R-1ぐらんぷり2020


 どうも、この章ではお久しぶりです。日本一遅い賞レースの感想です。

 去る、二〇二〇年三月八日、R-1ぐらんぷり2020がフジテレビ系列で開催された。新型コロナの猛威が振るい始めたのため、初めての観客0人という状況下であった。






Aブロック 1人目 メルヘン須長  「SNS事件簿」 2P

 ドラマ「科捜研の女」の主演女優・沢口靖子さんに扮した須長さんが、フリップでSNS上の事件簿を紹介していくというネタ。

 パリピのパターンでは、女性同士の緩い褒め合いのやり取りを、「つまらないわ」とばっさり。女性のアイコンで、プロフィールにお笑い好きだと書いているアカウントの3割はおっさんとずばり。


 新鮮に感じられたのは、新人声優も標的に挙げていたところだった。はっきりと「ブス」と言い、「自信がない」「かわいいから自信出して」という新人声優とファンとのやり取りを、「地獄ね」と突き放す瞬間が面白かった。

 フリップの絵が、遠慮なく描かれているので、非常にインパクトがある。また、SNS上のやり取りやプロフィールを読み上げている時は別の声になっているので、沢口さんのものまねでぶった切る瞬間との緩急があった。


 オチは、次回予告で「質問箱をやっているのは、バカ」……この「バカ」までの間で、何を言うのか分からず、その分吹き出してしまった。

 SNSという匿名の世界でのやり取りを、実際の本人の美醜を見てしまうという、中々意地の悪い目線のネタだった。






Aブロック2人目 守谷日和  「取り調べ」 4P

 隣家の事件について、取り調べを受ける男性。事件とは関係ないのにこうして取り調べを受けるのは可笑しいと困惑しながらも、自らのアリバイを説明する。

 飲み会に行ったというその時の再現、第一声は「かぁー疲れたねぇー」……男性は、落語好きだった。普通だった喋り方から、180度変わってしまう落語家風な喋り方に噴き出してしまう。


 居酒屋での隣人との会話では、きちんと右向きと左向きで人を演じ分け、うどんをすする場面では、固定電話の受話器を箸のようにしてすすり、とうとう「時そば」のようにお釣りを誤魔化してしまうと、彼の落語好きは堂に入っている。

 こちらからは見えないが、取り調べをしている刑事ものってきて、事件とは無関係の肉まんを食べる場面の再現まで求めてくる。男性は、しっかりと再現した上で、「やる意味あります?」とツッコんでくる。


 最終的に、男性は机の上で正座させられて、隣人の部屋に行ってみたが、留守だったという瞬間を再現させられる。男性は困りながらも、羽織っていたシャツを脱いで、無意識に乗っかっている。

 彼は、警察から「重要亭参考人」として、明日も呼ばれることになる。しかし、隣家の事件ではなく、実はうどん屋でお釣りを誤魔化していたことによって、逮捕されてしまった。 


 取り調べの再現が、落語のようなクオリティというボケが、加速度的に盛り上がり、多くの人が想像する落語あるあるを巻き込みながら爆笑を起こしていく。

 初っ端からインパクトが強い一点突破のボケだが、パターンが様々あり、パワーワードもあり、伏線もあり、最後まで楽しめた。






Aブロック3人目 SAKURAI  「オリジナルソング」 9P

 ギターを弾きながら、「伝えたいこと」を歌うSAKURAIさん。最初の歌は「おなか、首、背中、両足」……これらは、SAKURAIさんがお風呂で体を洗う順番。

 次は、「携帯、ハサミ、使い捨てカイロ」などの、燃えるごみとして出せないものだった。


 このように、SAKURAIさんの歌は、何かの順番や何かの括りを歌いあげていくものである。「これは何だ?」と間奏の間に頭をフル回転させても、正解には絶対に辿り着けないし、聞いた瞬間脱力してしまう。

