島列島は自分の領土と言い出している。中国は沖縄や先島諸島は自分の領土と言っている。その裏には資源がほしいからという行動や欲がからんでいる」

 ダスティはタブレット端末を出して映像を切り替えながら説明する。

 「子供にしてはよく答えられたな」

 感心する横田とべラナ。

 「ちゃんと調べているわね」

 グロリアは腕を組んだ。

 「僕を拉致しようとした連中は中国軍のイージス艦と空母だよ。それと韓国軍のイージス艦と戦闘機二機のミュータントだった」

 真顔になるダスティ。

 ため息をつくサニー、チャド、マイルズ。

 「韓国軍のイージス艦は北朝鮮のミサイルを追跡できないし、日米韓の演習でイージスシステムを構築できないのとトップヘビーでうまく旋回できない。中国軍のイージス艦は日米のイージス艦より性能が劣る。さっき来た空母は「遼寧」でハリボテのポンコツだね。韓国のF-35は技術力なし、武装なし、能力なしの空っぽで整備と修理は日本が請け負っている。F-15もどこかしら欠陥がある」

 YOUTUBUを見せながら言うダスティ。

 「よく知っているな」

 感心するジェスロ、栗本、スパイク。

 「だってネットや動画だと「お笑い韓国軍」

「ハリボテ韓国のイージス艦」とか「ポンコツ遼寧」のくくりで出てくるよ」

 画像を切り替えるダスティ。

 「なるほど」

 感心するガーランド。

 「君なら海保や自衛隊のミュータントとうまくやれるかもしれない。「ゲートスクワッド」の召集が国連から出ているからね」

 それを言ったのは横田である。

 「え?」

 「日本政府はTPPだけでなく日欧EPAの関係で巨大な経済圏の中にある。ただいるだけじゃなく海洋安保の関係で軍事同盟を裏で結んでいる。南シナ海は東南アジア諸国と中国と小競り合いが激しい。そこは日本のシーレーン防衛も入っているから東南アジア諸国と「アジア沿岸同盟」を結成して中国だけでなく韓国の船も監視対象にしている。理由は時空のひずみや歪みの原因は韓国や中国にあると見ている。それに時空侵略者が中国か韓国の政府内にいるのではないかと見ている。まだ確認されていないけどね」

 横田は日本周辺の地図を出して日本海や東シナ海を指さしながら説明する。

 「じゃあビンゴ?」

 ヒラーがわりこむ。

 「FBIとしても黒幕はクレメンや立花だけではないと思っています」

 ハリスは口をはさむ。

 「八年前に東日本大震災が起きて南極点に時空の揺らぎが出現した。そこを起点に小さな時空の揺らぎや蜃気楼とそしてこれが出現している」

 横田は瓶詰めの物を出した。中味はジュースではなく一〇センチ位の虹色の綿毛である。それが五個位入っている。

 こめかみを押さえるダスティ。

 トンカチで頭をたたかれるような痛みに顔をしかめる。

 「ごめん」

 横田はあわててバックにしまう。

 「下宿先はどうするの?」

 サニーがわりこむ。

 「都内のアコードの支部か自衛隊の基地のそばのアコード支部になる」

 答える横田。

 「なんか話が進んでない?」

 チャドとマイルズがわりこむ。

 「納得していません」

 サニーは腕を組んだ。

 「よし。ワシがお金と出す」

 ポン!と手をたたくガーランド。

 「ええええ!!」

 驚きの声を上げるサニー達。

 「やったぁ!!」

 目を輝かせるダスティ。

 「ガーランド。一緒に紺碧の眼と時空の異変の調査をしよう!!」

 ガーランドに飛びつくダスティ。

 「いいよ」

 うなづくガーランド。

 「紺碧の眼?」

 ヒラーがわりこむ。

 「もともとは天皇家の宝で持ってると海を自在に支配して天候も自在に操れるという時空遺物だ」

 横田が答える。

 「逮捕された韓国人が言ってきた。だから見つけたら天皇家に返す」

 しゃらっと言うダスティ。

 「いい心がけだ」

 感心するスパイク。

 「先が思いやられる」

 ため息をつく栗本とジェスロ。

 「サニーさん。しばらくダスティを借ります・・・」

 横田はすまなそうに言う。

 納得していないサニー。

 深いため息をつくチャドとマイルス。

 「ありがとう」

 ダスティは横田にハグすると破顔した。



 その頃。カナダのオタワ

 オタワにある会議場に「アジア沿岸同盟」の代表達が顔をそろえていた。出席しているのはTPP参加国とASEAN参加国と南シナ海で領有権を主張している国々の代表達だ。

 TPP参加国の日本、カナダ、チリ、ベトナム、ペルー、ブルネイ、マレーシア、メキシコ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとタイ。最初は十一カ国だったが後からタイがくわわった。

ASEAN参加国はミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、シンガポールである。それとインドと台湾の代表が顔をそろえていた。

