ラーメンズ 編


 ひよっ子ながらも、お笑い好きとして、これまでで一番衝撃を受けた芸人さんは誰ですか? と尋ねられれば、ベタですが、ラーメンズですね、と答える。

 大学生の頃に知ったラーメンズのコントは、これまで見てきたどの芸人さんのネタとも違うと感じた。


 ラーメンズのネタで、一番最初に見たのは「採集」だったと思う。

 怖いネタガイドというwikiサイトで色々見ている中で、「三大怖いネタ」として紹介していたからだ。


 これまでも、芸人さんのネタを見ていて、怖いと思ったことはあったがそれは「笑い」がベースの「怖い」だった。

 しかし、「採集」は「怖い」をベースに「笑い」を描いていた。笑える場面も多い中で、衝撃的すぎるラストには、見た後に大分尾を引いた。


 ストーリーも非常に練られていて、小道具が殆どない舞台という特性を上手く使った伏線の張り方には唸ってしまう。

 お笑いとか関係なしに、ミステリーが好きな人にも普通にお勧めできる良質なコントである。


 ラーメンズは「恐怖」以外にもコントの中で、感動したり、驚かされたりと、様々な感情を呼び起こしてくれる。

 これまたベタだが、「銀河鉄道のような夜」には鳥肌が立って、胸が締め付けられるようなラストが忘れられない。


 他にも、その舞台のシンプルさには目を見張った。

 ラーメンズのネタで使われる小道具と言えば、正方形の箱がいくつか、というのが印象的だろう。ネタにもよるけれど、最低限の動きだけで家具や家電を示しているのは素直に感心する。


 また、服装も大体しばられている。舞台ごとに、黒とか白とか灰色とか、服のカラーは決められていて、ジャケットを着ていたりシャツだけだったり、それから眼鏡の有無や髪形などの最低限の違いだけで、キャラクターを分けている。

 ちょっと服が変わっただけでも、だいぶ印象が変わっている。「アトムより」のコントでの片桐さんはハットを被っているだけでまるで子供のように思えるし、「後藤を待ちながら」の小林さんはキャップと上着のフードだけでヤバそうな後輩の雰囲気が出てきている。


 ボケとツッコミの役割が固定されていないのにも驚かされた。正直、お笑いってこんなことをしてもいいのか! と雷が落ちてきたかのような驚きがあった。

 片桐さんが微動だにしない小林さんに対して縦横無尽に動き回る「タカシとお父さん」、小林さんが自由な言動で片桐さんを翻弄する「バニーボーイ」など、色が異なるたくさんコントがあるので、どっちのボケが好きとか簡単に決められない。


 舞台という制約の中で、出来る限りのことを行ってコントをしているのも印象的だ。

 マジックや言葉遊びやパントマイム、時折とんでもない衣装も出てくる。衣装だけで言えば、「五重塔」の時の片桐さんがものすごい。


 題材も多岐に渡る。どんな世界観でも、ラーメンズの二人は描き出す。

 SF的なアプローチの「時間電話」、人間並みの知性のあるイモムシと一人の男が協力して謎の競技を行う「イモムシ」、何気ない風景からはっとさせられるオチの「釣りの朝」、二人の会話から叙述トリックのような仕掛けのある「心理テスト」などなど、どんなことでもテーマにして、限りない広がりを見せてくれる。


 ちなみに、私が一番好きなのは「バースデー」である。

 休日の自宅で誕生日を迎えた小林さんが、本を返しに来た片桐さんを迎える。本当は誕生日を祝いに来てくれたのではと疑う小林さんの気持ちを、録音していた音声で流して、本人の声は全く出てこないという変わった構成のコントだ。

 ラーメンズのコントは全編公式のYouTubeチャンネルで見れるので、ぜひ、「バースデー」も「採集」も見てほしい。


 さて、ラーメンズは、こんなお笑い芸人がいたのか! という衝撃を受けたのだと最初に語った。

 それは衝撃だけではなく、私の書いている小説にも色濃く影響を受けていると思う。

 コントの世界は、どんなことをしてもいい、非常に自由であるとラーメンズに教えてもらったのだから、私ももっと自由に文章を紡いでいきたいと、ひよっ子ながらにそんな決意をもたらしてくれたのである。


















 

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