 個人的には、「長崎、佐賀、栃木、三重、福島」の、モロヘイヤの生産量5~10位の歌が好き。これを覚えていても、どこにも使えなさそうである。なぜ、モロヘイヤなのか、なぜ、ベスト5ではないのかなど、色んな所が気になってしまう。


 一度聞いただけで耳に残るメロディーに乗せて、軽やかに歌いあげられる、謎めいた歌詞。挙げられたものの共通点と順番が分かった瞬間、「なるほど!」と納得しつつ、笑ってしまうというこのバランス感覚。

 「徳川将軍の肖像画の顔の向き」「ビーチボールが根付いていない国」「米米CLUBの主要メンバー」が、今回で流れた歌の「正解」なのだが、どれも重箱の隅をつつくような絶妙さだ。もっともっと聞いてみたくなった。






Aブロック4人目 マヂカルラブリー野田クリスタル 「ももてつ」 15P

 違法な方法で無料の桃鉄をダウンロードした野田さん。しかし、そのゲームは、「桃太郎鉄道」ではなく「太ももが鉄のように硬い男、てつじ」だった。

 とりあえず、プレイしてみることに。それは、プレイヤーが、太ももだけが鉄になっているてつじを動かして、敵キャラの弾丸を太ももで跳ね返しながら進んでいく横スクロールアクションゲームだった。太ももより下の、普通の足に当たるとゲームオーバー。


 野田さんは「やりがいしかない」とのめり込み、ジャンプしてみたり、リズムを覚えてみたりと、様々な攻略を試していく。しかし、敵がめっちゃ来ることで、あえなくゲームオーバーしてしまう。

 頑張りすぎて疲れた野田さんは、課金をすることを決意。しかし、「全鉄モード」の課金額は2480円とは書く、その上、戻るボタンが無いので購入することしかない。


 全身鉄のモードのてつじで、無双する野田さんだが、あっという間に課金時間は切れて、太ももすら普通の男、てつじになってしまう。すぐに撃たれてゲームオーバー……「お金返して!」というセリフと野田さんの変顔でオチ。

 タイトル詐欺で釣られて、マウスで描かれたようなゆるい絵で、意外と高いゲーム性という、このゲーム自体のツッコミどころが非常に高いのだが、戸惑いながらも、だんだんハマっていく野田さんの一言一言が痒い所に手が届く。


 『勇者ああああ』で見て、大衝撃と大爆笑を起こした「野田ゲー」が、こうしてR-1ぐらんぷりの大舞台で旋風を巻き起こしているという時点で、私は大満足だった。正直、「太ももが鉄のように硬い男、てつじ」も初見ではないけれど、何回見ても面白し、野田さんのコメントでも別の面白さが出てくる。

 ぶっつけ本番なので、ゲームのバグやモニターなどの不具合が起こってもおかしくないところだが、何事もなかったという運の強さもあった。 







Bブロック1人目 ルシファー吉岡 「休憩室」 3P 

 バイトの休憩室、ルシファー吉岡さんが演じる男性がテーブルの上に置いた缶コーヒーが、同じバイトの女性の缶コーヒーとどっちがどっちだか分らなくなってしまった。男性が一生懸命、分からなくなった瞬間を再現して、どっちが自分のコーヒーだったかを思い出そうとする。

 しかし、それに対する女性の返答は、「どっちでもいい」だった。男性は衝撃を受けて、「どっちでもいいってことは、もしかして、どっちでもいいってこと!?」と尋ね返してしまう。


 女性の「どっちでもいい」発言を飲み込めない男性は、「昆虫とか、食べられる?」「自暴自棄? おじさんの缶コーヒー飲んでも、死ねないよ?」「付き合ってた?」と尋ねてみたが、それらの答えはもちろんNO。男性は、「間接の……そのさぁ……」と濁したり、膝と肘の関節を合わせたりと、遠回しに間接キスを連想とさせようとする。