 「・・・なんで韓国は呼ばれていないのに勝手に出席しているのですか?」

 ブルネイ人の議長は口を開いた。

 「私はオブザーバーとして参加を打診した」

 小太りの韓国代表は答えた。

 「オブザーバーなんて呼んだ覚えはないですし、中国の小間使いで来たのですか?」

 カナダ代表がしゃらっと言う。

 「中国と韓国はぜんぜん違う」

 はっきり言う韓国代表。

 「同じじゃん。同じ穴のムジナだよね。中国よりも怪しい行動ばかりする」

 チリ代表がわりこむ。

 「そんな行動していません」

 きっぱり答える細身の韓国代表。

 「瀬取りをしているじゃないか」

 台湾代表が写真を出す。

 写真には大型船と小型船が横付けして荷物を積んでいる様子が映っている。

 「瀬取りしていません」

 しゃあしゃあと言う細身の韓国代表。

 「何しに来たのですか?お帰りください」

 メキシコ代表がわりこむ。

 「なんで同じアジアなのに我々だけ呼ばれないのか」

 声を低める二人の韓国代表。

 いきなり笑いだす代表達。

 「なんで笑うのですか!!」

 小太りの韓国代表が目を吊り上げる。

 「なんで?答えましょう」

 真顔になるシンガポール代表。

 ムッとする二人の韓国代表。

 「今の韓国があるのは一〇〇%日本のおかげじゃん!!おたくの国に魔物が来なくて時空異変が少ないのは日本が防波堤になっているからに決まっている!!」

 マレーシア代表は一喝した。

 「・・・なっ」

 「おたくの国は外交部も政治も失敗続きで他国を激怒させているし、通貨スワップでは騙すし、建物や橋、ダムを造るにもすぐ壊れるものばかりじゃないか!!」

 ラオス代表が声を荒げる。

 「いやちがう」

 血相変えて否定する二人の代表。

 「ちがうって何が?」

 ラオス代表は声を低める。

 「いやそんなことはない」

 否定する二人の代表。

 「おたくの会社が造ったダムはすぐに壊れたじゃないか」

 ラオス代表は声を荒げて写真を見せた。

 そこには欠陥だらけのダムと韓国の会社が引き上げる様子と決壊したダムが映る。

 黙ってしまう二人の代表。

 「もしも隣りに日本があれば韓国程度の発展はできたかもしれないし、中国に騙されることはなかったかもしれないし、南シナ海を中国に不法占拠される事もなかったかもしれない。おたくの海洋警察はひどいね。隊員のほとんどは水泳できなくてロクに取り締まりもやらない。日本の悪口を広める。そんな嘘つきと付き合いたくないね」

 フィリピン代表がビシッと指をさす。

 「言いたい事を言いやがって」

 韓国語でつぶやく小太りの代表。

 「何か言った?」

 オーストラリア代表が聞いた。

 「いや何も」

 首を振る二人の代表。

 「あなた方の国は裏でなんて呼ばれているのか知ってますか?」

 カンボジア代表が聞いた。

 「知りません」

 否定する二人の代表。

 「嘘つきで約束を守らない。すぐ日本の悪口を言ってウソを吹聴するって」

 ニュージーランド代表が指摘する。

 歯切りする二人の代表。

 「だからおたくに話す事は何にもないね」

 切り捨てるインド代表。

 「おかえりください」

 タイ代表がたたみかける。

 「不愉快だ」

 「このことを政府に報告してやる」

 目を吊り上げ二人の代表は捨てセリフを吐いて退室した。



 二日後。羽田空港

 一九三一年八月二五日に「東京飛行場」として正式開港して以来、日本最大かつ東京、首都圏を代表する空港で、二〇一七年の乗降客数では世界で四番目に利用の多い空港となっている。日本航空と全日本空輸、スカイマーク、ソラシドエア、AIRDOの国内線ハブ空港である。 年間の航空機発着回数は約三八万4千回、航空旅客数は約六六七〇万人でそれぞれ国内最大(二位はいずれも成田国際空港)。航空貨物取扱量は約八四・四万トンで国内第二位(一日あたり約二二四六トン。一位は成田国際空港)。定期乗り入れ航空会社以外のチャーター便やビジネスジェットの乗り入れも行われている。

天皇・皇族や内閣総理大臣などが政府専用機を使用する場合や、国賓や公賓が専用機や特別機で訪日する際はほとんどの場合、羽田空港を使用する。これは羽田空港の方が成田空港より都心に近く、沿道の警備が容易なためである。このため、専用施設としてVIP機専用スポット や旅客ターミナルビルとは別棟の中に設けられた貴賓室がある。

日本では数少ない二四時間運用が可能な空港の一つであるが、深夜から未明の時間帯にかけては国際線や貨物便が発着するのみとなっている。国内線の各旅客ターミナルビルの開館時間は、定期便の運航時間帯に合わせ、第一旅客ターミナル・第二旅客ターミナルとも五時ー 二四時ごろとなっている。国際線ターミナルビルの開館時間は二四時間である。

 入国ゲートから出てくるダスティ、栗本、ジェスロ、スパイク、ガーランド、ハリス、ヒラー、エミリー、ベラナ、横田、グロリアとジョセフ博士。

 「あれ?誰かいる」

 ダスティがゲートの出入口にいる数人の背広の男女に気づいた。

 「大使館スタッフのロイです。隣りはリズです」

 アメリカ人の大使館員は自己紹介した。

 「え?」

 「ワシとジョセフ博士はこれから重要な話し合いがあるからアメリカ大使館に行く」

 思い出したように言うガーランド。

 「僕とハリスは警視庁です」

 ヒラーとハリスがわりこむ。

 「私は東京にあるアコード日本本部に用事があってここで別れます」

 エミリーが口をはさむ。

 「私と横田とグロリアは横須賀基地だ」

 ベラナが口を開く。

 「一緒に東京観光じゃないんだ」

 つまらなさそうに言うダスティ。

 「ダスティ。くれぐれも迷子にならないように。ここはアメリカではない」

 念を押すベラナ。

 ダスティは深くうなづいた。



 同時刻。大井埠頭

 資材置き場周辺は立入禁止のテープが張られ数台のパトカーが止まっている。

 鑑識や警官達が忙しく行き交う。

 二人の男女の刑事は男性の遺体を見下ろす。

 「磯部さん。なんで俺達は呼ばれたんだ?」

 男性刑事が口を開く。

 「近松さん。それは私達が魔物対策課の刑事で亡くなった方はアコード隊員でマシンミュータントだったからよ」

 磯部と呼ばれた女性刑事は答える。

 「仏さんは胸を一撃か。相当な腕だな」

 遺体の胸の穴をのぞく近松。

 遺体の胸の穴からポンプやケーブル、配管、周辺機器が見える。

 「この人は潜水艦と融合しているみたい」

 免許証やアコードの許可証を見せる磯部。彼女はリモコンのような物を許可証のバーコードに近づける。すると潜水艦の種類と名前がリモコンの画像に出る。

 「伊号五十一型潜水艦?」

 首をかしげる近松。

 「伊号五十一型潜水艦はこれね」

 磯部はタブレット端末を見せる。

 

