すゑひろがりず 編


 すゑひろがりずを初めて知ったのは、M-1の決勝だった。その時はもちろん「面白い!」とスタイルとネタの内容に感動したけれど、それ以上の進展はなかった。

 それから興味を持ったのは四月辺り、「『集まれ!どうぶつの森』が流行っているなぁ、面白いのかなぁ」と思っているときに、すゑひろがりずが実況しているとことを知ったのがきっかけだった。そうして再生してから、沼にドボンだった。


 タイトルに「狂言風実況」と書いてある通り、二人の話し方は漫才の時のような話し方で進めていく。一人称は「それがし」で、二人称は「お主」、それが染みついているのか、当たり前のようにすっと出てくる。

 例えば、「バイオハザードRE:2」の#1では、プロローグのムービーに出てくるトラックの運転手が食べているハンバーガーを肉饅頭と名付けて、運転手がゾンビになった女性を轢いてしまった瞬間に三島さんが「島流しに合うかもしれん」と言い、キャップを取った運転手の頭を見て南條さんが「ハゲておりゃる」と爆笑する。


 また、すゑひろがりずの実況の定番と言えば、登場する道具や人物を勝手に和風に変換していくというところである。ゾンビは瞳も真っ白だから「白眼しろまなこ」、回復するグリーンハーブは「よもぎ」、ショットガンは「大筒」となる。

 また、途中で登場して主人公を助けてくれるサングラスの女性・エイダは「くのいち」、主人公を執拗に追いかける謎の巨漢の敵・タイラントを「平殿」と名付けているのだが、これが結構的を得ている。


 ストーリーを楽しむというよりも、二人で細かいところで大喜利しているという印象が強い。ゾンビの倒れ方を何かで例えたり、アルファベットの頭文字を歴史上人物にあてたりしていて、コメントでも「そこにツッコむ実況は初めて」という声もちょくちょく見える。

 バイオハザードのプレイヤーは主に三島さんなのだが、あんまり上手じゃないのが密かなポイント。よく噛まれまくって、死んでしまうのだが、その度に横で控えているガヤ担当の南條さんが軽快に小鼓を鳴らす。


 回を重ねていく毎に、だんだんと和風とは関係ない単語が出てくることに気が付く。例えば、「プリキュアの杖」とか「JOJOの奇妙なロッカー」とか。

 こうなっていくと、「狂言風だから面白い」よりも「すゑひろがりずだから面白い」となってくるのだから、最強である。二人の素が出てくる(しかも関西弁)が出てくる瞬間が面白くって、何回もそのシーンをリピートしてしまう。特に三島さんが「ショットで行くか……」と呟いた瞬間は伝説となっている。


 一方、私がYouTubeチャンネルのすゑひろがりず局番を知るきっかけになったどうぶつの森実況も最高である。ただ、この局番では「集え!けもの共の藪」、略してけも藪と呼んでいるので、ここでもそれに倣おうと思う。

 プレイヤーが無人島に引っ越して、そこを開発していくという筋なのだが、けも藪では早速三島さんが島流しに合ってしまい、その先で新たに幕府を開くという目的になっている。後々、南條さんもプレイヤーとして参加してくるので、「上様と家臣」コントになっていく。


 ここでも、結構二人のゲームの下手さが出ていて、全く釣りができない。家を建てるまでも時間がかかってしまうのだが、そののんびり加減も視聴者は楽しんでいる。

 無人島へ移住させたたぬきちや博物館を立てる手伝いをさせられるフータに文句を言ったり、住民との交流が肝なのに「こやつらの存在意義は何ぞや」と言ったり、また本筋を気にしないスタイルは変わらず。その一方で、追いかけっこをしたり、木を無限にゆすったり、月を眺めたりと、結構スローライフに馴染んでいるようにも見える。


 他にも、「バイオハザードRE:3」と「バイオハザード7」、最初のゲーム実況の「ウイニングイレブン」、カタカナ禁止の「無双OROCHI3」、狂言風が強く出ている「マリオパーティー」、全くルールが分からない状態でプレイしている「ヒューマンフォールフラット」と「フォートナイト」、純和風の世界に殴り込みの「ゴーストオブツシマ」、ひたすらにめでたい「ペーパーマリオオリガミキング」と、ゲーム実況系は全部面白いのでぜひ見ていただきたい。

 ちなみに、私が一番好きな回は、「バイオハザードRE:2」の#23である。この回ではプレイキャラが閉じ込められた中で炎を付けられた状態から脱出を試みるのだが、こんな状況下で南條さんは信長が本能寺の変の時に舞ったと言われる「敦盛」を歌っているし、三島さんは「燃ゆ! 燃ゆ!」とパニックになっているしで、このカオスに爆笑してしまった。


 こうして、すゑひろがりずのゲーム実況や局番の動画も見て、二人のことが気になっている人は、「すゑひろがりず副局番」の方も見てほしい。過去の配信のアーカイブや、単独ライブの舞台裏、南條さんへの誕生日サプライズ、動画の再生回数を伸ばすための作戦会議など、素のお二人をたくさん見ることができる。

 zoomの配信とかトークとかに出ているすゑひろがりずの話を聞いていると、二人ともこの芸風になるまで苦労しているのだということを知り、ますます応援したくなる。早くコロナが収束して、たくさんテレビに出ているすゑひろがりずが見たい! 個人的には、ゲーム番組で見たい!


 さて、以前のすゑひろがりず局番の配信を見た時に気付いたのだが、「芸人さんのチャンネルで登録しているのはこのチャネンルだけです」というコメントが結構あった。ゲーム実況業界にはあまり詳しくないのだが、すゑひろがりずの面白さがお笑い界隈に明るくない人たちにも伝わっているようだ。

 芸人さんの底力を発揮して、これから先もすゑひろがりずにはゲーム実況界をかきまわしてほしい。と申してしまうのは、お笑い好きの末席として、出過ぎた真似のかもしれませぬ。失礼致した。
















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