 男性は新しいのを買うことを提案するが、女性からはもったいないと言われてしまう。「その三倍もったいないと思っているよ!」と正直に吐露をしながら、男性は意を決して、コーヒーを手に取るが、「飲むとこ見ないで……」と恥ずかしそうにするのがオチ。


 間接キスができるチャンスに、舞い上がるよりも戸惑いが先に出てしまう男性の哀愁が漂う一人コントだった。女性がさばさばしている分、彼が余計な心配をしている所が際立ってしまう。

 本心を理性で押さえているという印象だが、「最低で自分、最高で若い女性の缶コーヒー」という一言に、本音が強く現れてしまっている。過剰に演出しているとは思うけれど、似たようなことはどこかで起きているのかもしれないと思わせるようなリアリティがあった。






Bブロック2人目 ななまがり森下  「乳首隠せない男」 9P

 紙袋を持って、Tシャツを着ている森下さんが登場、「コント、乳首隠せない男」という一言からスタート。おもむろにシャツを脱ぎ、「キャー! 見ないでー!」と言いながらも、両手が全く乳首を隠せない男。

 ゆっくりやってみても、右手が額にくっついてしまう。ニップレスも一つは額に。紙袋から貝殻のブラを見つけるも、サイズがシジミ。マグネットシートを乳首の増したと手に付けて、磁力で隠そうとしても、両手がくっついてしまうと、どうやっても隠せない。


 最後に紙袋から出てきたのは、謎の紙。真ん中の方に一本道のくねくねした隙間が空いている。それを、まるでビリビリ棒のように、右の乳首がくねくね道をかい潜っていく。

 何度やっても、乳首が隠せない男の脳内に、「乳首を隠せる力が欲しいか」と謎の声が響く。一度舞台上から消えた男が戻ってくると、両手が巨大化している。これで乳首を隠せる……と思ったら、額と股間を隠して「キャー!」


 その名に違わず、ただひたすらに、「乳首が隠せない男」の奮闘を見せるコント。なぜ乳首が隠せないのか、なんで服を脱いだのか、どうしてもう一度着ようとしないのかなどの説明を、一切放棄しているから、むしろストレートに笑える。

 様々なパターンで、隠す方法を模索するのだが、一瞬だけ、虫眼鏡で乳首をアップする。それに関するツッコミもないが、これによって緩急がついていた。






Bブロック3人目 パーパーほしのディスコ  「彼女の秘密」 9P

 対面した彼女のマイちゃんに、「隠していることないよね?」と尋ねる男性。それに対してマイちゃんは、昨日浮気をしたことを告白する。

 男性は、「それじゃない」と激しく動揺する。男性が後ろ手で隠していたのは、空っぽになったプリンの容器……彼がしたかったのは、「昨日プリンを召し上がりましたか? という優しいトークテーマ」だった。


 うまく息ができなくなってしまいながらも、マイちゃんに「謝らないで」と断り、浮気専用の効き方をしてしまった自分が悪いという男性。今回の浮気はノーカウントにして、幸せなプリンの話をしようと提案する。

 「プリン食べたでしょ? こらー……これがやりたかっただけなのに……」と、泣きそうな顔で上を仰ぐ男性。しかし、このプリンは浮気相手が食べたことが判明し、結局繋がってしまうと余計に悲しむことになってしまう。


 「なぜあなたは嘘をつかない」と尋ねた男性は、最後に、涙声で「正直者のあなたは、無罪となります」と優しく言った。終始、プリンのことから、浮気を知ってしまった男性の悲哀が出ていたコントだった。

 自分が悪いと言ったり、彼女を許すきっかけを無理にでも見つけようとしたり、とにかく、彼がマイちゃんのことが大好きなんだと分かってしまう。本当は今にも大号泣してしまっても可笑しくないメンタルなのに、頑張って涙を堪えて、笑顔で話そうとしている所には、悲しいのに可笑しみを誘っていた。