 伊号五十一型潜水艦とは、第一次世界大戦でのドイツ海軍のUボートの活躍に刺激され日本海軍は潜水艦の整備に乗り出した。本艦はそのうちの艦隊決戦に使用する大型の潜水艦である。一九一八年の八六艦隊案で計画番号S22として計画され、呉海軍工廠で一九二一年四月に起工、一九二四年六月二〇日に竣工。呉鎮守府籍である。

 伊号第五十一潜水艦は、大日本帝国海軍の潜水艦。艦級は海大I型(海大型は海軍大型の意味)で同型艦はない。海大型系列の潜水艦で最初の艦。また日本潜水艦で初めて水上機を試験的に搭載し発着試験を行った。一九四〇年に除籍、戦歴無し。


 「戦歴なしはありえないな。ミュータントで潜水艦なら太平洋戦争で戦ったハズだ」

 疑問をぶつける近松。

 「そこもアコードに聞かないとダメね」

 磯部は答えた。



 その頃。青瓦台(大統領官邸)

 執務室に入ってくる韓国軍の将校と閣僚。

 「崔瑛鉄大統領」

 閣僚の一人が口を開いた。

 「文明伯首相。我々は中国と一緒に太平洋進出計画を進めている。ガーランド元理事は「ゲートスクワッド」の召集を国連に要請している」

 新聞に目を通していた崔瑛哲大統領は顔を上げた。

 「時空の揺らぎが出現して小さな異変が起きています」

 中年の将校は答えた。

 「伊順琴参謀総長。我国はTPPだけでなくアジア沿岸同盟に入れてもらえない状況が続いている」

 腕を組む崔瑛哲。

 前政権は政府を私物化したうえに経済政策はあまりやっていない。今や経済は危機どころか二度目のデフォルトになる。だから反日で煽っていたのだ。

 「TPPに入るには全部の加盟国の申請の協議と市場を全部開放する事が含まれています。

 文明伯は説明した。

 「ハードルが高いな」

 ため息をつく崔瑛哲。

 加盟国の中には韓国が嫌いというだけでなく借金払えとか不満を持つ国々も含まれる。

 部屋に四人の男が入ってくる。一人目は主席補佐官で二人目は黒色の外套を羽織った男。三人目と四人目は紫色の皮膚に黒色のサイバネティックスーツに身を包んでいる。男女共にスキンヘッドで尖り耳、あごに三本の縦に入った溝の模様がある。

 「接触は無理でしたか?」

 黒色の外套を羽織った男は口を開く。

 「按山甫主席補佐官。誰かね?」

 崔瑛哲はたずねた。

 「楊由哲ソウル魔術師出張所の所長です」

 按山甫と呼ばれた補佐官は答える。

 「按補佐官。時空侵略者か?」

 伊順琴参謀総長の眼光が鋭く光る。

 うなづく按山甫。

 「フィランとシュランです」

 紫色の皮膚の男性は名乗った。

 「このさい力を借りよう。明日は中国の龍詠平主席と首脳会談だ」

 崔瑛哲は口を開く。

 「そうですね」

 文明伯はうなづく。

 「作戦を練ろう」

 崔瑛哲は腕を組む。

 歴代の大統領がみな最後は不幸な最後を迎えるのは知っている。平昌オリンピックは南北融和や日本ともうまくやっていたのに火器管制レーダー照射問題からおかしくり、国内外に問題は山積みで経済も危機を迎えている。でもそこはなんとか押し通すし、日本ならそれが許される。

 「では一緒に考えましょう」

 楊由哲は言った。



 東京にある首相官邸

 会議室に伊佐木昭弘総理を含む閣僚達が顔をそろえていた。

 「ガーランドさん。ジョセフ博士、マイヨーズ大使、ジェレミー大使、アコードの如月長官。ご協力ありがとうございます」

 伊佐木総理は口を開いた。

 「私達は小さな時空の異変に集まっただけです。アジアで起こっている事はイギリスやヨーロッパで起こると見ています」

 ジェレミー大使と呼ばれたイギリス人は小瓶に入った虹色の綿毛を出した。

 「イギリスでも蜃気楼が出るのですか?」

 ガーランドは聞いた。

 「兆候はないのですが時空異変の中心はアジアでとりわけ日本海と東シナ海、南シナ海で多く発生しています。韓国と中国が怪しい実験を繰り返しているせいでもあります。韓国は朝鮮戦争前から怪しい実験を繰り返している。その実験をアメリカの研究所に譲渡して時空異変が多く起こりその実験結果を中国と韓国に渡した。そして東日本大震災が発生して時空の揺らぎが南極点に出現した。時空侵略者が韓国か中国にいるのではないかと見ています」

 ジェレミー大使はいくつかの資料を見せる。

 どよめく閣僚達。

 「それが本当ならやる事は一つですね。歴史上何度もですが時空遺物を巡って戦争が起きています。時空遺物がほしいのは時空侵略者で彼らに入られた国は口車に乗せられて戦争を起こします」

 それを言ったのは四方田明防衛大臣である。

 「まだそうなるとは決まっていません」

 ジョセフ博士がわりこむ。

 「日露戦争ではロシアに時空侵略者が入り込んで日露戦争が起きました。太平洋戦争や第一次世界大戦やワーテルロー、カンナエといった大きな戦争に彼らがからんでいます」

 楠田紀夫統合幕僚長が口をはさむ。

 「確かにそうですね」

 納得するマイヨーズ駐日大使。

 「中国海警船が尖閣諸島付近の海域をよく出没しますし、潜水艦もわざとウロついている。そして中国軍の戦闘機は瀬取りの他国の哨戒機をわざと挑発する。瀬取りの船舶に北朝鮮の船でない船舶が紛れていると思っています」

