ダスティとオッドアイたち 失われた紺碧の眼と虹の眼

ペンネーム梨圭

プロローグ

 どこかで小さな時間のひずみが発生している。でもどこかはわからない。

 あの琥珀の間事件から半年が経つ。ここでは時間のひずみや時空の歪みは起きていない。むしろ小さな歪みがどこかで起きている。世界地図をチラッと見る。たぶん太平洋の向こうで起きている。なんでそう思うのかわからないが直感である。

 僕はダスティ・コッパーボトム。十三歳である。アメリカの片田舎ノースロップジャクソンフォードの農場で働いている。一番近い都市はボストンであるがこのここの村はグーグルのストーリートビューにも載らないような田舎だ。観光客はいない。

 ダスティは時空コンパスを出した。

 去年の琥珀の間事件でガーランドからもらったコンパスである。ただのコンパスではなく時空のひずみや穴、歪みを感知する不思議なアイテムだ。

 世界地図を広げて時空コンパスを近づけると針はクルクル回り、やがて東を指した。

 彼は日本に近づけると針はピタリと止まる。

 日本には興味ある。アニメやコミックの聖地でボストンやロスサンチェスの町のコミックマーケットに行った事ある。アメコミやマーベルと並ぶ程大人気だ。でもそこに時空の揺らぎがあるなら調査したい。でも自分にはお金がないが留学制度は利用できるかもしれない。

 ダスティは下宿先を出る。

 この寮は農場を経営する大家が所有する下宿先である。自分はここで働いている。

 格納庫にいるサニーやチャド、マイルズが振り向いた。

 「ねえ、サニー」

 「何?」

 「僕、日本に留学したい」

 思い切って切り出すダスティ。

 「本気?」

 驚きの声を上げるサニー達。

 「日本は遠いぞ。一〇八〇七キロ離れている」

 奥の部屋から出てくるレクター。

 「わかってる。だって一年半後には東京オリンピックがやってくる」

 目を輝かせるダスティ。

 「知っているわよ。シンボルマークやそれに関するイベントはボストンやロスサンチェスでもやっている。それだけじゃないよね」

 ジロッとみるサニー。

 「ジャンク屋は普通にここにもあるし、日本製品は高品質で高性能で中古でも品質がいい。中国製と韓国製は粗悪ですぐ壊れる」

 マイルズとチャドがわりこむ。

 「だってあなたはよくコンパスや時空武器を眺めているもの」

 核心にせまるサニー。

 「よくアコードの出張所に行っている」

 口をはさむチャド。

 「日本に小さな時空の歪みや時空の異変が起きているから調べたい」

 真剣な顔で言うダスティ。

 「マジかよ」

 顔を見合わせるチャド、マイルズ。

 「時空のひずみや異変は高レベルの魔術師や邪神ハンターでも感知でなきない。なら僕が直接行った方が早い」

 はっきり言うダスティ。

 「簡単に言うな。知り合いはいるのか日本に?」

 あきれるレクター。

 「いない。でもベラナやグロリアや横田さんがいる」

 食い下がるダスティ。

 「そんなお金があるわけがないでしょう」

 あきれるサニー。

 「それなら私達が出しましょうか?」

 不意に声が聞こえて振り向くダスティ達。

 五人の黒髪の男女が近づく。

 「日本人?」

 怪しむチャドとマイルズ。

 「韓国人と中国人でしょ」

 しれっと言うダスティ。

 同じマシンミュータントならわかる。融合している乗物も人種も気配でわかる。

 「韓国軍のイージス艦と戦闘機二機と中国軍のイージス艦と空母だよ」

 チャドとマイルズが指摘する。

 「韓国と中国ならいくらでも留学費用を出しますよ。一緒に「紺碧の眼」を探しませんか?」

 女性の韓国人が口を開く。

 「やだ」

 断るダスティ。

 五人とも心の中は真っ黒である。それに韓国人はアメリカでも評判はよくない。嘘つきですぐ日本の悪口を言う。中国とは貿易摩擦で高い関税をかけており、南シナ海や東シナ海に出没して太平洋に海洋進出をしようとしているし、南シナ海には勝手に基地を造っているのは知っている。

 「君は韓国軍のイージス艦と融合しているけどその船はハリボテで欠陥品だね。F-35とF-15だけどそれも欠陥があるね。F-35は韓国には技術力なし、武装なしの能なしで整備と修理は日本だからポンコツだね」

 ダスティは品定めするように言う。

 「このガキが・・」

 韓国人男性は歯切りする。

 「そこの中国空母はポンコツでイージス艦も性能がよくないね」

 しれっと言うダスティ。

 「こいつを連れて行くぞ!!」

 くだんの韓国人男性は目を吊り上げた。

 「FBIである」

 「アコードである」

 鋭い声が聞こえて振り向く男女達。

 「ヒラーさんハリスさん!!」

 声を弾ませるサニー達。

 「べラナ。グロリア、横田さん」

 目を輝かせるダスティ。

 五人とも琥珀の間事件で知り合いになり、時々連絡を取っている。

 「韓国軍と中国軍のイージス艦と空母と戦闘機がなぜいる?」

 べラナはドスの利いた声で聞いた。

 「こいつ日本人のフリしているけど日本人じゃない」

 指をさすダスティ。

 「不法入国で逮捕するが」

 ヒラーは銃を構える。

 舌打ちすると韓国人と中国人達。彼らはおとなしく連行されていった。

 

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