Bブロック4人目 すゑひろがりず南條  「今昔跨ぎ」  9P

 舞台の真ん中に、「←今|昔→」と書かれた看板が置かれている。南條さんが、この看板の左側へ行くと、喋り方が「かようのごとき話し方」と狂言風に、舞を舞うような所作になってしまう。

 例えば、サザエさんがカツオを追いかけながら昔の所へ行くと、「まず待て、まず待て。カツオや、いずこじゃ」となってしまう。ちなみに、袴の袖で顔を隠している間は、消えているということになる。


 個人的に好きなのは、グリコ。チョキの昔バージョンは、「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」という百人一首の和歌。歩数は31歩という破格の物だった。

 最後に披露したのは「ドレミの歌」。ド~ファまでは「今」だったのだが、「ソ」から「昔」になるので、「いろはの歌」に変更。「ほ」は「褒めて遣わす」、「へ」は「兵を集めよ」から、「殿! 殿!」「今川が攻めてまいりました」「籠城に備えろ!」とストーリー仕立てになっていくのに、笑いが畳みかけられる。ラストは、「今」と「昔」とを行ったり来たりしながら、「ドレミ」と「いろは」を織り交ぜていくのだが、最終的に諦めてしまう。


 すゑひろがりずの狂言風漫才を知ってても知らなくても、非常に楽しいピン芸だった。南條さんの、今の言葉遣いから昔の言葉遣いに変わる瞬間は、流石の貫禄。

 今から昔に変更するといっても、単純にそうするだけではなくて、面白くするというのは至難の業だと思われる。特に「ドレミの歌」が戦国時代のようなのストーリー仕立てになっているのにが最高だった。






Cブロック1人目 ヒューマン中村  「妖精の声」 2P

 自室のソファーでスマホを見ていた男性の脳内に、突然妖精の声が響く。「セントニア王国を救って!」という声に返事するが、最初の頃はうまく通じ合えない。

 しかし、救う方法は、冒険をするのではなく、受診料を支払うというもの。国民からの受信料から財政を賄っているセントニア王国は、支払いをしない国民のせいで、ゴリゴリの財政難に陥ってしまったのだった。


 男性に声をかけたのも、偶然だという。当たり屋だと怒る男性に、「なんとでも言うがいいわ」と可愛い声で開き直る妖精。月々受診料を支払うと、「セントニア名人寄席」を精神で受信できるのだと聞いて、男性はちょっと気になってくる。

 受信料を支払わなければ、計算する時にいらない数字を言ってくる、チャイムやフードコードの呼び出しブザーを聞かせる、一年中クリスマスソングを聞かせると、厄介なことをしてくるという。ちなみに、それらすべて妖精の口から流している。芸達者な妖精に男性は「お前、名人寄席出てるだろ!」


 受信料は、月に3000ルピア。日本円にすると、500円が17ルピアだというので、男性は計算しようとするのだが、妖精がランダムに数字を言ってくるのでうまくできなかった。

 身近だけど案外謎な「受信料」にスポットを当てたコント。真っ先に、「受信料が収入源の国ってちょっと嫌だな」と思ってしまった。嫌がらせの例が、「こんな嫌がらせのテレパシーはイヤだ」みたいなことをうまくついてきて、面白かった。






Cパート2人目 おいでやす小田  「脅し口調講座」 8P

 借金取りの脅し方を教える、もじゃもじゃパーマにサングラスの男性。一日百回以上言う「コラ」の言い方は、「コラァァァァァァ」。ラ行は、全部巻き舌にするのが重要で、「オラ」も「オラァァァァァァ」となる。

 例文で、「殺したろか、こら」と言ってみることになった受講生たちは、「コラ」に気合を入れていったようだが、正しくは「ころぉぉぉぉしたろぉぉぉぉか、コラァァァァァ」だと教える。ラ行は根こそぎに行くので、「ロォォォイヤルゥゥゥミルゥゥゥクティー」「ブルゥゥゥベリィィィーをろぉぉぉっこ」となる。