 稲盛弘外務大臣が地図と船舶の写真を出す。

 写真には大型貨物船と中型貨物船といくつかの写真では漁船や中型タンカーといった船舶が映っている。

「日本政府としては「ゲートスクワッド」の力を借りたいと思っている。アジアで起きている事は北米大陸や南米大陸に普及します。日本が防波堤になっている」

 世界地図を出して日本地図を指さす伊佐木総理。

 政府としてもただ指をくわえて見ていたわけではない。今ある装備を改修したり離島奪還訓練や海洋安保、アジア沿岸同盟を作って中国だけでなく韓国の動向を警戒していた。案の定、韓国は火器管制レーダー問題だけではなく徴用工、慰安婦問題で数十社の日本企業から韓国にある資産を難癖つけて没収を始めた。数年前はそうでもなかったのに最近ではその病気がひどくなっている。それもあって海洋安保や軍事同盟で東シナ海や、南シナ海、日本海の監視をしていた。南シナ海や東シナ海のシーレーン防衛をしなければ日本にとって死活問題である。

 「それはアメリカでも似たような事が半年前に起きました。事件の中心にいたのはクレメンのクルップ社と飯綱開発がウオーデンクリフタワーをインスマスに造って邪神を復活させようとしたのが原因です。クレメンは刑務所ですが立花社長は逃亡。夜刀浦に潜伏しているかどこかに隠れているかのどちらかではないかと思います」

 ジョセフはモニターをつけて説明する。

 そこに東京タワーに似たタワーが映る。タワーと一緒にインスマス面の人達や半漁人たちも映っている。

 「夜刀浦に戻ったという様子はなく逃亡中であると見ています」

 黙っていた如月と呼ばれた男性が答えた。彼はアコードの長官である。

 「珍しいですね。日本人がアコードの長官なんですね」

 菅野善政官房長官が口を開く。

 「彼の先祖は一二〇〇年続く邪神ハンターの一族で彼は一番現状をわかっていると思って長官に推薦した」

 答えたのはガーランドである。

 「彼はガーランドさんの弟子だった事もあるし、先祖はゲートスクワッドにくわわっている」

 楠田統合幕僚長がわりこむ。

 同じく弟子にインスマス事件や琥珀の間を見つけたのが十三歳の少年ミュータントというのを聞いています。その子もゲートスクワッドメンバーに入れたのですね」

 伊佐木総理は声を低める。

 「彼は時空の異変や魔物の気配に気づくのが一番早い。感知能力も高い。ワシも安心して引退できるというものだ」

 笑みを浮かべるガーランド。

 「まだ引退しても困るのですが使えるものは何でも使わないとこの異変は解決できません」

 ジェレミー大使が難しい顔をする。

 「アメリカとしても米軍から何人かのメンバーをゲートスクワッドにくわえたいと思っている。アメリカだけでなく中国や韓国以外の他国からも打診があります」

 マイヨーズがうなづく。

 「日本政府としてはゲートスクワッドの力を借りて東シナ海や尖閣諸島、日本海で何が起きているのかを知りたい」

 伊佐木総理の眼光が鋭く光る。

 「我々もです」

 マイヨーズはうなづいた。


 

 その頃。

 エミリーは銀座にあるビルに入った。このビルにはいくつかの企業が入るテナントとそ魔術師協会、邪神ハンター、魔物ハンター、アコードの日本支部の事務所と宿泊所がある。いわば本部の役割をしていた。

 受付に先客がいた。

 「警視庁の近松と磯辺です」

 その男女は警察手帳を見せた。

 「警察が何の用ですか?」

 受付嬢がたずねる。

 「この伊号五十一型潜水艦のミュータントはここの所属だという許可証があったので来ました」

 近松は写真と許可証と身分証明カードを見せた。

 「勅使河原秀三さんですね」

 受付嬢が答える。

 「それ私の知り合いです」

 思わずエミリーがわりこんだ。

 「日本語うまいですね」

 感心する近松と磯辺。

 「以前日本に三年くらいました」

 エミリーが答える。

 「勅使河原さんと知り合いだったのですか」

 磯部が話を切り替える。

 「私に魔術を教えてくれた教官です。私はこのこの教官と一緒にいたポパース級潜水艦のミュータントを探しに来ました。私と一緒にFBI捜査官とガーランドさんとジョセフ博士と一緒に来ました」

 エミリーは写真を見せた。

 ポパース級潜水艦とそれと融合していた中年のアメリカ人男性が映る。


 ポーパス級潜水艦は、一九三〇年代後半に建造されたアメリカ海軍の潜水艦の艦級。ドイツUボートの流儀を取り入れた一連のVボートから一転して、アメリカ海軍が日本海軍潜水艦への対抗を視野に入れて建造した最初の潜水艦である。本級において採用された溶接による建造と空調の技術などは、後のガトー級潜水艦などの基礎となっている。本級を拡大改良してサーモン級が建造された。


「ガーランドって「旅する賢者」と呼ばれている方ですね。最近になって「ゲートスクワッド」の召集を国連に呼びかけているというのを聞きました」

磯部はあっと思い出す。

 「本当?」

 近松が聞き返す。

 「そうよ。私はFBIのヒラー捜査官とハリス捜査官と一緒に来た。あの二人もニューヨーク港で死体になって浮かんだこのポパース級潜水艦と行方不明になった勅使河原教官を探しに来た」