 次に例文。「あなたの趣味はボウリングですか?」「いいえ。カラオケとビリヤードです」「あと初老の老人を車で送ることです」と、借金取り立てとは全く関係ないが、やたらとラ行を使う言葉が出てくる。

 最後に実践編。「今日こそ、はらぁぁぁってもらぁぁぁうで」と言った時、相手が「ムリィィィです」と言ったら、どつけというアドバイス。「もうすいませんではらぁぁぁち開かんぞ」は省略して「モスラ」となる。受講生たちの返答が「了解」だったのを、「りょぉぉぉかいや」と注意してオチ。


 関西圏ではない私でも、これはやりすぎだろと分かるぐらいのラ行の巻き舌に笑いまくった。迫力を、面白さが上塗りしてしまっている。その上、小田さんの胡散臭い恰好が、この人借金取り? というミスマッチさが可笑しい。

 それから、言葉遊び。絶対、どこにも使われなさそうな例文が素晴らしい。相手も巻き舌してきたら、どつけといってしまうのは元も子もなさ過ぎて無慈悲で、ああ、この人は借金取りだったなと、笑いながら思ってしまった。


 Bブロックでは、3人が同点という大接戦。そこで、視聴者投票で一番票数をもらった南條さんがファイナルステージに進出した。






Cブロック3人目 ワタリ119  「超高速フリップ」 9P

 消防士はスピードが命ということで、元消防士のワタリさんは、制限時間の180秒の間に、フリップ119枚でネタをするという。その説明をしている間も、時間は進んでいる。もしも時間内に終われなかったら、視聴者から投票で市内でほしいと頼む。

 しかし、その後にすぐフリップを捲るのではなく、1分1秒を争う現場にいたことや、北海道にいる家族や隊長に見ていてくださいと天を仰ぐ。やっとネタに入ったが、残り時間は106秒になっていた。


 最初は、「こんな消防車はイヤだ!」「こんな隊長はイヤだ!」という大喜利で、「運転手がワタリ119」「隊長がワタリ119」という自虐からスタート。サッカーのフォーメーションは「1・1・9」。次に、先程声をかけていた隊長二人のあるあるを連続で。それも、一人目は住所を言い、二人目は特になし。

 こんな風に、消防士関係のネタや自分に関するネタをするのかと思いきや、ワタリさんが乗りたい車ランキングで、消防車関係の後に1位がベンツという外しや、消防車が一番住みたい惑星なぞなぞが地球、「1位地球」で「いちいちきゅう」と意外な形で戻ってくる。


 そして終盤、ワタリーを探せという間違い探しで何枚も使ったり、ホースが長い象の鼻だったというネタで何枚も繋げたりと、一気に消費に掛かる。だが、速すぎて、逆に時間が余ってしまい、一発ギャグとして子犬の泣き真似をした。

 ワタリさんのピンネタは初めてだったが、構成力のあるフリップだったとは思わなかった。隊長の名前上げたのが前フリになっていたり、長々としたフリップ前の話でハラハラさせながらも、一気に捲る算段がついていたりと、失礼ながら「考えられてる!」と笑いながら思ってしまった。ただ、速すぎて時間が余ってしまうというハプニングもらしく感じた。






Cブロック4人目 大谷健太  「早口言葉」 11P

 復活ステージから勝ち上がってきた大谷さん。ネタは、絵のみフリップを見せて、その後に早口言葉を言うもの。

 最初は、「バスガス爆発見てパグ抱く白髪」「庭には二羽ニワトリと和のワニ」という有名な早口言葉をさらに難しくしたもの。次に、「温かカタツムリ」「北からキャタピラカピバラきた」「ペアルックヘルメットモルモット細マッチョフルボッコ」「祖母ぼそぼそ祖父もふもふ」と、オリジナルの早口言葉や、「母端」「さらばだタラバ」「シャムさむっ」と短いけれど言いにくい言葉も混ざってくる。


 怒涛の早口言葉で一周した後に、前に一回出た早口言葉が混ざって、どんどん可笑しくなっていく。個人的には、「温か燃え移りカタツムリ」「さらばだ温かカタツムリ」「でも温かカタツムリのお陰でシャム寒くない」の流れが好き。途中から、もはや早口言葉ではなくなっている。

 そして、「庭にはもう羽のワニのみ」と最初の早口言葉に戻り、ラストはバスが一台だけの絵で「バスガス爆発せず」だった。


 一度、絵をしっかり見せてから、その後に早口言葉を言うので、予想する間があるのだが、その予想を絶対に裏切られるのが気持ちいい。言葉だけではなく、「北からキャタピラモフモフ祖父来た」の意味不明さとか、「急にキュウリ9本喰う子急増」の時の子供たちの目の怖さとか、絵の面白さも際立っている。

 大谷さんは、早口言葉をすごく饒舌に言うので、よく聞き取れる。さらに2回言うので、面白さがより伝わってくる。この大舞台で、難しいネタをやり切ったことに対しても、拍手を送りたいネタだった。






ファイナルステージ1人目 マヂカルラブリー野田クリスタル 「モンスト」 16P

 スマホでゲームを開いた野田さんは、「モンスト」と書かれたアプリを発見。一度もやったことがなかったので、プレイしてみることに。しかしそのゲームは「モンスターストライク」ではなく、「悶々とするぜ ストッキング姉さん」だった。

 画面の半部より上の方に、ストッキングをはいた「セクシーなお姉さん」がいる。プレイヤーは、ハサミをはじいて、姉さんのストッキングを丸く切っていくという遊び方だ。


 実際にプレイしながら、やり方を飲み込んできた野田さんだったが、ストッキングが数か所破れてきたところで、突如、画面の右側から呼びのストッキングが接近。姉さんのストッキングが新しくなってしまう。

 野田さんもスピードアップして、どんどん破いていくが、予備ストッキングが来る間隔が狭くなった。さらに、姉さんが怒りの形相になり、目からビームを発射、当たったハサミが爆発してしまう。


 それでもめげずにトライする野田さんは、姉さんの顔の横に安置があることを発見。しかし、ビームと予備のストッキングが同時に来てしまう。さらに、顔の横にもビームが来て、安置もなくなってしまう。

 心の折れた野田さんは、課金のボタンを押す。すでに買ったことになっている3640円の「破れまくりモード」で再挑戦。破れまくりのストッキングの上の方を狙い続けて、股間の部分を破くことに成功したのだが、そこには「課金」と書かれたモザイクがあった。


 一本目と同じく、名前につられて、へんてこなゲームをすることになるネタ。今回のストッキング姉さんも、ヘタウマな絵で、正直「セクシー」とは言えない。だが、そのゲーム性に、野田さんは完全に魅せられてしまう。

 ビームが出た時は「そういうのもあるの!?」、顔横のビームに「甘えが許されない」と、完全にのめり込んでいる人の一言が飛び出す。「クソゲーじゃねぇか」のような、ネガティブな発言も出ない。本気で戸惑うのは、課金の時くらいか。


 そのため、ラストの「課金」のモザイクに、野田さんが膝から崩れ落ちてしまう反応は、心から同意してしまう。こっちまで、ちょっと悔しいと思ってしまうくらいに、野田さんとゲームをのめり込んでいた。

 ゲームの難しさと共に、野田さんの腕前も絶妙で、「いけそう、いけそう」と何度もやきもちしてしまう。特に、ラストで上の方をぴったり破けたのには、ちょっと感動してしまった。







ファイナルステージ2人目 すゑひろがりず南條  「またぎザ・ベストテン」 5P

 1本目と同じ「今昔またぎ」を使ったネタ。今回は、「ザ・ベストテン」のようなパネルが用意されている。このパネルは、昔言葉にしやすい順番に歌がランク付けされているという。