 エミリーがうなづく。

 「じゃあ警視庁に来てくれる?そのFBIと一緒に」

 磯部がポンと手をたたく。

 「そうした方が早い」

 うなづく近松。

 「協力するわ」

 エミリーは言った。



  「ねえ僕と一緒に失われた宝を探してよ」

 「え?」

 雷門の前で写真を撮っていたダスティは振り向いた。

 「君はダスティでしょ」

 少年は聞いた。

 「誰?」

 怪しむダスティ。

 見ると日本人女性と少年がいる。

 「僕は西洞宮(にしのとうみや)頼仁(よりひと)隣りは辰巳啓子博士」

 その少年は名乗った。

 「君は第五福竜丸と一緒にいるんだね」

 ダスティは指摘する。

 同じマシンミュータントならわかる。この少年は人間で隣りの女性は木造漁船と融合している。船名は「第五福竜丸」だ。第二次世界大戦後に建造された木造漁船で最初は「第七事代丸という名前でカツオ漁船だった。そして和歌山から焼津に来て「第五福竜丸」に代わってマグロ漁船になって昭和二十九年のあの日、太平洋のビキニ沖で操業していた彼女は多くの乗員と一緒に被爆した。帰国した第福竜丸は「はやぶさ丸」として東京水産大学に移籍になり被爆した久保山愛吉さんが半年後に亡くなった。「はやぶさ丸」に変えた彼女は放射線を浴びた影響で邪神ハンターの活動ができなくなり技術者としてアコードに在籍していたがある日、ひどく損傷した状態で夢の島のゴミ捨て場に捨てられていた。捨てられていたのを一般人の投書で知ったアコードは彼女を蘇生した。蘇生したはいいが高次脳機能障害と記憶障害があり大部分の記憶は消え、放射能障害、地図が覚えられない障害があり漁船としてもハンターとしても活動ができなくなり生活介助人がいなければ生活が出来ないという暮らしをしていた。彼女は第五福竜丸として昼間は第五福竜丸博物館にいる。終わるとアコード新木場支部に帰るという暮らしをしていた。

 「どうした?」

 駆け寄ってくるジェスロ、栗本、スパイク。

 「この二人が失われた宝を一緒に探してというんだけど本当なの?」

 ダスティが聞いた。

 「この子は・・西洞宮頼仁さまだ。もう一人は第五福竜丸の辰巳博士」

 栗本が気づいた。

 「本当?」

 聞き返すジェスロ。

 「来て案内するよ。話は皇居で」

 頼仁は手招きした。


 「本当に君は皇族なんだ」

 声をそろえる栗本とダスティ。

 黒塗りの公用車は皇居の門をくぐった。

 「正真正銘のプリンスか」

 感心するスパイクとジェスロ。

 公用車は皇宮警護官の官舎の駐車場に停車した。ダスティ達は頼仁の案内で官舎の会議室に入った。

 「ここなら誰も聞かれない。盗聴器もない」

 執事の黒沢は口を開いた。

 「日本の皇族が我々に何の用ですか?」

 ジェスロはたずねた。

 「明日、アメリカ大統領が来日する。三日間滞在してどこにも寄らずに帰国する。理由は「ゲートスクワッド」の共同宣言だ。日本ではアメリカよりも時空の小さな異変が続いている。そして無害な魔物が急に暴れたり、結界を誰かが壊したりするからね」

 皇居周辺地図を出す頼仁。

 「そういえば日米首脳会談にセリス大統領が来日するって新聞にあった」

 あっと思い出すスパイク。

 「なんで警官がたくさんいるのか不思議だったんだ」

 納得するダスティ。

 「時空異変の原因は中国と韓国にあると見ています」

 日本海周辺地図を出す頼仁。

 「僕は留学に来ただけで何も知らない」

 困惑するダスティ。

 「ガーランド元理事長は国連に「ゲートスクワッド」の要請を出した。君は彼と一緒にいるし時空武器を持っている。僕も時空コンパスを持っている。このコンパスは代々受け継がれている」

 頼仁は菊の紋章がついたコンパスを出す。

 時空コンパスを出すダスティ。

 両方の針はクルクル回っている。

 「辰巳博士と頼仁さまのご関係は?」

 栗本はたずねた。

 「僕が第五福竜丸博物館に行ったんだ。彼女が夢の島に捨てられる前はアコードのハンターで調査隊のリーダーだった。リーダーをやりながら時空遺物の管理をしていた。一九六七年のある日、ひどく損傷した状態で夢の島に捨てられていた。蘇生したのは氷川丸と伊号五十一型潜水艦、ポパース級潜水艦、ガトー級潜水艦のミュータントだ。ポパース級潜水艦のミュータントは非常勤講師として学習院の先生をやっていて僕にロシア語や英会話を教えてくれた。その人は東京港で死体になって発見されているのをニュースで見た。辰巳博士は手紙ももらっている」

 訴えるように言う頼仁。彼は手紙を出した。その手紙はロシア語と英語で書かれている。

 「読めるの?」

 ダスティが聞いた。

 「私が翻訳しました」

 黒沢執事が答える。

 「僕にも手紙が来たの。でも捨てられてから記憶がないから英語もロシア語も読めないし、捨てられる前の記憶もない。だから何をやっていたかを知りたい」

 辰巳は真顔になる。

 「知らなくてもいいかもしれないよ」

 ジェスロが声を低める。

 「敵は「琥珀の眼」「虹の眼」という時空遺物を探している。それはもともと皇室の宝で伊勢神宮や出雲大社にあった物だった。それがあれば海や天候を操れて時空の揺らぎも出せるという力がある。それは時空武器を持っている。それに君は瞳の色がちがうオッドアイ。僕も違うんだ」

 コンタクトレンズを外す頼仁。

 「もしかして片方が紫色」

 声をそろえるダスティたち。

 うなづく頼仁。

 「僕は小さい頃からマシンミュータントかそうでないかを見分けられた」

 頼仁はコンタクトレンズを専用ケースにしまう。

 「だから声をかけた?」

 ダスティが聞いた。

 「ガーランド元理事長が来るのは知っていた。それと一緒にあなた方が来るという情報は如月長官から聞いた。僕と彼女をゲートスクワッドに入れてよ」

 頼仁が身を乗り出す。

 「無理だ」

 はっきり言うスパイク。

 「なんで!!」

 目を吊り上げる頼仁と辰巳

 「天皇陛下と日本政府にどう説明するんだ」

 栗本は机をたたいた。

 「僕がいないとその宝は反応しない」

 食い下がる頼仁。

 「じゃあ君もおいでよ」

 しゃらっと言うダスティ。

 「バカな。巻き込むのか」

 スパイクがわりこむ。

 「僕達はもう巻き込まれている。僕の英会話やロシア語を教えたミュータントは誰かに殺害されたのをニュースで見た。彼から手紙をもらった。内容は彼は昔、第五福竜丸と一緒にいて紺碧の眼や虹の眼の手がかりを隠したという内容で危険が迫っているというもので、中国と韓国のスパイはそれを狙っている。なんで狙うのかというと中国は一帯一路や海のシルクロードという政策を打ち出して南シナ海やヨーロッパに進出。中国軍は太平洋に進出をしようとしている。そのために沖縄や先島諸島がほしい。韓国は韓国で対馬や隠岐、佐渡島がほしい。留学生というスパイを使って情報収集している」

 語気を強める頼仁。

 「まだ戦争になってない」

 ジェスロが声を強める。

 「八年前に東日本大震災が起きた。その直後に南極点に時空の揺らぎが現れた。時空侵略者が侵入したと世界の王室は見ている。時空の揺らぎが発生してから南極クルーズやツアーは中止が相次いでいる」

 辰巳が南極の地図を出して説明した。

 「ツアー?クルーズ?」

 聞き返すダスティ。

 「知らないの?時空異変が続いていて危険だからツアーやクルーズは行なわれない。これが続くと世界一周レースも中止になるよ」

 辰巳は南極点を指さしながら言う。

 「そんな・・・」

 絶句するダスティ。

 「もしも時空侵略者が入っているならやることは一つだ。戦争になる。歴史が証明しているじゃないか」

 目を吊り上げる頼仁。

 「まだ情報は入っていない」

 はっきり言うスパイク。

 「僕はゲートスクワッドに入る」

 身を乗り出す頼仁。

 「無理だ」

 ジェスロが首を振る。

 「ねえ。東京案内して」

 唐突にわりこむダスティ。

 「いいよ」

 うなづく頼仁。

 「彼と辰巳を入れないと僕はゲートスクワッドにくわわらないよ。僕の時空を感知できる力がなければ時空侵略者も時空異変の中心も見つからないよ」

 ドスの利いた声のダスティ。

 「本当に聞き分けのない子供が」

 悪態をつくスパイク。

 「君に似てきたな」

 あきれるジェスロ。

 ムッとするスパイク。

 「じゃあ東京観光に行こう」

 ダスティは言った。



 中国の中南海。

 北京市街の一角に人工池と南海に隣接して周囲を紅く高い壁に囲まれた広いいっかくがある。そこは中南海と呼ばれていた。

 その奥にある応接室に数人の閣僚が顔をそろえていた。

 「アメリカが仕掛けた貿易戦争のせいで国内の企業の倒産と失業者が増えています。チベットとウイグルの暴動の回数が増えています。抑えるのが難しいです」

 全国の公安部門を統括する武柵碁公安部長はため息をついた。

 アメリカが中国向けの物資に二五%の関税をかけているのだ。ただでさえ失業者が増えているのにもっと増えて労働者のストライキが頻繁に発生してくわえて押さえていたチベットやウイグルも暴動の回数が増えた。それだけでなく企業の倒産も増えて外国企業が撤退も増えた。

 「やることは一つです」

 安孫和首相がわりこむ。

 「尖閣諸島を占領かね?」

 ジャスミン茶を飲む龍詠平国家主席。

 「本気で考えてますか?」

 外交部長の孫零端が首をかしげる。

 「小日本は日米安保だけでなくカナダ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリス、フランスとも海洋安保でつながっており、瀬取り監視という名目の軍事同盟を結んで七カ国の駆逐艦と一緒に監視活動をしています。哨戒機も一緒に飛んでいるのでうっかりすると危険です」

 呉孫健党軍事委員副主席が注意する。

 「それに明日、アメリカのセリス大統領が来日します。新天皇の最初の国賓がセリス大統領でゴルフや大相撲を楽しんでアコード支部も視察をするそうです。日米共同宣言を出したらすぐにアメリカに帰国します」

 孫零端外交部長は日程を見せた。

 「警備も厳しいです。横須賀基地にはロナルドレーガンの他に空母や駆逐艦のミュータントが待機しています。大統領のSPや取り巻きのハンターも高レベルです。それは日本の首相にも言えます。東京だけでなく周辺の地域も警備が厳しくなっているので大統領が帰国してからの行動になります」

 安孫和首相が東京周辺の地図を指さしながら説明する。

 「明日は確か、韓国の崔瑛哲大統領が北京にやってくる」

 呉孫健が思い出す。

 「口先ばかりで約束を守らない連中が何しに来るのやら」

 肩をすくめる武柵碁。

 「いい話とはなんなのか聞こうじゃないか」

 龍詠平主席は腕を組む。

 「追い払わないのですか?」

 驚く安孫和首相。

 「話次第だな。話は聞いてやる。それだけだ。空っぽなら追い出すだけだ」

 龍詠平主席は言った。



 その頃。警視庁

 「いや~すまないねえ。人手がいなくて」

 魔物対策課の課長の田中譲は口を開いた。

 「事件ですか?」

 近松が聞いた。

 「捜査一課と二課に呼ばれて行っている」

 田中は答える。

 「FBIの魔物対策課も同じようなものだから平気です」

 ヒラーがわりこむ。

 「この方は?」

 ハリスが聞いた。

 「資料課の名取です。普段は地下にある資料課にいます。FBIからお客さんが来るというのを聞いて見に来た」

 名取は自己紹介する。

 「この奥にも資料があるみたいだけど」

 エミリーが指摘する。

 「ここのは一部です。大部分は地下三階にあるんだ」

 図面を出す名取。

 「大半は未解決のままになっている」

 磯部がわりこむ。

 「FBIにも似たような部署はある」

 ヒラーとハリスがうなづく。

 「ガーランド元理事長が国連に「ゲートスクワッド」の要請をしているのは本当ですか」

 名取は話を切り替える。

 「・・・本当だ」

 うなづくヒラー。

 「FBIも協力するつもりで来ている」

 ハリスが口を開く。

 「大井埠頭で見つかったポパース級潜水艦のミュータントは・・・ジョージ・ウエストはアメリカで死んだ勅使河原教官と同僚だった」

 エミリーは写真を出した。

 「旧式の潜水艦同士が相棒を組んでいてもおかしくわないですね。「この五〇年は本格的な調査隊は組まれてはいない」

 名取は辞書のように分厚い資料を何冊か出した。

 「そうですね。ただ八年前に東日本大震災が発生。それにともなって南極点に時空の揺らぎが七十二年ぶりに現れた。それを最初に通告してきたのは昭和基地だ。あそこにも邪神ハンターや魔術師が派遣されているからね」