 10位は「Pretender」から「さらばじゃ! そちの許嫁は我にはあらず」、9位は「SHAKE」から「げにげに強烈あっぱれ寿(ポンポン)」、8位は「ロマンスの神様」から「縁結びの仏 定めて汝を感ずる」と、今から昔に跨いだ瞬間、見事に変換される。


 「タッチ」の「お触り」や、「チョコレイトディスコ」の「金平糖お座敷」のように、一言でインパクトがある歌詞もあれば、「恋するフォーチュンクッキー」の「参れ参れ参れ童 占うべし 恋するおみくじせんべえ ゆく末 さほど悪くあらじ よよよ、よぉー」など長めの力作もある。

 最後に、1位の歌は「ウルトラソウル」の「やんごとなき魂」で「よぉー! ポン!」がオチだった。


 歌を昔言葉にするのは、メロディーに合わせないといけないのでなかなか難しいと思われるのだが、南條さんはちゃんと歌えるように変換している。その上、昔言葉の妙と言うのか、「ベイベー」を「童」、「関西弁」を「上方言葉」となるのが、率直なのに納得感と面白さが共存している。

 「今」の位置から歌っているので、「昔」に渡ったらどうなるのだろうかというわくわく感がある。そして、無意識にしていた予想も見事に裏切られるのが心地よかった。






ファイナルステージ3人目 大谷健太  「2コマ漫画」 9P

 フリップを使った2コマ漫画のネタ。最初に、タイトルを言う。

 最初の漫画は「会話に値しない英会話」。男性が本を持って、女性に向かって「Is

this a book」と尋ねると、それに対して女性は、「Sorry.Who are you」と尋ね返す。


 「サメよりやべぇやつ」は、海でサメのヒレのようなものが見えて、2枚目では、サメのようなヒレとタコのような足の生えた、見たことのないクリーチャーが海面に現れる。「学校あるあるではないやつ」では、グランドに犬が入ってきたと柴犬の絵のアップが1枚目だが、二枚目ではその犬の体ウエットスーツのように脱げて、中から四つん這いになったおじさんが出てくる。それを見ていた生徒の「人は入ってた、人は入ってた」という恐怖に怯える声がアテレコされる。

 後半では、またしても他の漫画同士が混ざっていく。サメの漫画の時のように、海面から「プッシュ」と書かれたボタンのある謎の生き物が海面に浮上してくる。ラストの漫画は、「本当に会話するに値しない英会話」。最初の漫画の男性が、本を口にくわえて「BOWWOW」と吠えていると、2コマ目で一緒にいた女性が画面に向かって、「BIG BONUS!」と叫ぶというものだった。


 こちらが息つく暇も無いほどの怒涛の漫画。最初の英会話の漫画では、本当に英語の教科書に出ていそうな緩い絵で描かれている、ワニに食べられている人の足のタトゥーがやけに怖いなど、細部にもこだわりが見える。

 個人的には、「本当の不思議ちゃん」での、二枚目で引いた瞬間に、不思議ちゃん発言をしたアイドルの影がない漫画が好き。「まあないこと」で「サドルが増やされる」など、笑えると同時に、これはそうとしか言えないなとタイトルに納得させれるのが二重に面白かった。






 ファイナルステージで一番ポイントを取った野田さんが、文句なしの優勝。ネタの強さと面白さにプラスして、バグなどが起きなかったことやゲームの腕前がいい感じになったところなど、運を引き寄せたのもあったのではないかと思う。

 野田さんの話によると、これまでR-1では1回戦どまりだったという。そこから一気に優勝。なんという大逆転劇なんだろう。


 ヘタウマな野田さんの絵、理不尽なゲームシステム、支払うしかない課金、心からゲームを楽しんでいる野田さんの一言一言、それらが上手く噛み合った故の、大爆笑と優勝だったのだと思う。

 改めまして、野田さん、優勝おめでとうございます! 

 まさかのニンテンドースイッチで開発されることになった、野田ゲーパーティーもどうなるのか、すごく楽しみにしています!









































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