 近松は写真を出した。

 そこには直径一〇〇メートルを超える黄金色の光が映っていた。

 「もともと割り当てられた場所は魔物の巣だったからね」

 磯部がわりこむ。

 終戦後の日本は敗戦国のレッテルを貼られて国連の会議にも出席させてもらえず、相手にもされない状態が続いていた。そして第一次観測隊は誰も到達できない場所を割り当てられられた。行ったら文字通り魔物の巣だったがそれを退治して昭和基地を造った。

 「元々の原因はアメリカの研究所と米軍がやってきた実験がきっかけだけどもっと前から韓国がおかしな実験を朝鮮戦争前からやっていた。韓国は得意の知らないフリと嘘八百で言いくるめて実験結果を米軍に渡した。実験に興味を持った当時の政府と米軍は核実験を繰り返して時空のひずみが出現。時空の穴が現れるようになった。そして研究所の所長が何者かに殺害されて実験は中止に。ガーランドはある者達に依頼して調査隊を作って調査していた。私の曽祖父のクロウ・タイタスを含む調査隊は曽祖父が一九六四年に行方不明になって中止になった。そして二回目は辰巳博士が率いる調査隊。彼女は第五福竜丸と融合している」

 エミリーは写真を出した。

 「あの福竜丸がミュータントなのは初耳だ」

 声をそろえる近松、磯部、田中、名取。

 「彼女は一九六七年のある日、行方不明になって夢の島にひどく損傷した状態で捨てられていた。そして三〇人いた仲間も殺害されて港で死体になって浮いていた。彼女が夢の島に捨てられているのを知ったのは一般人の投書だった」

 エミリーはいくつかの写真を出した。

 そこには夢の島のゴミ捨て場に半分沈んだ状態の木造漁船や夢の島の埋め立ての様子が映っていた。漁船の船名は「はやぶさ丸」だったがそれを市民団体とアコードが引き上げ、氷川丸、ジョージ、勅使河原教官が蘇生の魔術をかけている様子が映っていた。

 「生き返った彼女は記憶がなくなっていた。電子脳もひどく損傷してからね。放射能病もそのままで人間の障害者と変わらない。高次脳記憶障害、放射能病、地図も記憶できない彼女は生活介助人がいないと生活できない。邪神ハンターの活動も漁船としても働けない彼女は技術者枠でアコードは入れている。あ第五福竜丸博物館と新木場支部を造ったのも彼女がそうしないと生活ができないからね」

 エミリーは重い口を開いた。

 「重度の障害者と変わらないな。そんな障害者をゲートスクワッドには入れられない」

 近松がはっきり言う。

 「あくまでも協力者よ。彼女の調査隊には勅使河原教官とジョージ教官だけでなくロシアの潜水艦のミュータントもいたけど連絡が取れていない」

 エミリーが声を低める。

 「ロシア軍の所属の潜水艦だと教えてくれないだろう」

 困った顔をする名取。

 「彼女の仲間には行方不明になったメンバーもいる。やったのは国家か政府を裏で操っている連中。でも確かじゃない。でも半年前にその片鱗が見えた。インスマスの魚人を煽っていたのもタワーを造って騒ぎを起こしたのは立花とクレメンだった。クレメンは刑務所で会社はアメリカ政府の管理下に置かれたが立花は逃亡した」

 エミリーは立花とクレメンの写真を出す。

 「その立花は日本に帰国していない。夜刀浦にもいない」

 はっきり言う近松。

 「アメリカ国内にもいない」

 ハリスが言う。

 「行き詰まり感があるな」

 ため息をつく近松。

 「ガーランド元理事長と一緒にダスティ少年が来ているね」

 それを言ったのは名取である。

 「そうよ」

 うなづくハリス。

 「入国管理局に知り合いにいてね。テロリストや怪しい人物が入ったら教えてくれる」

 名取が口を開く。

 「それは心強い」

 ヒラーとハリスが声をそろえる。

 「入国管理局と東京税関、横浜税関と麻薬取締部にもいるんだ」

 笑みを浮かべる名取。

 「紹介して」

 ヒラーが思わず身を乗り出す。

 「ゲートスクワッドに協力したい」

 近松が声を低める。

 「わかった。一緒に来て」

 エリスは言った。



 その夜。海上自衛隊横須賀基地。

 会議室に入ってくるダスティ、頼仁、辰巳、スパイク、ジェスロ、栗本。

 「すごいたくさん来ているね」

 驚きの声を上げるダスティと頼仁。

 「来たのか」

 近づくベラナ、グロリアと横田。

 うなづくダスティ。

 「国籍もさまざまですね。ロシアの駆逐艦や潜水艦のミュータントまでいるよ」

 ダスティが気づいた。

 みんな国籍はバラバラだが何と融合しているのかはわかる。現役で活躍する艦船ばかりである。

 いないのは韓国と中国だね。当然だけど」

 頼仁がわりこむ。

 「中国と韓国は騒動の中心だからね」

 グロリアが指摘する。

 「海上保安庁やアメリカ沿岸警備隊とロシアの沿岸警備隊もいるんだ」

 頼仁が指摘する。

 「君はF-35と融合していてアルビノのオッドアイなんだ」

 目を輝かせるダスティ。

 「僕は蜂須賀正弘です。三沢基地から来ました」

 自己紹介するアルビノの自衛官。

 「君はオッドアイなんだ」

 二人の女性自衛官に近づく頼仁。

 「雅楽代(うたしろ)恵美です護衛艦「あしがら」と融合しています」

 「私は幹部候補生の京極裕美です。護衛艦

「まや」と融合していて習熟訓練の途中で来ました」

 二人の自衛官は名乗った。

 「君もオッドアイで潜水艦なんだ」

 ダスティが女性自衛官に近づく

 「呉基地から来ました日紫喜(日紫喜)です。潜水艦「うんりゅう」と融合しています。隣りは島津と瀬古です。潜水艦「みちしお」と「くろしお」と融合しています」

 自己紹介する日紫喜。

 「京極や雅楽代という苗字も日紫喜という苗字も珍しいですね」

 わりこむ頼仁。

 「よく言われます」

 顔を見合わせる三人。

 「僕はダスティです。よろしくお願いします」

 ダスティはあいさつする。

 「真島博義です。隣りは倉田と松田」

 紹介する真島。

 「護衛艦「せとぎり」と「はるさめ」松田さんがイージス艦「みょうこう」でしょ」

 わりこむ頼仁。

 「正解」

 真島は答えた。

 「頼仁さま。ここにはあまり来ない方がいいですよ」

 大柄の海上保安官が近づく。

 「君は?」

 「海上保安庁から派遣された西山です。俺は海保のミュータントの隊長をしている。隣りは本宮(もとみや)省吾と平野洋子だ。俺達は石垣島海上保安部から来た」

 西山は自己紹介する。

 「オッドアイなんですね。それも片目が琥珀色ですね」

 あっと声を上げる頼仁。

 「よく言われます」

 困惑する本宮。

 「俺はアレックス・バルキン。隣りはベンジャミン・リッグスとローズ」

 わりこむ米軍兵士。

 「巡視船バーソルフで君は空母フラッグとバージニア級潜水艦だ」

 目を輝かせるダスティ。

 「客船のミュータントがいるのね」

 辰巳が指摘する。

 「私は二コール・スコッツフォールドで隣りがナタリー・フォルネウスとスコット。私が飛鳥ⅡでアイリスがQE2でスコットが「セレブレティミレニアム」と融合している」

 自己紹介する二コール。

 「よろしくお願いします」

 辰巳は頭を下げる。

 「こちらもよろしく」

 三人は声をそえろえる。

 「日本てアメリカだけでなく他の国と本当に海洋安保でつながっているんですね」

 驚きの声を出すダスティ。

 話には聞いていたけどカナダ、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、インド、フランスの艦船のミュータントがいる。

 「ロシア軍とも海洋安保でつながっているの?」

 ダスティが聞いた。

 「つながってないさ」

 それを言ったのは真島である。

 「俺達はロシア政府の要請で来た」

 大柄のロシア人将校が口を開く。

 「そうなんだ。君はオッドアイなんだね」

 ダスティが身を乗り出す。

 「よく言われます」

 困惑するロシア人将校。

 「僕は西洞宮頼仁。よろしくお願いします」

 頭を下げる頼仁。

 「俺はウラジミール・スカラゴフ。駆逐艦「アドミラル・チャバネスク」と融合している。隣りはオニール・アポドロフ。駆逐艦「スラヴァ」と融合。隣りはザカリンとカリナ・ポチョムキン兄妹。アクラ級潜水艦と融合している。ロシア沿岸警備隊からパイン・ニコルヴァが参加している」

 ウラジミールと名乗ったロシア人は自己紹介する。

 「よろしくお願いします」

 「こちらこそよろしくお願いします」

 ウラジミール達と握手する頼仁。

 「よくできたプリンスね」

 不満そうに言う女性の米軍兵士。

 「気にするなローズ」

 リッグスがわりこむ。

 「そうね」

 ローズと呼ばれた米軍兵士はうなづく。

 「カナダから来たノースです」

 「オーストラリアから来たレックスです」

 「ノルウェーから来たローラン・アイザックスです」

 「ニュージーランドから来たヴァルです」

 「インドから来たマッシュです」

 「フランスから来たマリーナです」

 「イギリスから来たモンゴメリー・ヴィヴィアンです」

 「台湾の海岸巡防署から来た奨遜和と周碌英です」

 十人の男女は名乗った。

 「エミリー、ハリス、ヒラー来たんだ。その人達は?」

 ダスティが駆け寄る。

 「捜査の成り行きで合流した。警視庁魔物対策課の近松と磯辺。資料課の名取です」

 近松は名乗った。

 部屋にガーランド、アコードの如月長官と何人かの閣僚や自衛隊将校が入ってくる。

 空いている席につくダスティ達。

 「四方田防衛大臣。楠田統合幕僚長。防衛出動ですか?」

 真島が口を開いた。

 「それは出ていない。明日はアメリカ大統領が来日する。そして韓国の崔大統領は中国の龍主席と会談をする。動きはない」

 四方田防衛大臣は答えた。

 「日米共同宣言で正式に「ゲートスクワッド」の要請を出すことになっている。あなた方を派遣した軍の上官や司令官とは何度か協議を重ねていた。自衛隊や日本政府は「ゲートスクワッド」の力を借りたい」

 楠田統合幕僚長は説明した。

 「僕達はそのためにやってきた。アジアで起きている事はいずれヨーロッパにも普及すると見ている」

 ローランが流暢な日本語で口を開いた。

 「ゲートスクワッド部隊は護衛艦「かが」になる」

 四方田大臣はスクリーンに映像を出す。

 「甲板の造りが空母に似ている?」

 聞き返す京極と雅楽代。

 「正確には少し改良した。艦内には同じくゲートスクワッドの要請で集まった陸自の一〇式戦車、水陸強襲車、16式戦闘機動車と空自のP-1哨戒機のミュータントがいる」

 四方田は写真を出した。

 画面にプロフィールと融合している車両や機種が映し出された。

 「それとメンバーに金属生命体のソランがくわわる。彼は時空侵略者を追ってここにいる。護衛艦「いずも」と融合。彼も「しなの」にいる。何もなかったら帰るつもりだ」

 如月長官がわりこむ。

 どよめく真島達。

 「時空侵略者はいるのですか?」

 ウラジミールがたずねた。

 「そこはまだわからない。時空の異変が小さいものが多く発生しているならいつ入ってきてもおかしくない」

 四方田が答える。

 「先の大戦ではワシらが戦ったが今度はおまえたちが人類やこの星を守る番だ」

 ガーランドが笑みを浮かべる。

 「我々の話は以上である」

 四方田は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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